Anthropological Science (Japanese Series)
Online ISSN : 1348-8813
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ISSN-L : 1344-3992
121 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • III.隣接集団との親疎関係
    百々 幸雄, 川久保 善智, 澤田 純明, 石田  肇
    2013 年121 巻1 号 p. 1-17
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/21
    [早期公開] 公開日: 2013/02/14
    ジャーナル フリー
    頭蓋形態小変異9項目を指標にして,北海道集団(縄文/続縄文人・アイヌ・オホーツク人)とサハリンアイヌ・アムール川下流域集団・バイカル新石器時代人といった北東アジア集団との親疎関係を求め,それにもとづいてアイヌの成立史を論じた。頭蓋形態小変異にもとづいた各集団の親疎関係の当否は,18項目の頭蓋計測値による分析からも確かめてみた。頭蓋形態小変異による分析でも,その結果を確認するために行った頭蓋計測値による分析でも,比較6集団のなかで,北海道縄文・続縄文人に最も近い距離にあるのは北海道アイヌで,北海道縄文・続縄文人が近世北海道アイヌの母体になった集団であるという従来の言説を追認した。頭蓋形態小変異にもとづく距離分析では,比較6集団のなかで,北海道アイヌに最も近いのはオホーツク人で,頭蓋計測値による判別分析でも,オホーツク人の約3割が北海道アイヌに判別された。これらの所見から,北海道アイヌの祖先集団とオホーツク人は,これまで想定されていた以上に,活発な文化的・遺伝的交流を行っていたのではないか,という問題提起をした。オホーツク人の頭蓋形態小変異のほとんどは,その出現頻度が,北海道縄文・続縄文人とバイカル新石器時代人のほぼ中間に位置するので,オホーツク人の原郷をサハリン北部やアムール川下流域集団に求めるにしても,その成立にあたっては,北海道続縄文人も何ほどかの遺伝的な貢献をしていた可能性を指摘した。頭蓋形態小変異を用いた分析では,サハリンアイヌとオホーツク人との距離はきわめて近く,さらに,北海道アイヌとの比較では,サハリンアイヌはアムール・ニブフ集団により近くなった。ほぼ同様の結果が頭蓋計測値の分析からも得られた。これらのことから,北海道からサハリンに渡った終末期の擦文人,あるいは最初期の北海道アイヌが,サハリンに生きながらえていたオホーツク人を同化・吸収し,13世紀にはサハリンアイヌの祖先集団となり,その後,ニブフをはじめ,アムール川下流域集団との混血を繰り返し,近世サハリンアイヌが形成されたと推測した。
  • 水嶋 崇一郎, 平田 和明
    2013 年121 巻1 号 p. 19-29
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/21
    [早期公開] 公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,性別判定における大腿骨骨幹部の有用性について論じるため,大腿骨骨幹中央部断面形状の性的二型性について調査した。資料は愛知県保美貝塚遺跡出土の縄文人31体(男性14体,女性17体,約3000~2300 BP),明治・大正期の関東地方人42体(男女各21体,年齢範囲20~50歳)の個体骨格を用いた。内部断面計測ではマイクロCT装置を導入した。画像処理にはImageJとCT-Rugleを使用した。解析に際しては断面特性値ごとにWilksのλと男女的中率を算出した。その結果,2集団に共通して,大腿骨骨幹中央部では骨質断面積が最良の性判別指標であることがわかった(縄文人:λ = 0.230,的中率96.8%,現代日本人:λ = 0.469,的中率85.7%)。また縄文人では骨体中央矢状径,外周,外形断面積,最大断面2次モーメント,断面2次極モーメントにおいても90%超の高い確度で男女が正判定された(λ:0.311~0.362,的中率:93.5~96.8%)。一方,現代日本人では骨質断面積以外の項目を個別に適用しても信頼性の高い判別はなされなかった(λ:0.514~0.876,的中率:61.9~81.0%)。本研究では,性別不明のヒト骨格において,大腿骨骨幹中央部の骨質断面積が非常に有力な判別指標となることが示唆された。
資料研究報告
  • 長岡 朋人, 安部 みき子, 蔦谷 匠, 川久保 善智, 坂上 和弘, 森田 航, 米田 穣, 宅間 仁美, 八尋 亮介, 平田 和明, 稲 ...
    2013 年121 巻1 号 p. 31-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/21
    [早期公開] 公開日: 2013/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究では,兵庫県明石市雲晴寺墓地から出土した明石藩家老親族の人骨1体(ST61)について,形態学,古病理学,同位体食性分析の視点から研究を行った。板碑から人骨は明石藩の家老親族であり,1732年に77歳で亡くなった女性である。本研究の結果,(1)骨から推定された性別は女性で,死亡年齢は50歳以上で,墓誌の記録を裏付けるものであった。(2)頭蓋形態を調べたところ,脳頭蓋最大長が大きく,バジオン・ブレグマ高が小さく,頭蓋長幅示数は75.3で長頭に近い中頭,また上顔部が細長いものの顔面全体が大きく,いずれの特徴も徳川将軍親族,江戸庶民,近代人とは異なっていた。(3)炭素・窒素安定同位体分析の結果,ST61の主要なタンパク質摂取源は,淡水魚,または,陸上食物と海産物の組み合わせと推定された。当時の上流階級の人骨のデータの積み重ねは今後の江戸時代人骨の研究に不可欠であるため,今回一例ではあるが基礎データの報告を行った。
シンポジウム報告
Anthropological Science(英文誌)掲載論文・報告紹介
日本人類学会「若手会員大会発表賞」受賞対象発表要旨
書評
  • 『氷河期の極北に挑むホモ・サピエンス―マンモスハンターたちの暮らしと技―』G・フロパーチェフ,E・ギリヤ著 木村英明著訳・木村アヤ子訳,雄山閣,東京,2013年
    瀧川 渉
    2013 年121 巻1 号 p. 69
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
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