科学・技術研究
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1 巻, 2 号
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巻頭言
特集
連載
総論
  • 太陽電池・風力発電機関連産業等の事例研究
    海上 泰生
    2012 年 1 巻 2 号 p. 85-102
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    今日、世界各国で官民を挙げて再生可能エネルギーの推進策が進められている。とくに、我が国においては、東日本大震災以降、原子力発電を含む電力供給に大幅な制約が加わり、また、新たに再生可能エネルギー固定価格買取制度が施行されたこともあって、新エネルギーへの期待は、これまでになく高いものになっている。本稿では、そうした環境・新エネルギー産業の各分野で実際にみられる中小企業の重要な役割について、インタビュー調査先企業の実例を取り上げて具体的に明らかにする。例えば、太陽電池産業を思い浮かべると、大規模設備による大量生産という装置産業的な色彩が強く、一見すると、中小企業の関与が薄いイメージを抱きがちである。しかしながら、太陽電池産業は、大手の完成品メーカーのほかに、原材料、副資材、製造装置、システム周辺機器などを供給する多くのプレーヤーを含む裾野の広い一面も持っている。そこでは、中小企業が重要な役割を担っており、その存在感は決して小さくない。こうした着眼点から、太陽電池産業のみならず風力発電機産業においても、同様に中小企業が大きなプレゼンスを示していることについて、実例を交えて詳述する。各分野における中小企業の重要な役割を認識した上で、次に、期待が集まるこれらの産業に参入した中小企業の成功事例を基にして、環境・新エネルギー産業において観察される中小企業の参入行動の特徴を詳述していく。参入のタイプは大きく分けて、(1)自発的・自立的参入、(2)取引先等のリード、(3)既存市場のシフト、の3つが考えられる。さらに、参入タイミングの違いを加味すると、それぞれに特有の課題や克服策を抽出することができる。こうした分析の結果、参入行動においては、(1)新規有望分野の受注を呼び込む力、(2)既存中核事業とのバランス、(3)未成熟な分野で活きるカスタマイズ能力、(4)政策に依存する市場特性への理解、(5)理想的に小さい市場の探索、などがポイントになることが明らかになった。
原著
  • 餌止めによる水銀およびセレン分布に及ぼす影響
    甲斐 徳久, 高橋 幸則, 田上 保博, 田中 竜介, 福島 英登, 前田 俊道, 福田 裕, 永井 毅
    2012 年 1 巻 2 号 p. 103-105
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    一般に、養殖場では、魚価の上昇をねらっての品質向上、鮮度アップを目途として、出荷前に成魚の餌止めが実施されている。本研究では、餌止めにより魚体内で起こる種々の微量成分の代謝・分布変動を明確にするため、マルアジを試料魚として、最大33日間の餌止め(蓄養)を実施し、筋肉中の水銀とセレンの分布変動を観察した。その結果、両元素レベル(特にセレンについては、低酸化状態セレン)は経日的に減少する体重とともに、減少する傾向を示した。また、この間の両元素レベル間に強い正の相関(ro = 0.99)が認められた。以上得られた知見から、餌止めの実施は、加えて水銀等の重金属の排出を助長していることが明らかとなった。
  • 自転車に対する愛着意識と放置駐輪問題を対象として
    羽鳥 剛史, 福田 大輔, 三木谷 智, 藤井 聡
    2012 年 1 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、モノに関する記憶の想起がそのモノに対する愛着意識にどのような影響を及ぼすかについて実証的に検討することである。この目的の下、具体的なモノとして「自転車」に着目し、大田区在住の自転車利用者704名を対象として実験を行った。この実験では、自転車に関する記憶を想起する条件を設定し、自転車への愛着意識に及ぼす影響を検証した。併せて、放置駐輪問題に関して、実験対象者の放置駐輪に対する態度を測定し、実験条件との関連を検討した。その結果、自転車に関する記憶を想起することにより、自転車への愛着意識が向上する効果が示された。さらに、自転車への愛着意識が放置駐輪を控える傾向と関連している可能性が示された。自転車に関する記憶の想起と放置駐輪に関わる態度との間には直接的な関連性は認められなかったが、共分散構造分析より、自転車に関する記憶の想起が愛着意識を活性化し、愛着意識が放置自転車配慮傾向(及び放置駐輪抑制意図)、放置自転車配慮傾向が放置駐輪抑制意図を活性化する、という因果プロセスの妥当性が示された。また、自転車に関わる記憶の想起による効果がどのような条件に依存しているかについて検証したところ、主な交通手段が自転車でない人、有料駐輪場を利用しない人、盗難経験のない人においては、自転車に関わる記憶を想起することによって、自転車への愛着が向上する効果がとりわけ強いという結果が示された。最後に、本研究の結果が放置駐輪問題に対して示唆する点についてとりまとめた。
  •  
    南 繁行
    2012 年 1 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    日本ではまだ普及が途に就いたばかりである電動船の魅力について最初に記載し、その実現における技術的課題を明らかにした。更に、船という、信頼性こそが一番重要と思われる乗り物における、航続性能とロバスト性能を向上させるために、プラグインハイブリッド船(Plug-in Hybrid Boat: PHEB)が有効であることを示した。本論文では、試作した2艇についての開発経緯と、その特徴、及び得られた特性について述べた。試作艇を評価した結果、目的とする実用的でかつ低騒音、低振動、排ガスの出ない特徴が電動船モードでは得られ、ハイブリッド船としての高い信頼性があることも明らかになった。結論では、この研究を通じて感じた、日本の繁栄の行く末についての私論を述べた。電池で航行する電動船は、日本の技術者にとって、その能力を発揮できる分野にも拘わらず、その開発が諸外国よりも遅れをとっている理由についても論じた。
