1971年1月1日より1973年12月31日までの3年間に,愛知県心身障害者コロニー中央病院より退院した1,948名の患児のうち,死亡退院した125名について,その臨床診断と死亡原因を調査した.診断と死亡原因は国際疾病分類に拠った.臨床診断は,中央病院総合診断システムで実施した.剖検は発達障害研究所形態学部門でおこない,剖検率は78%である.各死亡例について,担当臨床医と剖検病理学者とが検討した.臨床記録と解剖所見の整理分類は,中央病院記録調査室でおこなった.臨床診断と死亡原因は,臨床・病理カンファレンスにより,各死亡例についてそれぞれ主要なものを一つだけ決定した.このような手続きに従って,死亡率を臨床診断,性,死亡原因,入院時年令,ライフスパンにより検索したところ,つぎの結果を得た.1)比較的死亡率の高い大分類は,神経疾患,消化器疾患,先天異常,および周生期疾患であった.2)全退院患者の大分類別性比は,精神疾患,神経疾患,筋骨格疾患,周生期疾患においては性差を認めなかったが,消化器疾患と先天異常では有意に男子が多かった.3)死亡率の大分類毎の性比は,神経,消化器,先天異常,周生期の各疾患群において,それぞれ有意差をみなかった.4)各大分類において,比較的死亡率の高い疾病とその主要死亡原因は神経疾患;脳性まひ,点頭てんかん,水頭症で,主な死因は肺炎,食物誤飲による窒息,心不全,呼吸まひである.消化器疾患;消化管穿孔で,主な死因は腹膜炎,敗血症である.先天異常;複合奇形で,主な死因は敗血症,肺炎,心不全,頭蓋内出血である.周生期死亡例;低出生体重児で,主な死因は特発性呼吸障害症候群,頭蓋内出血である.5)消化器疾患と周生期疾患の死亡例の大部分は生後9日以内に死亡している.全死亡例の過半数は生後19日以内に死亡した.6)生後間もない時期ほど新生児期死亡率は大であった.7)新生児死亡例の死亡原因の大部分は感染症,肺機能障害(特発性呼吸障害症候群など),中枢神経系障害である.
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