銚子市海鹿島に掘られた深度60mの天然ガス試堀井から得られた白堊紀層の帯青暗灰色泥岩のコアー試料について化学分析を行つた。そして分析結果について地球化学的考察を試みたところ,次のことが判明した。
1) この泥岩は海成であることが,Ga-Rb-Bの絶対存在量, Bの絶対存在量(100ppm),間隙水Cl (6g/lに達する)量,黄鉄鉱の存在などから推定される。
2) チタン鉱物が割合に多く存在するので,この泥岩は陸からあまり遠くない海に堆積したように思われる。
3) このことはまた有機炭素(org.C)量の多いこと, org.Cとorg.C/org.Nおよびorg.Cと石油化度の関係からも推定できる。
4) org.Cは1~2.4%あつて海成の水成岩では多いほうに属し,黒川油田の船川層泥岩にほぼ匹敵する。
5) 石油化度は0.009~0.04(平均0.021)であり,これは南関東の中新統よりもほゞ一桁大きく,新潟県の下部寺泊層ないし七谷層の値とほゞ同じである。
6) org.Cが増えると一般にorg.C/org.Nは大きくなり,石油化度は一般に小さくなる。
7) 深度5m以深に油徴,ガス徴が認められるが,泥岩の性質から考えて,油とガスはこれら白堊紀の泥岩から由来したと考える。
8) 天然ガスは55~60m間で殊に多く噴出し,初日産は800m
3に近かつた。そのガス組成は(Vol.%), He‥0.020, H
2‥0.O00, O
2‥0.05, N
2‥13.43, CH
4‥85.46, CO
2‥0.88, C
2H
6‥0.23, C
3H
8‥0.04であり,プロパンの存在することが注目される。
9) 深度30m付近の破砕部には,天水の浸入があつたことが推定される。
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