  • 伊藤 知之, 加藤 直貴, 深瀬 薫子, 佐々木 優, 本田 千秋, 立花 和宏, 仁科 辰夫, 大場 好弘
    2012 年 1 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    有機トランジスタ用の有機半導体は数多く合成されている。キャリア移動度を測定するには実際に有機トランジスタを作製しなければならない。しかしながら模擬デバイスを使った評価ではその作成に大掛かりな装置が必要であり、また時間もかかり、評価コストが大きい。さらにサンプルとして模擬デバイス作成に必要な分量が多く微量評価ができなく、合成された有機半導体の移動度を微量かつ簡便・迅速に評価する方法が見当たらない。本研究ではコンダクトメトリーにより有機化合物の溶液の導電率が有機半導体の評価に使えるかどうか調べることを目的とする。結論として有機化合物半導体の特性は、有機化合物の溶液の導電率を測定することにより、微量の試料を迅速かつ容易に評価することが可能である。有機化合物の溶液の導電率は、分子の実際の半導体特性に関連している。スタッキングの感度は、デバイスの移動度および有機化合物の溶液の導電率と比較して評価することができる。
  • Nobuo Obara, Masami Ishida, Naoko Hamada-Sato, Naoto Urano
    2012 年 1 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    The authors paid attention to paper shredder scrap as biomass and studied bioethanol production from them using marine derived yeasts. We reviewed current production methods, suggested the production method that minimized chemical agent use and machinery, and we found out additionally a superiority of paper shredder scrap as a material. As for the saccharification of the material, it was compared sulfuric acid hydrolysis followed by enzymatic saccharification with only the enzymatic one. As a result, the amount of glucose production with the enzymatic saccharification was higher than that with the sulfuric acid followed by the enzymatic one. We found that glucose of 75 g was produced by only the enzymatic saccharification from the paper of 100 g. In this study, the saccharification solution of glucose concentration 270-290 g/L was used by all fermentation tests. About ethanol fermentation, a Saccharomyces cerevisiae C-19 derived from Tokyo Bay was mainly used and both a S. cerevisiae NBRC 10217 and a S. cerevisiae K-7 were used as control strains. As for the fermentation methods, the static fermentation, the agitating fermentation, and the repeated fermentations with immobilized yeasts using the alginate beads were performed. Furthermore, as a new way to increase the amount of total ethanol, ETS (Ethanol Trap System) was developed. By the agitating fermentation, the maximum ethanol concentration of 12 % (w/v) was observed using the strain C-19. In addition, 8.5 % (w/v) of ethanol concentration was produced by the repeated fermentation using immobilized yeast cells. In this study, we discussed both an optimum saccharification condition with enzymes and an optimum fermentation condition for ethanol production using the marine yeast strain C-19. Moreover, these results established that the paper shredder scrap was useful as a novel material for bioethanol production.
