医療マネジメント学会雑誌
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1 巻, 2 号
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  • 武藤 正樹
    2000 年1 巻2 号 p. 88-96
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    日本におけるクリテイカルパスの現状と課題について検討した. 現在日本では導入されているクリテイカルパスは外科, 整形外科, 循環器科, 産婦人科, 泌尿器科の手術や検査などの処置が大半を占めている. 今後, クリテイカルパスは診療ガイドラインと組み合わせて使用することや, 科学的な根拠に基づいて作成することが必要である. また, 成果医療の視点からもクリテイカルパスを検討した. 成果医療とは臨床結果, 財務結果, 在院日数, 患者満足などの成果 (アウトカム) に基づいて医療のマネジメントを行うことである. クリテイカルパスをこの成果医療の概念の下で再検討することの重要性について述べた.
  • 吉田 晃治
    2000 年1 巻2 号 p. 97-103
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    国際的な基準で10,000以上ある疾患の診断名を医療資源の必要度から500程度の診断名グループに整理し, 診断群分類毎に決められた一定金額を支払う診断群別包括支払い方法 (DRG/PPS) が1998年11月1日より試行されている. 今回の試行はICD-9に沿って13群183疾患 (合併症, 併存疾患を含む) が対象である.米国ではDRG/PPS導入により医療水準の均一化, 質の向上が証明されている.わが国では長い間出来高制が定着してきている. そこで医療従事者全員がDRG/PPSに対する意識改革, 啓蒙により正しい認識, 実施が行われなければならない. さらにDRG/PPS導入に際し, クリティカルパスの併用, 実施は多くの面で必要不可欠であることを具体的に報告した. 今回, 試行中のDRG/PPSは未だ不備な点も多く, 今後わが国の医療制度に合った日本版DRG/PPS制度確立のためにDRG該当疾患名の増加と内容の改善, 充実等に務めなければならない.
  • テイドウェル サンドラリー
    2000 年1 巻2 号 p. 104-120
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
  • 使用こそが導入の第一歩
    宮内 めぐみ, 築地原 政子, 森山 敬子, 岡野 みどり, 濱 千恵子, 牛島 高介
    2000 年1 巻2 号 p. 121-125
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    久留米大学医療センターは病床数300床の一般総合病院である. 当病棟は, 平成10年4月の院内の病棟再編成により, 小児科を含む外科内科の混合病棟となり, 入院患者の疾患は多様となった. 看護スタッフ個人においては, 疾患に対する経験が少ないこともあり, 患者へ治療や経過についての説明が十分にできなかったり, 経過に沿った処置や看護が徹底しない場面が見られた.また各科の医師への指示の確認などの連絡が多く, 業務が煩雑化していた.これらの問題を解決できる方法として, CPを導入した. CPの作成は, 一般的には過去の症例を集計し, 分析することから始まるとも言われるが, まずは導入してみた.しかし, 結果的にCPの理解を深め, スタッフ問に浸透し, 良い結果を生んだ.
    導入から2年が経過してCPも増え, 使用数の多いCPにおいては評価と検討を行った.現在は, 熱型表を取り入れたCPを作成し, 使用している. 今後, より質の高い医療提供'患者満足度の向上のため, 医療職全体での取り組みが必要である.
  • 教育指導の充実を目指して
    佐保 咲恵子, 小野 富子, 柏木 純子, 芦刈 ひとみ, 多田 富子
    2000 年1 巻2 号 p. 126-129
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    当院は, 1999年より業務の効率化, 治療・看護の均質化のためクリティカルパス (以下「CP」と略す.) を導入した.
    当病棟は, 結核患者を有する呼吸器病棟で, 常に10人前後の結核患者の入院がある. CPは, 検査や在宅酸素導入などの短期入院で主に活用されている. 結核患者は, 長期入院となるためCPの導入は不適当と思われた.
    しかし, 教育オリエンテーションツールや組織クオリティーアシュアランスを図るためCPは必要不可欠であると考え取り組んだ. 作成するにあたり感染予防, 抗結核剤の必要性・副作用などの教育・指導を重視した.
    導入の結果, 看護の統一ができ, また, 患者からも「不安だったが説明をきちんと受け, 安心して入院生活を送れた。」, 「入院中の検査, 勉強内容の予定が事前にわかってよかった。」との声も聞かれ, 質の向上が図られた.
    今回の成果を踏まえ, バリアンス発生時の活用見直し, コメディカルとの連携などの課題に取り組んでいきたい.
  • 山本 まち子, 竹内 由紀子, 市川 ひろ子
    2000 年1 巻2 号 p. 130-133
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    目的: 糖尿病教育入院の患者に, 糖尿病クリティカルパスを導入し, パスに沿ってコメディカルが患者に関わることで教育効果を上げるとともに, 看護の標準化をはかり, 病棟経営の影響を明らかにする.
