物理探査
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69 巻, 4 号
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論文
  • 白石 和也, 阿部 進, 高橋 亨, 津村 紀子, 伊藤 谷生
    2016 年 69 巻 4 号 p. 249-267
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     地震動評価のための深部地下構造の把握を目的として,近地地震のP直達波からS直達波までのPコーダ波に対する地震波干渉法解析の適用性について検討した。地下構造に関する情報が豊富に存在する千葉県成田市において,稠密地震計アレイを用いて2010年12月から2011年4月までの約4ヶ月間の自然地震連続観測を行い,近地地震Pコーダ波の地震波干渉法解析により地殻構造のイメージングを試みた。データ解析では,まず,気象庁一元化震源リストを基に選定条件を満たす近地地震の記録を連続観測記録から切り出し,P波とS波の初動走時を手動により読み取りつつ品質確認を行った後に437個の良質な近地地震記録を選別した。次に,上下動成分についてP波初動とその多重反射波が含まれるPコーダ波部分を解析対象として,干渉法解析を行って仮想震源記録を合成した。最後に,合成された擬似反射波記録に対して反射法データ処理を施してP波反射波による地下構造断面を得た。解析の結果,基盤からの反射波を明瞭に識別できる擬似反射法記録が合成され,展開長1kmの稠密展開測線では高分解能なP波反射波断面が得られ,受振点間隔の粗い展開長5kmの測線では比較的深部の反射波と考えられる波群を確認することができた。地震毎に震源関数の異なる近地地震を解析する際には,震源関数の影響が抑制されるデコンボリューション型干渉法が適していることを示した。また,解析に利用する地震イベント数や震央の方位分布について反射波合成への影響を評価し適用性を確認した。本研究により,稠密な地震計アレイを用いた近地地震のPコーダ波の干渉法解析は,地殻内の堆積構造や基盤形状など深部地下構造の調査法として有効であることが示された。
  • 城戸 隆, 佐藤 源之
    2016 年 69 巻 4 号 p. 269-279
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     広帯域ボウタイアンテナと携帯型ベクトルネットワークアナライザ (Vector Network Analyzer) を組合せた連続波周波数掃引型地中レーダ (Stepped-Frequency Continuous Wave Ground Penetrating Radar) は,深さ20 cm,80 cm及び2.5 mに埋められた埋設物の検知性能において,3種類の周波数帯域の異なる商用パルス型GPRに対して優位性を示した。SFCW型地中レーダは,深さ20 cmと80 cmの金属パイプに対しては比較した全ての商用のパルス型地中レーダに比べて信号・クラッタ比が優れ,中心周波数250 MHzのパルス型地中レーダに比べ深さ分解能が優れている結果が得られた。これらの結果から,本SFCW型地中レーダ単独によりパルス型地中レーダでは相容れることの難しい深い探知深度と高分解能の両立を図ることができ,複数のパルス型地中レーダの組合せとの置き換えや優先的なフィールドへの導入が期待される。
  • 狐崎 長琅
    2016 年 69 巻 4 号 p. 281-288
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     熱膨張源による重力変化について,狐崎(2015)は理論的モデルを提示した。その基礎面の議論において,十分説明しつくせないところがあった。本論文では,それらを2課題に区分して,体系的に補足する。第1の課題は,半無限弾性体中の微小膨張源による重力変化である。第2の課題は,半無限の透水性水飽和多孔質媒質中の微小熱膨張源による重力変化である。まず第1課題について,解析過程の概要を萩原(1977)に基づいて図解し,その基礎概念を明確にする。これにより第2課題に立ち入る道も開かれる。第2課題内では前論文中の不正確な記述も修正する。
ケーススタディ
  • 白石 英孝, 八戸 昭一, 佐坂 公規
    2016 年 69 巻 4 号 p. 289-296
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     微動探査法を用いて埼玉県北東部に位置する加須低地内のS波構造調査を実施した。調査対象は東西約20km,南北約15kmの地域で,空間自己相関 (SPAC) 法を用いた位相速度推定および遺伝的アルゴリズムを用いた逆解析によってS波速度構造の推定を行った。既往の知見によれば,この地域の最大深度は3 kmに及ぶことが予想されたため,SPAC法のアレイ半径については600 m, 300 m, 100 mを基本とし,調査地点の周辺状況に応じて適宜変更を行った。また逆解析に必要な初期モデルについては,埼玉県が実施した地震被害想定調査の地盤モデルを援用して作成した。この調査の結果,現行の地盤モデルと概ね調和する結果が得られたが,一部の地点では基盤上面深度にやや相違がみられるなど,モデルのさらなる検討を必要とする可能性が示唆された。
講座
  • 早川 裕弌, 小花和 宏之
    2016 年 69 巻 4 号 p. 297-309
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     デジタルカメラを搭載した小型無人航空機 (UAV: Unmanned Aerial Vehicle,通称ドローン,または UAS: Unmanned Aircraft System) の普及により,空中からの多視点画像の撮影が容易になった。加えて,多数のステレオペア画像から撮影対象の3次元モデルを生成するSfM多視点ステレオ写真測量 (Structure-from-Motion Multi-View Stereo Photogrammetry,以下 SfM) の手法開発も進んでおり,これらが組み合わさって,空中撮影画像のSfMによる地形・地物計測がさまざまな分野で広まっている。本稿では,まずプラットフォームとしてのUASと,地形計測手法としてのSfMをそれぞれ概説し,次にUASを用いた空中撮影によるSfMの地形計測適用事例をいくつか紹介する。UAS-SfM手法の低価格化と簡素化により,地形や地物を対象とした空中計測に基づく迅速・高精細な3次元データの取得や,形状変化の経時的追跡を,研究者や実務者など誰もが自ら実施することができるようになってきており,各種物理探査の基礎情報としても有効活用されることが期待される。一方,対象とする現象のスケールとその目的により,適切な解像度および精度をよく検討したうえで,こうした地形計測を実施することが望まれる。
英文誌要約
  • 物理探査学会会誌編集委員会
    2016 年 69 巻 4 号 p. 311-315
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     英文誌「Exploration Geophysics」の内容を広く会員に紹介するために,掲載論文の要旨の翻訳を本誌に掲載する。今回は,英文誌のVol. 47 No. 3の要旨を紹介する。
     今回は,豪州パースで昨年開催された国際学会 (ASEG-PESA2015) の特集となっており,ケーススタディに関する9編の論文が掲載されている。
     要旨の翻訳は,著者による原著版と記載されている論文以外は,会誌編集委員会にて実施した。興味をもたれた論文に関しては,是非とも電子出版されたオリジナル版をチェックいただきたい。なお,英文誌に掲載された論文は,本学会のホームページ経由で閲覧可能である。具体的には,本学会トップページ右側のバナー一覧のうち「Exploration Geophysics download site」を選択し,ウエブページ上の指示に従い,会員認証後PDFダウンロード可能となる。
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