応用老年学
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4 巻, 1 号
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巻頭言
巻頭論文
特別寄稿
原著論文
  • ―大学の修業年限短縮によって期待される効果についての考察―
    小田 利勝
    2010 年4 巻1 号 p. 20-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2025/09/19
    ジャーナル フリー

     本稿では、少子高齢・人口減少社会が抱える問題解決のための「新たな挑戦」というべき対応策として大学の学部教育の修業年限を1年短縮することによって期待される効果を推計するとともに大学修業年限を短縮するという着想の是非を問うために実施した大学長に対する意見調査から得られたデータを分析した。今後とも18歳人口は減少し続けるが、進学率の上昇が見込まれるので入学者数はすぐに減ることはないので大学の修業年限を1年短縮することによって、労働力人口の補充と税収増、親の教育費負担の軽減の効果が期待できる。全国の大学長へ意見調査からは修業年限短縮に対しては否定的意見が少なくないが、工夫次第では教育の量と質を落とさずに3年制にすることは必ずしも不可能ではないと考えられる。

  • ―新規要介護発生および生命予後との関連―
    山崎 幸子, 藺牟田 洋美, 鈴木 理恵子, 安村 誠司
    2010 年4 巻1 号 p. 31-39
    発行日: 2010年
    公開日: 2025/09/19
    ジャーナル フリー

     閉じこもり高齢者にライフレビューを用いた介入プログラムを行い、新規要介護認定率および生命予後に関する長期的効果を検証することを目的とした。対象は、栃木県大田原市在住の75歳以上の高齢者から、大田原市が独自に設定した優先度の基準に基づいて選定した。介入群は21人、コントロール群は性、年齢 (±2歳)、優先度、地区コードをマッチングさせた計63人とした。介入は、週1回、全6回とし、1回の内容は、健康情報の提供とライフレビューの60分に設定した。約2年の観察期間を設けた結果、介入群の方がコントロール群よりも有意に新規要介護認定率が高かった (ハザード比 : 3.43、95%信頼区間 : 1.64-7.20)。死亡率では両群に有意な差は認められなかった。介入群は、より支援が必要な対象者を選択している可能性が示唆された。しかし、介護サービスにつながったことから、結果的に介入群の死亡を抑制した可能性が推察された。対象者の選定基準の見直しや、さらなる追跡検討が今後の課題である。

  • ―地域での社会的ネットワークの及ぼす影響に着目して―
    片桐 恵子, 菅原 育子
    2010 年4 巻1 号 p. 40-50
    発行日: 2010年
    公開日: 2025/09/19
    ジャーナル フリー

     本研究では過去の居住経験に着目し、子どもの頃の居住経験の有無により社会参加率に差があるのか、また居住経験と社会参加がコミュニティ感覚に関連があるのかを検討することを目的した。

     練馬区と岡山市の50歳~69歳の男女に二段階無作為抽出法により郵送留置き調査を2008年に実施した (回収率 58.9%)。

     過去の居住経験の有無と社会参加については子どもの頃の居住があった場合に最も社会参加率が高かった。

     コミュニティ感覚の3つの下位因子を従属変数とした重回帰分析の結果、「地域への愛着」では子どもの頃の居住と社会参加が、「価値の共有」では「社会参加」が、「近隣との関わり」では通勤経験と子どもの頃の居住と結婚を契機とした居住、社会参加がコミュニティ感覚と正に関連していた。

     過去に居住経験の無い地域では社会活動に参加しにくいが、社会参加をすれば、コミュニティ感覚が高まり地域社会に溶け込む一助となることが示唆された。

  • 吉江 妙実, 兪 今, 長田 久雄
    2010 年4 巻1 号 p. 51-59
    発行日: 2010年
    公開日: 2025/09/19
    ジャーナル フリー

    目的 : 本研究は、高齢領域における音楽療法士の精神的自立性と他専門職との連携の関連性を明らかにすることにより、音楽療法士と他専門職との連携に有益な資料を得ることを目的とした。

    方法 : 対象者は、日本音楽療法学会認定音楽療法士 (以下音楽療法士) 138人とした。分析対象者は、自記式調査票による郵送法調査で有効回答を得られた92人の内、高齢領域で実践している72人である。調査内容は、精神的自立性、他職種との連携については、「連携効果期待」、「他専門職知識」、「情報交換」、「情報取得」、「連携得点」、基本属性である。

    結果 : 「精神的自立性」と「他専門職知識」の間に正の相関がみとめられた(r = .374 p < .01)。「連携効果期待」と「他専門職知識」・「連携得点」の間にそれぞれ正の相関が認められた (r=.334 p<.01)・(r=.395 p<.01)。

     性、年齢、実践時間、勤務形態を制御した偏相関では、精神的自立性と専門職知識のあいだで有意な関連が認められた。(r = .452 p < .001)。

    結語 : 精神的自立性、特に目的指向性の高い音楽療法士は、他専門職の知識を多く持っていることが示された。音楽療法上が専門職としての目的意識を高め、他専門職の知識を多く得ることにより他専門職との連携を容易にする。このことは、今後の音楽療法の普及促進の一助となると考える。

総説
  • ―制度の性質の変遷と家族形態・家族機能の変化の観点から―
    西森 利樹, 安藤 孝敏
    2010 年4 巻1 号 p. 60-67
    発行日: 2010年
    公開日: 2025/09/19
    ジャーナル フリー

     成年後見制度においては親族成年後見人等の割合が減少傾向にある。本稿は右変化の主要因と今後の変化の方向性の検討を目的とし、後見制度の性質の変遷と家族形態・家族機能の変化の2つの観点から検討する。後見制度の性質は、家産維持から後見人利益保護、本人利益保護へと変遷し、本人利益保護を目的としつつ親族自治的性格を有するものと有しないものとがある。現行成年後見制度は本人利益保護を目的とし親族自治的性格を有しないため、成年後見人等は親族に限定されない。次に、独居・夫婦のみ高齢者世帯の増加等に基づく家族形態の変化に伴い、家族が福祉機能 (保健医療機能) を果たすことは困難となり、家族・親族のみが高齢者等の判断能力の補完の役割を担うのは難しい。よって、親族成年後見人等の割合減少は上記2点から根拠づけることができ、右傾向は続くと考える。今後は、第三者成年後見人等の確保、法人成年後見人等の意義の研究が重要となる。

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