低周波数帯域 (<0.5 Hz) における伝播経路に沿った平均のQ
S値 (S波のQ値) を推定する新手法を提案する。提案手法では,震源のS波放射特性,深部地盤構造によるサイト増幅特性,幾何減衰を補正した観測スペクトルをS波走時に対してプロットした点の傾きから伝播経路のQ
S値を周波数ごとに推定する。上記の特性の補正には,媒質を完全弾性体 (
QS=∞) とし,適切な震源特性及びサイト増幅特性を仮定して計算された理論波形によるS波スペクトルを用いる。この手法の成否は,各特性評価の精度に依存する。最初に,理論計算を基にして,この手法の有効性と各特性評価に関わる問題点について検討する。続いて,この手法を九州地方南部の火山フロント直下で発生したスラブ内地震による記録に適用し,九州地方背孤側マントルウエッジの低周波数帯域におけるQ
S値を推定する。推定されたQ
S値は,0.2~0.3Hzの周波数範囲で約50である。
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