【目的】頚動脈ステント留置術(carotid artery stenting: CAS)後に網膜中心動脈閉塞,一過性低灌流後に過灌流を呈した 1 例を報告する.【症例】75 歳男性,右頚部内頚動脈狭窄症に対し CAS を施行.直後より網膜中心動脈閉塞による右眼視力低下を認め,さらに意識障害,左半身麻痺や空間無視が出現.ステント閉塞は認めなかったが治療側で脳血管攣縮を伴う低灌流所見を認め,その後過灌流状態へと変化した.治療にて眼症状は残存も,画像所見や神経所見は改善し退院された.【結論】CAS 後の合併症として低灌流から過灌流を呈することは稀である.網膜中心動脈閉塞も来しており,狭窄部の不安定プラークの関与が示唆されたが,適宜画像精査を行い,病態に応じ治療を検討することが重要である.
【目的】血栓回収後に過灌流症候群(CHS)と非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)が疑われた 1 例を経験したので報告する.【症例】68 歳女性,意識障害を主訴に救急搬送.左中大脳動脈(MCA)閉塞の診断で血栓回収療法を施行して完全再開通を得たが,意識障害の遷延を認めた.治療同日のMRI では DWI 所見は消失し,再開通を維持していたが,第 3 病日の MRI で虚血領域の皮質を中心とした高信号と同領域の脳血流上昇を認め,脳波所見と併せて CHS と NCSE の並存が疑われた.内科的加療により臨床症状は徐々に改善を認めたが,高次脳機能障害が残存した.【結論】血栓回収後に治療経過に見合わない意識障害の遷延や悪化を来す場合,CHS や NCSE を鑑別診断に挙げた精査を行う必要がある.
【目的】上眼窩裂近傍で inferolateral trunk(ILT)から眼静脈のみに流出する硬膜動静脈瘻は稀である.下錐体静脈洞経由で経静脈的塞栓術を行い,治癒し得た 1 例を報告する.【症例】69 歳男性.右眼球結膜充血と複視で発症した.右 ILT から右眼静脈合流部へ流出し,海綿静脈洞へは流出しない硬膜動静脈瘻を認めた.下錐体静脈洞経由で眼静脈内へマイクロカテーテルを誘導し,コイル塞栓を行った.【結論】ILT から眼静脈のみに流出する,稀な上眼窩裂近傍の硬膜動静脈瘻を経験した.発生学的に,海綿静脈洞と眼静脈の間には必ず交通性があると考えられ,下錐体静脈洞経由での経静脈的塞栓術は治療選択肢の一つとなり得る.
【目的】ステント留置後妊娠において,抗血栓療法に関する明確な基準は認めない.われわれは破裂大型脳底動脈瘤に対してステント支援コイル塞栓術を施行し,2 度の出産を経験した症例を報告する.【症例】27 歳女性.脳底動脈瘤破裂によるくも膜下出血を発症し,ステント支援コイル塞栓術を施行した.33 歳時に体外受精にて妊娠した.抗血小板剤は治療 3 年後に中止となっていたが,妊娠時の過凝固を考慮しアスピリンを開始,28 週からヘパリン皮下注射へ切り替え,帝王切開で児を分娩した.母子共に合併症なく経過した.35 歳時の妊娠も同内容の抗血栓療法を行い,合併症なく経過した.【結論】周産期抗血栓療法によって合併症なく 2 度の分娩を経験した.
【目的】ねじれたカテーテルを GooseNeck Snare を用いて安全に回収できた 1 例を経験したため報告する.【症例】69 歳女性,破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術後の精査で,経上腕動脈アプローチでの脳血管撮影検査を行った. Simmons カテーテルを大動脈弓まで進めたところ,上腕動脈内でカテーテル近位部の「ねじれ」を生じた.ガイドワイヤーを用いた修復が困難であったため,右大腿動脈から新たに 8Fr long sheath を挿入し, 25 mm GooseNeck Snare を用いて,カテーテルを捕捉し,大腿動脈の sheath から抜去した.患者は検査後の合併症なく退院した.【結語】経上腕動脈アプローチでの脳血管撮影検査において生じた Simmons カテーテルの「ねじれ」に対し,GooseNeck Snare の使用は安全にカテーテルを回収するための有用な方法である.
【目的】硬膜動静脈瘻(dAVF)の経静脈的塞栓(TVE)困難症例に対し,脳神経栄養枝を持つ親動脈からエンボスフィアによる経動脈的塞栓(TAE)を行い,合併症なく長期のシャント完全閉塞を得た症例を報告する.【症例】74 歳,女性.結膜充血と外転神経麻痺で発症し,精査で左海綿静脈洞部 dAVF と診断した.TVE は内頚静脈閉塞によりアクセス困難で断念し,次善策として TAE を試み,中硬膜動脈の錐体枝分岐近位からφ300〜500 μm エンボスフィアを注入して合併症なくシャント閉塞を得た.4 年間再発なく経過している.【結論】エンボスフィアを用いた TAE は,脳神経栄養枝を含む血管の塞栓術において選択肢となり得る.
【目的】急性右中大脳動脈閉塞症に対して血栓回収術を行い,可逆的な血管狭窄病変を生じた 1 例を経験したので報告する.【症例】37 歳女性.突然の左片麻痺にて発症した右中大脳動脈閉塞症に対して,血栓回収術を行った.術直後および急性期の画像では血管狭窄は認めなかったが,術後 3カ月目の画像で右中大脳動脈に血管狭窄を認めた.その後は徐々に狭窄が改善し,経過を通して患者は無症候であった.【結語】血栓回収術後の慢性期に血管狭窄や閉塞を伴うことがあり,手技時の血管内皮損傷が関与している可能性がある.術後の経過観察において留意する必要がある.
【目的】動脈瘤破裂による直接型内頚動脈海綿静脈洞瘻に対する,MRA 元画像・再構成画像の初期診断・評価と,ステント支援下コイル塞栓術の有用性について報告する.【症例】73歳女性.突然の右眼症状が出現.MRA 元画像・再構成画像により,右内頚動脈海綿静脈洞部動脈瘤破裂による内頚動脈海綿静脈洞瘻と初期診断し,治療に必要な情報が得られた.3D-CT・RAで確認後にステント支援下のコイル塞栓術を行い,動静脈瘻は消失し,症状も消失した.【結語】MRA元画像・再構成画像により初期診断された動脈瘤破裂による直接型内頚動脈海綿静脈洞瘻に経動脈的ステント支援下の破裂動脈瘤コイル塞栓術を行い,短時間で経済的に治療することができた.
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