物理探査
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65 巻, 4 号
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論文
  • 川林 徹也, 三ケ田 均, 後藤 忠徳, 武川 順一, 尾西 恭亮
    2012 年65 巻4 号 p. 213-222
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     反射法地震探査におけるマイグレーション処理において,マイグレーションのイメージ範囲を制限することは,マイグレーションノイズを抑制する上で大変重要である。フレネルボリュームマイグレーションでは,弾性波の周波数によって定められるフレネルボリュームと呼ばれる空間領域を通ってエネルギーが伝播すると考え,このフレネルボリュームをイメージ範囲の基準にする。フレネルボリュームマイグレーションで重要となるのが,フレネルボリュームの位置決定であり,受振器への弾性波入射角を精度よく求める必要がある。
     これまでの研究では,トンネル切羽前方探査やVSP探査などで三軸の受振器データより得られたスローネスベクトルを用いて弾性波の入射角を推定したフレネルボリュームマイグレーション処理が報告されている。また,1成分計の受振器では,複数の受振器で相互相関を取ることで弾性波の入射角を推定しようと試みられてきた。しかし,この手法は複数の入射波が同時に受振器に到達した場合,弾性波の入射角を見誤ってしまい,フレネルボリュームの位置決定を誤ることとなる。
     本研究では,このような場合にも安定して,入射角決定を行うために,τ-p変換を用いた弾性波の入射角決定を行った。この入射角決定を用いたフレネルボリュームマイグレーション手法を点モデルと傾斜モデルの2つの2次元数値モデルへ適用し,スローネスベクトルで入射角決定を行ったマイグレーション結果と比較・検討した。その結果,両手法ともにマイグレーション処理に適用できる入射角決定手法であり,さらに,τ-p変換を入射角決定に用いることで,三軸受振器を入射角決定に用いるより安定してフレネルボリュームの位置決定が行えた。
  • 高倉 伸一, 吉岡 真弓, 内田 洋平, 石澤 友浩, 酒井 直樹
    2012 年65 巻4 号 p. 223-236
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     斜面に浸透した水によって地盤や岩盤の強度が低下し,地すべりや岩盤崩壊などが起こりやすくなるので,このような斜面災害の防災を考える上で,斜面内の水分状況の時間変化を空間的に把握することが重要とされている。その把握方法の一つとして比抵抗モニタリングの適用があげられる。その有効性を検証するため,我々は盛土の斜面で比抵抗モニタリングの実験を行った。本研究では,2011年2月から約1か月おきに1年間の比抵抗法電気探査の繰り返し測定を行い,また2011年9月末から10月上旬にかけての2週間には降雨の前後で6時間おきの短期連続観測を行った。1年間の繰り返し測定では,盛土中の比抵抗は湿潤な夏季に低くなり,乾燥する冬季に高くなるという季節変化が明瞭にとらえられた。比抵抗の長期的な変化は主として温度変化によるものと考えられるが,短期的な変化には降雨による水分変化が大きく反映されている。そこで,比抵抗に温度補正を行ったところ,体積含水率との負の相関が明らかになった。このことは,温度補正をすることで比抵抗モニタリングから長期の水分変化の推定ができることを示している。また,降雨の前後で実施した短期連続観測では,降雨による盛土中の体積含水率の急な変化が比抵抗変化として把握できることが示された。比抵抗と体積含水率との間には明瞭な線形関係が認められないので,比抵抗変化から体積含水率の変化を定量的に求めることは難しいものの,低飽和領域における斜面内の水分変化の監視に比抵抗モニタリングが有効であると判断できる。
  • 地元 孝輔, 山中 浩明
    2012 年65 巻4 号 p. 237-250
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     これまで多くの地震波干渉法の研究において長期間微動記録の相互相関によって観測点間の波動伝播速度を推定しているが,地震波干渉法ではグリーン関数を合成できることが理論的に示されているため,本研究では相互相関関数の位相だけでなく,振幅の挙動について考察する。Tsai(2011)の理論的考察によれば相互相関関数の振幅のシグナル部分は地盤のパラメータのみによって決まるが,ノイズ部分は相互相関解析に用いる微動記録長の平方根に反比例する。そこで南関東地域で得られた半年間の微動記録によって求められた相互相関関数を検討すると,相互相関関数の最大振幅は各観測点間で固有の値をとり,ノイズの平均振幅は解析に用いる記録長の平方根に反比例し,理論と調和的である。また,ノイズの平均振幅は短周期成分ほど大きく,長周期成分ほど小さくなるべき乗則に従う。最大振幅もノイズの平均振幅と同様の傾向を示す場合があり,解析に用いる微動記録長が短いためシグナルが検出できていないためであると考えられる。このため相互相関関数の最大振幅とノイズの平均振幅の比較によってシグナルが検出できているか判断できる。このことを利用して地震波干渉法におけるデータ処理の影響を検討する。地震波干渉法において通常用いられる1ビット化処理は有用であるが,あらかじめ適当なフィルタ処理を必要とすることがわかる。また,長期間の微動記録を部分分割するときにはできるだけ短い長さで分割した方がSN比は向上する。最終的に得られる最大振幅は解析記録長によらず一定値を保つため,その値により地盤の減衰パラメータを同定できる可能性があり,最大振幅値の距離減衰について考察すると,短周期成分ほど減衰が大きいという妥当な結果が得られる。
講座
  • 鈴木 敬一
    2012 年65 巻4 号 p. 251-259
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     社会インフラ施設の老朽化などにより,地盤内部に空洞が発生し,陥没事故などが発生している。場合によっては死傷者が出るなどの惨事になる場合もある。そのため陥没が生じる前に地盤の空洞化を検出することが求められている。一方,空洞を調べるには地中レーダや反射法地震探査,電気探査などが適用されるが,探査深度や分解能が不足する場合がある。地盤の密度に関係する物理探査手法は,重力探査や密度検層などの方法しかない。宇宙線ミュー粒子を利用した探査技術は地盤の密度分布を求めることが可能である。従来の物理探査手法を補う方法として宇宙線ミュー粒子を利用した地盤探査技術を実用化することを目標として,ミュー粒子計測器と三次元トモグラフィ技術を開発してきた。本稿では,宇宙線ミュー粒子探査技術の原理と基礎的な実験および土木物理探査への可能性について示す。
英文誌要約
  • 物理探査学会会誌編集委員会
    2012 年65 巻4 号 p. 261-263
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     今年から新たに発刊された英文誌「Exploration Geophysics」の内容を広く会員に紹介するために,掲載論文の要旨の翻訳を本誌に掲載する。今回は,英文誌のVol. 43 No. 3の要旨を紹介する。著者による原著という注釈があるもの以外,要旨の翻訳は会誌編集委員会にて実施した。興味をもたれた論文に関しては,是非とも電子出版されたオリジナル版をチェックいただきたい。なお,英文誌に掲載された論文は,本学会のホームページ経由で閲覧可能である。具体的には,本学会トップページ右側のバナー一覧のうち「Exploration Geophysics download site」を選択し,会員認証後PDFダウンロード可能となる。
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