電子顕微鏡で生物試料を観察するには,光学顕微鏡とは違つて,標本作製の過程で種々の物理的化学的操作を経なければならないので,artefactの生ずる可能性がある,このようなartefactの少ない標本,つまり試料の生の姿をそのまま観察したいという希望は,この分野での研究者の古くからの念願であり,そのための試みも幾つかあるが,容易に成功の域には達しなかつた.最近になつてこの問題は大きくクローズ・アップされ,広く関心がもたれるようになつてきた.根井は,この目的のために電子顕微鏡学に凍結法を導入し,多年に亘り装置並びに操作に種々の工夫を加えてきた.特に透過型電子顕微鏡による凍結細胞の直接観察を初めて試みたが,本法による観察には限界のあることをみとめた.そこで次の手段として走査型電子顕微鏡による凍結試料の直接観察をねらい,これが可能であることをみとめた上,さらに,凍結破断を行なうことにより,試料内部の断面観察にも成功したので,その方法および結果を報告する.
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