心身健康科学
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9 巻, 1 号
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巻頭言
特別講演
第15回日本心身健康科学会学術集会 シンポジウム
原著論文
  • 木村 滋子, 藤田 紘一郎, 小林 修平
    2013 年 9 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/18
    ジャーナル フリー
    精神保健福祉・医療の現場では,調理して会食する一連の行動である「料理」はすでに施設の活動のひとつとして定期的な料理教室や調理実習の形で,あるいは,年間行事のひとつとして実施されているケースが多い.しかし,料理はその日常性や必然性ゆえに対象者に対して,「療法」としての目的ではなく自立のための「作業訓練」,あるいは作ったものを食べる会食を主な目的としている.したがって,対象者は料理を他者との「コミュニケーション」の場としていたり,「レクリエーション」の一環と捉えている.
    そこで,これまで作業訓練や参加者同士のコミュニケーション,または,レクリエーションとして実施されてきた「料理」を「療法」として捉え,効果的なプログラムとして実践するならば,「料理療法は成立する」との仮説をたてて,精神保健福祉・医療の現場における,「料理療法」実践のための課題と展望について検証を試みた.
    本研究では,全国の精神保健センターにおいて自立支援を目的として活動している現場の担当者へアンケートを実施した.その結果,参加者及び担当者の「料理療法」への期待は高く,「料理」の「療法」としての効果検証データを積み重ねていくことと,そのためには,「料理」を「療法」のひとつとして実施するための施設やスタッフなどの協力体制を築き上げていくことが,今後の課題であると考察された.
  • 山田 晴美, 久住 眞理, 吉田 浩子, 大東 俊一, 青木 清
    2013 年 9 巻 1 号 p. 26-36
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/18
    ジャーナル フリー
    【目的】東日本大震災の災害支援活動を行った保健師の心身の状態について,心身健康科学の視点から解析し,派遣時のサポートについて考察することを目的とした.
    【方法】X県から被災地に派遣された保健師32人を対象に,心身の健康状況,派遣中及び派遣後の職業性ストレス,メンタルへルス対策の状況について調査を行った.
    【結果】質問紙回答者 (n= 26) の約6割が派遣中に睡眠の問題や緊張感を,約7割が派遣終了後に心身の不調を感じたと回答した.派遣された保健師にとって,ストレスの要因は「被災の話を聴く」「被災者のストレスを受け止める」ことであった.派遣時期や労働環境もストレス反応に影響を及ぼしていた.
    【結論】支援者である保健師は,災害支援活動中の二次受傷が自らの健康に影響を及ぼす可能性があることを自覚し,セルフケアを行うことが大切であった.通常業務時以上に,仲間・上司等との語りやサポート体制が必要とされることがわかった.
  • —「スピリチュアリティの覚醒」の概念分析—
    中谷 啓子, 島田 凉子, 大東 俊一
    2013 年 9 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本におけるスピリチュアリティの概念を明らかにするための先行的研究である.スピリチュアリティが人間の内面に本来備わる目に見えないものという前提に立ち,「スピリチュアリティの覚醒」,すなわち,スピリチュアリティが顕在化する契機に着目し,その概念を明らかにすることを目的とする.
    研究デザインは,文献研究である.国内の学術論文を網羅するため3種類の検索データベースを用いた.キーワードを「スピリチュアリティ」「スピリチュアル」「覚醒」「危機」「クライシス」「概念」「グリーフ」「悲嘆」「日本人」に設定し文献を抽出し,その記述内容を分析フォームに整理しデータ化した.このうち,「スピリチュアリティの覚醒」の概念が抽出されたデータを,Walker & Avantの概念分析の手法を用い分析した.その結果,「スピリチュアリティの覚醒」の先行要件12種類,属性5種類,帰結9種類が明らかになった.また,考察の結果,スピリチュアリティの覚醒は,快・不快といった様々な出来事を契機に発生し,その結果として,自己の意識を拡張したり心身の回復,さらには大いなるものへの感謝と慈しみといった自己の成長をもたらすことが示唆された.さらに,このような機会は,生涯を通して,誰にでも起こり得ること,内的自己と超越的存在との関係といった2つの方向性のある探求であることを示唆した.さらに,人間は,「スピリチュアリティの覚醒」によって,生涯にわたり成長や変化の機会を得ることができ,こころとからだの相関の中でQOLを高めていくことが可能であることが示唆された.
  • 飯島 美樹, 大東 俊一, 青木 清
    2013 年 9 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/18
    ジャーナル フリー
    【研究目的】生体腎移植ドナーに対する提供前後の身体的および心理的状態を調査し,ドナーのQOLについて心身健康科学の視点から検討することである.
    【研究方法】A大学病院において生体腎移植のために腎臓を提供した270例を対象に,術前,術後2日目,および最終外来受診時の腎機能,そして提供前後の心理的反応についての情報を解析した.
    【結果】研究対象者は2009年7月~2011年3月に腎臓を提供した男性100名と女性170名の計270名であった.推算糸球体濾過量の追跡が可能であった男性63名の提供前の平均は78.61 ± 11.33ml/min/1.73m2であり,術後1日目は43.81 ± 6.50,術後2日目が最も低く43.21 ± 7.36,術後1年目は49.51 ± 9.11であった.同様に,女性97名の推算糸球体濾過量の平均は提供前が75.98 ± 11.40ml/min/1.73m2であり,術後1日目は47.24 ± 6.46,術後2日目が最も低く45.45 ± 7.42,術後1年目は49.98 ± 8.57であった.
    男女総数270名のドナーのうち心理的問題がみられた者は4名であった.そのうち,提供前は3名で,内容はパニック,落ち着きがない,いろいろ質問をする等であった.退院後は3名で,その内容は食欲低下から心療内科を受診した,パニック,落着けない等であった.3名のうち2名は提供前にも心理的問題がみられた.
    【考察】提供後の推算糸球体濾過量の低値,そして術前後に心理的反応がみられるドナーは,数年にわたる外来受診の徹底と,生体腎移植ドナーの抱える心情をよく聞く,体制を整備することなど,心身健康面からのフォローアップが必要である.
 
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