ヒキガエル幼生を艀化直後から10-14日間30±1℃の水槽中で飼育した後20±1℃の水温で飼育し,61個体の変態のほほ終りに達した幼生を得た.これらの幼生の足122にはいずれも外形的に異常が認められたが,それらを短趾だけみとめられるもの(11足),短趾のほかに第1趾の欠除(時には合趾,第2または第5趾の外転や第5蹠骨中央部の突出などの異常をともなう)の認められるもの(101足),および上記の異常のほかに第2趾,ときには第3趾においても欠除や発育不良などがあるもの(9足)に区分し,それらをそれぞれ,"mild ectrodactylism","moderate ectrodactylism"および"severe ectrodactylism"とよぶこととした.なお1足は著しく異常で1本趾であったが,これはなにか特異な原因によってできたもので,例外的な異常とみなすのが適当であろう.これらの異常足をもつ後肢の骨格をしらべた結果,つぎのことが明らかになった.すなわち大腿骨にはとくに異常はみとめられず,脛腓骨においても少数の例外を除きとくに著しい異常はなかった.また両生類においてとくに大形である〓骨の距骨と踉骨においても,上記の1本趾の足以外においては,とくに著しい異常はなかった.もっとも多くみられる異常は小形の〓骨(中央〓骨,第1および第2+3小〓骨)における欠除,癒合などと,趾骨不足(hypophalangism)とであった.第2趾の多くは正常数(2)の趾骨をもっていたが,他の趾においては通常1個または2個の趾骨が不足していた.したがってこのような趾骨不足が短趾の原因をなしていることが明らかにされた.つぎに多い異常は蹠骨の異常であった.番外趾の蹠骨と中央〓骨との癒合,第1蹠骨の欠除や発育不良,蹠骨基部の癒合, 蹠骨中央部の屈曲などがその主なものであった.これらの蹠骨の異常が外形的にみられる種々の足異常の原因をなしていることが明らかにされたが,とくに第3,第4蹠骨基部の癒合が,第2趾の外転,第2,第3趾の軟部癒合(soft tissue fusion),まれに第3,第4趾の部分的な骨癒合(osseous fusion)の原因をなしていることが明らかにせられた.一般に後肢骨格の形成は基部から先端部に進むが,中央〓骨,第1および第2+3小〓骨だとの小形の〓骨は趾骨と同様に最後に形成される.また趾骨格の形成は第4,第3,第5,第2,第1趾および最後に番外趾の順になされるとみなされる.したがって上記の観察結果は,比較的後期に形成される骨ほど欠損的な異常をおこしやすいことを示すように思われる.筆者はすでに前報(1969)において,しばしば生ずる第1趾欠除の原因はTschumi(1954)の説によって理解することができることをのべた.Tschumiによると早期に形成される骨が形成材料(mesenchyme)を使用するために,材料が不足している場合には,後期に形成される骨は材料の不足をきたし,欠損しやすいのであろうという.本研究における観察結果もこのようなTschumiの説を支持するように思われる.第1趾の欠除が見られる場合に番外趾の欠除がみられないのは一見Tschumiの説に矛盾するように思われるが,これはつぎのような点から理解することができる.すなわち番外趾の骨格(蹠骨と2個の趾骨)においても種々の欠損的な異常がおこるが,しばしば中央〓骨が番外趾の蹠骨に癒合したり,またまれには根跡的な第1蹠骨が番外趾の骨格に加わったりするので,番外趾の骨格は消失しない.また番外趾は,その皮膚が著しく厚くなっているために,骨格が小さくても外見的にはほぼ正常の形態をとることができる.
抄録全体を表示