深海掘削計画 (DSDP, ODP, IODP) を通じて実施されてきた,掘削孔内での原位置温度計測の機器と手法を紹介する。地球内部の温度分布を推定するための有用な手段の一つとして,掘削孔内での原位置温度計測が深海掘削計画を通じて実施されてきた。地層中の温度を正確に測定するためには,掘削の最先端よりも先に温度プローブを突き出して,掘削の擾乱が及んでいない場所での温度を測定するのが理想的な方法である。これまでに,水圧式ピストンコアラーの先端(シュー)内部に温度計を組み込んだもの(APC ツール)と,槍状の温度計を先端から下に突き刺すものが開発され,測定実績を上げてきた。温度センサー自体はmkオーダーまでの相対精度を持つが,貫入による摩擦熱の影響を補正することによる誤差,あるいは突き刺した地層中に裂け目が生じたり途中で動いたりして温度場が乱れることによる誤差が大きく,その精度は0.1-1 Kの程度である。APCツールでは,ピストンコアが貫入できる深度である100m程度が測定限界であるが,先端の直径が1cm以下のものでは,海底下400m程度までの計測が可能になった。これまで海底熱水域や付加体での計測が行われ,流体移動の証拠などの結果が得られている。
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