物理探査
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68 巻, 4 号
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論文
  • 本田 利器, プレム プラカシュ カトリ, 盛川 仁
    2015 年 68 巻 4 号 p. 253-263
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     重力の移動観測を従来より容易にするため,フォースバランス型の加速度計を用いた小型で取り扱いの容易な重力観測装置の開発が進められている (松尾ほか, 2012)。しかし,移動観測により得られた観測記録には,発生源が明らかでないもの含め様々なノイズが混入する。それらはローパスフィルタだけでは十分に除去できないという課題も明らかになっており,適切なノイズ除去手法が求められている。
     本研究では,ノイズと重力の観測記録の統計的な独立性に着目してノイズを除去する手法の利用を提案する。そのため,複数の原信号が混入した信号から原信号を分離するブラインド信号源分離 (Blind Source Separation) で用いられている手法である,Second Order Blind Identification (SOBI) とThin-Independent Component Analysis (Thin-ICA) の有効性を検討する。
     開発中の装置を使って富山湾で船舶による重力の移動観測を実施し,その観測記録に上記の手法を適用した。得られた結果を,産総研による高精度な重力探査のデータと比較したところ,一定の条件を揃えた観測記録からは,良好な結果が得られた。これは,独立性に基づく手法が,ノイズ除去手法として有望であることを示すと考えられる。しかし,常に適切な結果が得られたわけではなく,必要な観測条件等について検討が必要であることも明らかになった。
  • 笠松 健太郎, 山中 浩明, 酒井 慎一
    2015 年 68 巻 4 号 p. 265-275
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      地震動評価で重要となるS波速度構造モデルの構築に資するため,深部地盤の二次元S波速度構造を推定する手法について検討した。本手法では,二次元仮定が成立する伝播経路を対象とした構造推定のため,はじめに観測記録を分析してラブ波伝播特性を調べる。次に,ラブ波がほぼ同じ方向に伝播する測線上の観測記録を用いて,ラブ波を対象とした波形インバージョンを行い,二次元S波速度構造を推定する。提案手法を2011年富士山付近の地震(MJ6.4)を対象とした地震動の三次元シミュレーションによる周期6~10秒の速度波形に適用し,手法の妥当性を確認した。この手法を同地震の相模原と世田谷を結ぶ測線上の地震観測記録に適用し,この断面の二次元速度構造を推定した。観測記録のラブ波成分は良く再現され,推定結果の速度構造は地震調査研究推進本部(2009)のモデルに比べて堆積層が薄く求められた。この結果の妥当性を確認するため,観測記録のcoda部分を用いて水平上下スペクトル比を算定し,理論によるレイリー波の基本モードの楕円率と比べた。観測されたピーク周期は推定結果の方と良く一致しており,構造モデルが妥当であると考えられることを確認した。
  • 楠本 成寿
    2015 年 68 巻 4 号 p. 277-287
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     ダイクのように,一様な傾きをもつ2次元的な構造の傾斜角推定に用いられる手法を,断層や構造境界の傾斜角推定に応用した。応用に先立ち,断層あるいは構造境界の傾斜角の推定に応用できるかどうかの数値テストを行った。その結果,それらの傾斜角を推定でき,推定された傾斜角の分布から正断層と逆断層の違いを識別できることが明らかになった。実フィールドへの応用として,伊予灘から別府湾を経て豊肥火山地域に至る地域周辺の重力異常に本手法を適用し,既存研究で得られている構造傾斜角と調和的な傾斜角分布を得た。
  • 高見 雅三, 土谷 富士夫, 山口 覚
    2015 年 68 巻 4 号 p. 289-303
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     北海道のように寒冷環境にある地域では,土は冬の寒気で凍結し,春の暖気で融解して消失するのを,永久凍土と区別して季節凍土と呼ぶ。凍結時には地上の構造物などに凍上害を,融解時には路面では陥没やひび割れなどの発生,裸地斜面では斜面崩壊の促進,農地では融雪水の排水の妨げや地温上昇の遅延などを発生させる。凍結・融解による被害が発生する恐れがある地域では,保守・設計・防災の観点から,凍土の凍結・融解による分布や厚さ等の変化を把握することは重要である。
     日本では比較的土壌凍結深が深い帯広において,気温,地温,凍結深,および二極法を用いた比抵抗の測定を長期間に実施した。そのうち1995年11月1日から1996年5月31日までの測定データと比抵抗二次元解析による比抵抗構造から凍土の凍結・融解の面的かつ時間的な変化の把握を試みた。
     凍結過程では,未凍土時の数百倍の高比抵抗域は,浅部にほぼ水平に点在し,その深度は,地温の0℃(凍結線)の等温線とともに深くなることから,凍結領域と解釈できる。融解過程開始直後では,凍結深がほぼ同じであっても地温は0℃近くまで急上昇するため,比抵抗の急減に伴い比抵抗構造は大きく異なることから,最大凍結深に達したかどうかの判定に利用できる。凍結過程でほぼ水平に点在していた高比抵抗域は,融解過程では値を下げながら水平方向につながり,その後,その中心深度は徐々に未凍結深度まで達する。最終的に地下に向かって高比抵抗域が拡散するように消滅し,凍結前の状態になる様子を捉えることができた。
     二次元比抵抗構造モデルと凍結深等の実測値により,凍結・未凍結および融解・凍結の境界は,高比抵抗域の中心深度ではなく,凍結過程では少し浅く,融解過程では少し深い位置にあることなどが捉えられた。これは比抵抗構造から凍結・融解時の面的かつ時間的な変化の把握等が可能であることを示している。
英文誌要約
  • 物理探査学会会誌編集委員会
    2015 年 68 巻 4 号 p. 305-308
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     英文誌「Exploration Geophysics」の内容を広く会員に紹介するために,掲載論文の要旨の翻訳を本誌に掲載する。今回は,英文誌のVol. 46 No. 3の要旨を紹介する。
     要旨の翻訳は,著者による原著版と記載されている論文以外は,会誌編集委員会にて実施した。興味をもたれた論文に関しては,是非とも電子出版されたオリジナル版をチェックいただきたい。なお,英文誌に掲載された論文は,本学会のホームページ経由で閲覧可能である。具体的には,本学会トップページ右側のバナー一覧のうち「Exploration Geophysics download site」を選択し,ウエブページ上の指示に従い,会員認証後PDFダウンロード可能となる。
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