物理探査
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65 巻, 1_2 号
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通常論文
英文誌要約
  • 物理探査学会会誌編集委員会
    2012 年 65 巻 1_2 号 p. 23-24
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル 認証あり
     今年から新たに発刊された英文誌「Exploration Geophysics」の内容を広く会員に紹介するために,掲載論文の要旨の翻訳を本誌に掲載することとした。今回は,英文誌のVol. 43 No. 1の要旨を紹介する。要旨の翻訳は会誌編集委員会にて実施した。なお,英文誌に掲載された論文は,本学会のホームページ経由で閲覧可能である。具体的には,本学会トップページ右側のバナー一覧のうち「Exploration Geophysics download site」を選択し,会員認証後PDFダウンロード可能となる。
特集:地殻・堆積地盤での減衰特性
論説
  • 松島 潤
    2012 年 65 巻 1_2 号 p. 27-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     減衰特性解明を目的とした超音波室内実験においては,測定媒体の内部構造をX線CTや核磁気共鳴画像技術を使用することによりミクロスケール不均質性を評価し,散乱減衰を適切に評価できる技術的素地が拓かれつつある。その一方で,地震波減衰解析のための減衰モデルや解析手法がその仮定とする前提を十分検証することなく適用される例が少なくない。本論説では,まず減衰解析で一般的に用いられる,指数関数で表現される減衰モデルを詳述し,その仮定を明らかにする。さらに減衰を表現するQ値 (1サイクルの波が有するエネルギーとその1サイクルの過程で失われるエネルギーとの比)は,現象論的な量であることを指摘する。次に,減衰解析手法で最も頻繁に適用されるspectral ratio法を例にして,手法が前提している要件について詳述する。また,減衰解析の際に必要な波形切り出しによる任意性の問題なども指摘する。最後に,減衰解析における散乱減衰の影響について,いくつかの室内実験例を基に,散乱減衰の重要性とその扱い方の難しさについて指摘し,特に散乱効果が最も大きいミー散乱過程においては減衰解析の視点から散乱減衰の理論やモデルの再考の必要性があることを述べる。
論文
  • 佐藤 浩章
    2012 年 65 巻 1_2 号 p. 37-51
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     地表に近い岩盤の減衰については,低周波数側(1 Hzから10 Hz程度)で強い周波数依存がみられるが,高周波数側ではほとんどみられなくなる「10 Hz付近での変移」や弾性波速度が大きいにも関わらず「大きな減衰(小さなQ値)」が得られるといった特有の性質が指摘されている.本研究は,地震動評価にも影響を及ぼすこれらの特性を明確にすることを目的として,岩盤地点の鉛直アレイ地震観測記録のS波重複反射波のスペクトル比の逆解析から減衰を評価した。S波重複反射波スペクトル比の逆解析では,「10 Hz付近の変移」を評価するのに適した減衰モデルとして,バイリニア型周波数依存モデルの適用を提案し,その存在を明らかにした。また,より高周波数側を対象とすることが可能なS波直達上昇波スペクトル比を用いた減衰の評価も行い,従来よりも幅広い周波数帯域での議論に基づき地表に近い岩盤の減衰の特性を明確にした。さらに,これらの結果を鉛直アレイ地震計付近で採取された岩石コアの超音波計測により評価した減衰と比較することにより,鉛直アレイ地震観測記録から評価される顕著な亀裂や不均質を含む実際の岩盤の減衰が,亀裂のない岩石コアにおける減衰よりも大きくなることを明らかにした。また,地表に近い岩盤における亀裂や不均質の状況について,検層データから不均質性の標準偏差(不均質強度)を用いて評価することを提案し,減衰の大きさとの相関性を示した。以上から,地表に近い岩盤の減衰について,亀裂や不均質に起因する減衰の付加効果を指摘するとともに,その効果が地盤のモデル化を通して地震動評価に必要となる地盤増幅特性に及ぼす影響を,検層データによる不均質性を考慮した速度構造のモデル化との対応に基づき考察した。
  • 重藤 迪子, 高井 伸雄, 笹谷 努
    2012 年 65 巻 1_2 号 p. 53-66
