宗教と社会
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選択された号の論文の68件中1~50を表示しています
論文
  • 髙橋 秀慧
    2019 年 25 巻 p. 1-15
    発行日: 2019/06/08
    公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    贈位を通じた人物顕彰は、史蹟整備等と並んで、ローカル/ナショナルなアイデンティティを結びつけるものである。贈位は、被贈位者の「功績」を尺度として序列化し、国家のイデオロギーを臣民に浸透させるための「溶媒」としての性格を持っている。本稿は、寺院を中心とする地域社会が文化政策を通じてナショナリズムを受容し、地域社会へ浸透させていく過程を明らかにするため、福井県三国地域の僧侶を中心に政治家、知識人らが推進した勤王僧の贈位請願運動を分析した。その結果、運動の背景に、鉄道敷設や観光開発など、近代化に伴う社会変動に対応しようとする寺院と地域社会の姿が見られた。つまり、地域社会における贈位請願運動の意義・目的は、従来指摘されてきたナショナリズムとの単線的な結びつきだけではなく、史蹟整備等の文化政策との関わりや、地域社会の思惑と結びつくことで、多義的なものになることが明らかになった。

  • 古賀 万由里
    2019 年 25 巻 p. 17-31
    発行日: 2019/06/08
    公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    エステートにあったヒンドゥー教徒の寺院は、開発事業が進む中、開発業者や州政府から破壊および移転を強いられ、寺院側と開発業者・政府側との間で対立が生じることが2000年代から顕著になった。寺院を破壊・移転する主な理由は、寺院が土地所有権を保有していないため違法であることである。先行研究ではイスラム化政策の下インド系マレーシア人は不当に罰せられ、インド系の政治家に代わってNGO活動家が寺院を守るために闘ったことが指摘された。本論文では破壊の危機を乗り越え存続している寺院に焦点を当て、寺院が存続している理由を以下に挙げた。それらは1)神罰に対する信仰、2)祠の増設による敷地の拡大、3)NGO活動家や市民の抵抗、4)組織化された寺院経営、5)正式な登録である。政治権力や開発行為がヒンドゥー寺院の存立を危機に陥れている例もあるが、様々な戦略を用いて寺院を保持し、宗教的実践を維持するために法に抗している事例もある。

  • 小尾 淳
    2019 年 25 巻 p. 33-47
    発行日: 2019/06/08
    公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    本稿では宗教組織「クリシュナ意識国際協会」(イスコン)バンクーバー支部の半世紀余にわたる歴史を、布教活動の側面に着目しながら記述することにより、信者らの布教に対する価値観の変化を捉える。先行研究では、信者の世代交代や南アジア系移民の急増といった内的・外的要因による組織的変化が詳細に論じられてきたものの、それらが同協会の布教活動—公共の場におけるマントラの詠唱(キールタン)や刊行物の配布—にもたらした影響は具体的に検討されてこなかった。本稿では主に次の3点を指摘する。第一に、信者らの流動的変化に伴うイスコンの「組織的」布教活動の限界である。第二に、2000年代以降の商業的ヨーガやグローバル音楽市場など「外部」におけるキールタンの流行が、信者にその「再評価」の機会をもたらしたことである。第三に、一部の信者が非信者の視点に立ち、必ずしも「改宗」を目的としない、教えを共有する場を創出したことである。

  • 岩倉 洸
    2019 年 25 巻 p. 49-64
    発行日: 2019/06/08
    公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    カフカース・ムスリム宗務局は、ロシア帝国時代から現代に至るまで、アゼルバイジャンのイスラームを管理してきた組織である。本稿は、宗務局の歴史的変遷を検討し、現代においてどのような役割を担っているか明らかにしていく。特に、近年宗務局が掲げている宗教的理念・政策を「アゼルバイジャン・モデルのイスラーム管理」という枠組みで分析していく。このモデルは、シーア派が多数を占める国でありながら、「スンナ派を実質的に優遇」する形で、「急進的なイスラーム主義の伸張を抑える」という目的で、「宗派共存」を目指すイスラーム管理を行うものとして形成され、宗務局のイスラーム管理政策の根幹を成すものである。このモデルの検討を通じて、「宗派共存の仕組み」という枠組みから、現代における公的組織によるイスラーム管理の社会的意義を明らかにし、宗派共存の1つのモデルの提示を行っていく。