  • 高橋 琢理, 高原 健爾, 足立 孝仁, 小田部 貴子, 若松 秀俊
    2012 年 1 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、社会的に大きな課題となっている大学生の基礎的学力低下に対する支援の指針として、基礎数学科目の学習状況から学生の理解の様子を推測し、その結果に基づいて支援を実施しようとするものである。福岡工業大学電気工学科で開講された2つの数学基礎科目で、学習自己点検を実施し、受講生に各自の学習について振り返らせて、その改善点に気づかせ、継続的な学習を促す取り組みを行ってきた。また、知識の定着度を確認するために、講義ごとの内容について小テストを実施した。ここでは、小テストの得点および期末試験の得点との相関と、一週間の学習時間と期末試験の得点の相関について検討した。その結果、小テスト得点と期末試験得点には有意な相関が見られたが、学習時間と期末試験の得点には明確な相関は示されなかった。一方で、多くの学生に、図形的な理解力が不足傾向であることがわかり、学習量が少ないだけでなく学習方法にも問題があることがわかった。
  • 藤田 直樹, 齋藤 佑, 日塔 優太, 伊藤 智博, 水口 仁志, 遠藤 昌敏, 尾形 健明
    2012 年 1 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    多数の検体中の総ポリフェノール量を同時に定量するために、スキャナーを用いるフォーリンチオカルト法-比色分析法について、コストパフォーマンスの立場から検討を行った。フォーリンチオカルト法では、ポリフェノールを含む試料は青色に着色されるので、スキャナーで取り込んだ画像のRGB値からR値を求めた。このR値から計算した吸光度は、クロロゲン酸、没食子酸などの代表的なポリフェノールの濃度に比例することがわかった。本法のコストパフォーマンスを議論するために、通常の紫外可視吸光高度計、デジタルカメラ、マイクロプレートを用いる各方法でも同様の測定を行った。結果として、いずれの方法も検量線の精度は同じであったが、多検体同時分析を行う場合、短い測定時間と装置の価格などのコストパフォーマンスの立場からスキャナー法が優れていると判断された。今後、本法が機能性食品の製造現場で使用されることが期待される。
短報
  • 思い出を紡ぐプロジェクト
    桑原 教彰
    2012 年 1 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    我々は、情報通信技術(ICT)を活用することで在宅介護、あるいは施設介護を受けている高齢者のQOLを改善するための方法を研究している。その一環として、高齢者の古い写真をデジタル化し、クラウドサービスにこれらの写真をアップロードすることで、これらデータを介護サービスにおける様々な場面で活用するできる環境を構築した。具体的にはインタラクティブなデジタルフォトアルバム、スライドショービデオなどの各種メディアに変換して高齢者の思い出を紡ぎ、家族や施設スタッフが高齢者と共にそれを見ながら傾聴する。さらに高齢者のコミュニケーションの機会を増やすためにテレビ電話を導入し、高齢者と傾聴ボランティアが離れた場所にいても前述のメディアを共有しながら遠隔傾聴できる環境も構築した。また介護施設と通所利用者の自宅にテレビ電話を導入し、服薬管理などに活用している。
資料
  • 棚瀬 繁雄
    2012 年 1 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/11
    ジャーナル フリー
    ブタジエンとスチレンの共重合体から成り、耐久性に優れ、透明度が比較的高いK-RESINで作られたプラスチック瓶を利用して、電気化学セルを試作した。瓶の壁を貫通した白金線をエポキシ系の接着剤で固定することで、白金電極を容器内に設置した。また、電極に白金黒をめっきした。容器に希硫酸などの電解質溶液を入れ電源を繋げば、水の電気分解などを行うことができる。実験後はその容器に蒸留水などを入れて保管する。プラスチック瓶の形状や加工性に制約があるものの、ガラス細工が不要、衝撃で容器が割れることがないなど、従来のガラス製のセルとは異なる利点が認められた。更に、抵抗、キャパシタ、ダイオードを使って、水の電気分解におけるセルと類似の特性を示す電気回路を考案した。
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