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     低周波数帯域 (<0.5 Hz) における伝播経路に沿った平均のQS値 (S波のQ値) を推定する新手法を提案する。提案手法では,震源のS波放射特性,深部地盤構造によるサイト増幅特性,幾何減衰を補正した観測スペクトルをS波走時に対してプロットした点の傾きから伝播経路のQS値を周波数ごとに推定する。上記の特性の補正には,媒質を完全弾性体 (QS=∞) とし,適切な震源特性及びサイト増幅特性を仮定して計算された理論波形によるS波スペクトルを用いる。この手法の成否は,各特性評価の精度に依存する。最初に,理論計算を基にして,この手法の有効性と各特性評価に関わる問題点について検討する。続いて,この手法を九州地方南部の火山フロント直下で発生したスラブ内地震による記録に適用し,九州地方背孤側マントルウエッジの低周波数帯域におけるQS値を推定する。推定されたQS値は,0.2~0.3Hzの周波数範囲で約50である。
技術報告
  • 中村 亮一, 植竹 富一
    2012 年 65 巻 1_2 号 p. 67-77
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     地殻から上部マントルの三次元減衰構造 (3-D Qs値) が,強震記録データからトモグラフィ手法によって求められている。深さ0-30kmの地殻に当たる部分では太平洋側ではHigh-Qs, 日本海側は全体にLow-Qsであり, 火山地域ではLow-Qsが推定されている。スペクトル領域でQ値の周波数依存性をみると地域によって異なり, 火山地域のQs値は周波数依存性が弱く,内部減衰が卓越するものと考えられる。しかし,北海道中軸部では周波数依存性が弱いLow-Qsが推定されており,これは温度勾配と比較すると熱構造以外の要因によるものと考えられる。また,地殻の上部は下部よりもLow-Qsの傾向がみられる。強震動予測を行う場合には,これらの不均質構造を考慮していくことが重要である。
  • 信岡 大, 東 宏幸, 大場 政章
    2012 年 65 巻 1_2 号 p. 79-90
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     本稿は,地盤減衰特性の評価手法のうちPS検層の手法について紹介し,調査事例の報告を行なうものである。PS検層の手法を用いた地盤減衰特性の評価法とは,地表にて人工的に弾性波を発生させ,地盤中を伝播する弾性波をボーリング孔内に設置した多数の受振器で収録し,収録された振幅を弾性波速度層区分ごとに解析することにより地盤減衰特性 (Q値) を求める手法であり,大規模な観測システムを必要とせず,かつQ値を高精度に求めることができる手法として注目される。また,周波数ごとにQ値を評価できることも特徴である。弾性波の地盤減衰特性について概説し,次いでPS検層の手法を用いたQ値の評価方法についての解説を行った後,硬岩,軟岩の両サイトで実施した調査事例を示した。調査事例では,人工振源としてミニバイブレータ振源を用いた調査事例を示した。調査事例より,S/Nの良い記録が収録され,弾性波速度層区分ごとの詳細なQ値が把握できた。結果の考察より,従来のPS検層の手法により求めたQ値が地層内の亀裂に起因する散乱減衰の効果を含む値であることを示した。これらの結果より,PS検層の手法を用いた地盤減衰特性調査の有用性が示された。
通常論文
講座
  • 田中 宏幸
    2012 年 65 巻 1_2 号 p. 93-102
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     宇宙から地球に飛来する一次宇宙線と大気の相互作用で作られる大気ミュオンを用いて巨大物体の内部構造を調べようとする実験は今から50年以上前に考案された。その後,ピラミッドや資源探査などをモチベーションとして数多くの科学者がミュオンを用いたイメージング技術 (ミュオグラフィー) の開発を試みてきた。しかし,既知の物質の発見など原理検証実験に留まる実験が多かった。2006年ミュオグラフィーを火山内部のイメージングに適用して始めて視覚的に確認できない部分の構造を描き出すことに成功した。その結果, これまで見ることができなかった,巨大産業プラント内部の可視化への応用も進んだ。本論文ではミュオグラフィーの歴史を振り返りながら, 当時の問題点を明らかにしつつ,その打開策を技術論的観点から論ずる。また,技術論文や解説記事として既に数多く出版されている2006-2008年のミュオグラフィー観測結果には触れずに出来るだけ最新の技術や観測結果を盛り込むことで, 現状と未来に焦点を当てた形とする。
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