根の研究
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31 巻, 4 号
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技術ノート
  • 増本 泰河, 矢原 ひかり, 且原 真木, 牧田 直樹
    2022 年 31 巻 4 号 p. 105-114
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    樹木細根 (直径2 mm以下の末端根) の吸水機能を評価することは,樹木の生理活動の正確な理解につながるとともに,土壌-樹木間の相互作用系の理解を深化させることから,森林生態系における水循環の正確な理解においても重要である.本稿では,野外条件下で樹木細根の水透過性 (root hydraulic conductivity) を計測する手法について紹介する.水透過性は,組織における水の流れやすさを示し,根系全体の吸水速度や葉の蒸散速度に影響を与えることが知られている.作物や樹木の実生の根系を対象とした研究では広く用いられてきた一方で,これまで技術的な問題から,野外森林の成木における細根の水透過性の評価は私たちが知る限り未だ多くない.紹介する手法では,持ち運び可能なプレッシャーチャンバーを用いて,根の末端に人工的に一定の圧力を加え,一定時間ごとに根の切断面から出液した水の量を評価することで,水の流れやすさを示す指標である水透過性を計測する.この手法では,根系の切断面から出液した水の量を短時間で評価するため,蒸発や土壌粒子などの不純物の影響を受けにくく,野外においても計測を行うことが可能となる.本稿をきっかけに多くの方が樹木細根の水透過性に興味を持ち,計測に取り組んでいただけると幸いである.

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