地下の3次元的な地震波減衰構造を推定するため, 複数の観測点で得られた複数の地震の波形スペクトルから震源パラメター, Q構造, 観測点近傍の地盤増幅特性の同時推定を行うインバージョン法を紹介する。また, その方法を2004年に発生した中越地震の余震データに適用し, 震源域近傍の詳細なQ構造を求めたので報告する。
中越地震余震の波形データから推定されたQ値の分布は, 本震断層面を境として西 (上盤) 側が相対的に低く, 東 (下盤) 側が相対的に高い。西側の低Q値領域は地表の堆積層分布とほぼ一致し, 西に傾いて深くなる傾向が見られた。東側の高Q値領域はこの地域の基盤に対応すると考えられる。本震断層と平行し, 約5km 下に位置すると考えられる余震の断層面や東下がりの断層面などの周辺では周囲よりQ値が低下する部分が存在する。他の地球物理学的データを比較すると, これらの減衰の特徴は日本海拡大時のリフト構造に関連した堆積構造および基盤の形状を表していると考えられ, また高Q値領域内でのQ値低下は本震の震源断層周辺での複雑な応力分布に影響を与える堆積岩や基盤岩内の弱い領域を示している可能性がある。
抄録全体を表示