凍結乾燥法の特徴の一つは,この方法によると試料は原形を保ち立体的配位を維持したまま脱水乾燥されることである。特に急速凍結によれば,生の状態或は乾燥前の状態を再現できるものとして,形態的観察の場合にこの方法が多く利用されている。一方,凍結乾燥法はまた,種々の生物学的試料の活性の保持を目的に用いられるが,凍結の条件や保護物質の種類などが活性に影響を及ぼすことは周知のことである。試料内の氷晶生成の状況,細胞と保護物質の相互関係などをしらべるためには,その実験方法の一つとして,形態的な観察も行なわれる。ところが凍結状態を観察するのには,特殊な低温顕微鏡を必要とするし,厚い試料ならそのまま見ることはできないので,むしろ乾燥試料にしたぅえで観察するほぅが便宜なことが多い。以上のように,いろいろの目的から,凍結乾燥試料の形態的観察といぅことが必要になってくる。それぞれの目的に応じた観察法について,これまで私自身が経験を重ねてきた方法や結果を,ここにまとめて紹介したい。先ず観察に当って,その拡大率の大小により,光学顕微鏡のレベルと電子顕微鏡のレベルの2つに大別される。また,いずれにしろ,これらの顕微鏡で見るためには,試料はある厚さ以下でなければならぬ。それには,凍結乾燥試料を適当な厚さの切片にするか,始めから薄層の試料にして凍結乾燥するかである。更に,第三の方法は,凍結乾燥試料をそのまま観察できる走査型電子顕微鏡を用いる法である。
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