本研究は古生界の薄い砂岩貯留岩を対象とした地震探査データのインバージョンにおいて, 重要と考えられる前処理と, インバージョンそのものの分解についての検討結果である。当該地域での貯留層の岩相は, 約5km離れた2本の坑井の間で変化していることが確認されている。この2坑井の直上を通る約10kmの地震探査データに対し, 原記録からインバージョンまでの処理を行うことで, インピーダンスの変化を推定する。インバージョン処理•解釈結果の妥当性は, 坑井データと比較することで検証される。結論として, 以下のことが言える。
(1) フォワード•モデリング型のインバージョンによる薄層の分離のための分解能限界は, 今回の坑井の事例では最大有効周波数から計算される波長の1/5程度である。
(2) 薄層が何枚か存在する場合, インバージョンによって必ずしもすべてが分離されない場合でも, 平均化されたインピーダンスとして観測され, その側方への変化を知ることが可能である。このことは, 薄層が多数存在する地域での経済性評価の際に有意義な示唆を与えると考えられる。
(3) 極めて一般的な処理手順であっても, 分解能の点ではある程度満足できるインバージョン結果が得られる。しかしより高い分解能を得るためには重合後の波形について注意深い処理が必要と考えられる。
(4) 陸上地震探査データの場合, 統計的振幅補正を含めた波形処理がある程度必要と考えられる。ただしこれらの波形を変化させる処理については試行錯誤が必要であり, 結果を坑井の物理検層と比較して最良と思われるものを採用する, などの手順が必要と考えられる。
ここに示した事例は, 石油探鉱の比較的初期の段階,すなわち1坑井を掘削した時点で用いることができる手法である。層厚が大きければ, 従来から用いられてきたリカーシブ型のインバージョンでも十分であろう。薄層については, 今回使用したようなフォワード•モデリング型のものが最も適していると考えられる。
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