  • 山口 瑞穂
    2019 年 25 巻 p. 65-79
    発行日: 2019/06/08
    公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    本稿は、1970年代半ばから1990年代半ばの日本におけるエホバの証人の歴史展開を、宗教運動論や教団組織論の視点から検討し、この時期の発展要因を明らかにする。検討に際し、教団側の刊行物だけでなく教団外からの情報も採用し、世界本部の布教戦略に注意を払った。ハルマゲドン1975年説が期待外れとなり、離脱者の増加という現象に直面した世界本部は、以前にも増して「終わりが近い」ことを強調し、多くの時間を宣教に費やす「開拓奉仕」と称される活動を督励した。日本支部の信者に占める「開拓者」の比率は群を抜いて高く、その多くは非信者の夫をもつ主婦たちであった。エホバの証人の救済観や教義は、日本人には本来受け入れにくいものであったが、「家から家」への戸別訪問による宣教に多大な時間が投じられたことが入信者の獲得と教勢拡大につながった。世界本部と日本支部の強固な関係は、献身的な活動を引き出した看過できない要素となっている。

  • 髙田 彩
    2019 年 25 巻 p. 81-95
    発行日: 2019/06/08
    公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、武州御嶽山の女性が関与する社会組織の機能と役割を明らかにすることである。その際、女性が関与する社会組織が、(1)御嶽山の中でどのような役割を果たしているのか、(2)当事者である御師家の妻にとってどのような意義を持つのかという二点に注目して考察を行う。具体的には、構成原理の異なる三つの社会組織、各家の「なかばあさん」と呼ばれる30~50代の働き盛りの女性が所属する(A)「婦人部」と、各家同士の互助組織でありながら地縁的性格が強い(B)「組合」、血縁的性格が強い(C)「付き合い」を事例に、その機能と役割を検討する。これらの比較を通して、女性が山内の社会組織に組み込まれていく過程と、どのような場で生活慣習などの教育を受けながら、御嶽山の一員になっていくのかという問題を明らかにする。本稿は、先行研究で十分な議論がなされてこなかった御嶽山の社会組織と、そこでの御師家の妻の役割を照射するという点でも意義がある。

  • 山田 親義, 河東 仁
    2019 年 25 巻 p. 97-110
    発行日: 2019/06/08
    公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    2000年4月に地方分権をめぐる一括法が施行され、水路や赤道などの法定外公共物が国から市区町村へ権限譲与された。以降自治体では、日常的な維持管理が行われている。社寺地等をめぐる法定外公共物の主な問題には、現在も法定外公共物が社寺地内に残置されている、所有者不明土地や登記未変更地との関係、日常の維持管理がある。日常の維持管理は、自治体または社寺等が行い、管理方針は、自治体への半構造化面接により、慣行のまま、譲渡を積極的に行う、撤去を求めるの3タイプに分類された。自治体は、法定外公共物の譲渡や維持管理の際、所有者不明土地や登記未変更地がある場合、通常よりも対応が煩雑になる。2011年に発災した東日本大震災後、社寺地内の公共物の対応方針は、すべて自治体、占用許可範囲については許可者、近隣所有者が対応したに分けられる。

  • 塚田 穂高
    2019 年 25 巻 p. 111-126
    発行日: 2019/06/08
    公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    戦後日本社会において、「宗教」概念や「宗教と政治」についての認識がどのように構築され、浸透していったのかを捉える際、数々の政教分離訴訟の積み重なりは重要なフィールドと言える。本稿では、愛媛玉串料訴訟――愛媛県知事が靖国神社の祭礼などに「玉串料」などを公金から支出していたのが憲法違反ではないかと問われた――のケース(1982年提訴)を取り上げる。同訴訟は従来、憲法学の領域から最高裁における政教分離に関する戦後初の違憲判断がくだされた重要判例として着目されていた。本稿では、その背景と経緯、そして判決の余波に至る一連の経過を分析の俎上に乗せる。分析の結果、同訴訟が靖国神社問題と政教分離訴訟の一連の流れのなかで生起したこと、裁判のなかで「宗教」ないし「宗教と政治」をめぐる複数の概念と視角が錯綜したこと、判決が各陣営や領域に現実的影響をもたらしたことを明らかにする。

研究ノート
書評とリプライ
1 戦後日本の政治とオカルト
2 現代アジアにおける宗教の役割と多様性
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