細菌を凍結すると,一部の細胞は障害をうけ,その後の培養条件の適否によってviabilityが左右される状態(injured cell)となる.Injured cellは,凍結処理だけでなく,乾燥やcold osmotic shockによってもおこる.このinjured cellの主な特徴は,(1)細胞膜障害,(2)一部の細胞成分の流失,(3)栄養要求性の複雑化,(4)各種の環境因子(たとえば温度,NaClなど)にたいする感受性増大である.Injured cellがviabilityをとりもどすためには,最少培地にアミノ酸やある種のペプチドを添加する必要がある.またinjured cellが死に移行する転機の一つとして,細胞内の自己分解酵素が活性化される可能性はすでに論じた.本報では,加熱によってひきおこされる障害菌と,凍結障害菌が,同じ性質を有するか否かを,とくにinjuryの修復条件を比較して明らかにしようとした.
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