    対象・方法: 国立長野病院東6階病棟に糖尿病教育目的で入院した患者47名 (コントロール群19名. 実験群28名) に実施された検査内容調査.1日平均診療報酬点数, 平均在院日数を検定した.実験群の入院時と退院時に実施した知識テストの結果を検定した.
    結果: 糖尿病教育入院患者にクリティカルパスを導入して,(1) 診療報酬点数の有意差はなかった.(2) 平均在院日数が25.2日から14.6日で, t検定の結果, 有意差があった.(3) 知識テストを実験群の入院時と退院時に行った結果は, 入院時18.9点, 退院時は22.2点でt検定で有意差があった.
    結論: 糖尿病教育入院に13日間のクリティカルパス導入したことは, 1) コメディカルの連携がとれた. 2) 看護の標準化がはかれ患者の知識レベルを向上できた.平均在院日数が短縮でき病棟経営に影響があった.
  • CP導入の鉄則と次世代CPへの提言
    今田 光一, 竹谷 徳雄, 竹田 慎一, 中陣 多津子
    2000 年1 巻2 号 p. 134-139
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    当院では, 過去の報告や調査を元に, 全科全部門同時導入の形で, 約1年半の導入計画を立案・実践した. 「チーム医療」を導入目的とし, プロジェクトチームの組織編成, 啓蒙, 作成を全部門で取り組み, パスの形式も全部門のメリットとなる独自の形式「オールインワンパス」を考案した. パスの内容については全部門による過去カルテの分析, EBM検討, 他科の意見を取り入れた検討結果とした. クリニカルパスの導入は, 導入を予定する病院全体の目的を明確にし, この目的に一貫した組織編成, 啓蒙, 計画, 作成を行うことが鉄則である. 今後, 病病・病診連携, 電子化, 在宅医療といった方向に関しても, この鉄則を厳守することが円滑導入の重要なポイントであると考えている.
  • 池澤 和人, 吉田 正, 島倉 秀也, 丸山 常彦, 野末 睦, 松島 照彦, 小関 迪
    2000 年1 巻2 号 p. 140-144
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    [目的] クリティカル・パス (以下CP) の導入が, 胃・十二指腸出血性潰瘍の患者の治療の質の向上と平均在院日数短縮に貢献するか否かを検討した.
    [方法] 平成9年3月から11年12月までにA1, A2 stageの胃・十二指腸潰瘍による上部消化管出血にて, 当院に入院した58例 (CP導入前27例, 導入後31例) を対象とした.CP導入前後での患者背景に臨床的な差は認めなかった.当院におけるCPの特徴は以下の3点である.(1) 全例で入院当日に上部消化管内視鏡検査を施行, 出血源を確認し止血する.(2) 診時の血圧及びヘモグロビン濃度により重症度を区分して, 中心静脈圧測定の必要性や輸血の適応を明確にする.(3) 1週間の禁食の後内視鏡を再検し, 潰瘍の改善を確認してから食事摂取を開始する.このCP導入前後での在院日数にっいて平均値とその分散を比較した.また, 在院の長期化に関与する原因を解析した.
    [結果] CP導入前の在院日数 (平均±SD) は14.2±6.2日, 導入後11.5±2.8日であり, 平均在院日数及びその分散は有意に短縮した.またCP導入前には, ショックや貧血を合併した重症群は軽症群に比し長期の在院が必要であったが, CP導入後はこの在院日数格差が解消された.
    [考察] CP導入によって在院日数が短縮した主な理由は, (1) 内視鏡再検にて潰瘍の改善を確認してから食事摂取を開始するため, 再出血が減少したこと (CP導入前3例, 導入後1例), (2) ショックや貧血に対する治療法が統一化され, 急性循環不全の早期治癒が得られたこと, などであると考えられた.
  • 看護の質の向上を目ざして
    森田 直美, 利根 真美, 松崎 眞喜子, 朽網 亜希子, 松尾 民子, 納富 昌徳
    2000 年1 巻2 号 p. 145-152
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    全国の病院で在院日数の短縮化, 医療の質の向上および医療コストの削減を目的としたクリティカルパスの作成が増えてきている. 当病棟でも外科疾患に対するクリティカルパスの作成に取り組み1年半余りとなり, 現在13種類の術式に運用している.
    この中で最も多く活用している腹腔鏡下胆嚢摘出術のクリティカルパスの作成にあたり, 手術前日に入院し手術後5日目に退院とし, 治療処置内容を整理統括した.さらに点滴内容, 内服薬の統一の3点を作成の基本とした. 作成段階では処置観察を示すクリティカルパスの縦軸が14項目と細分化され煩雑なものを, 項目を減らすことで使いやすいものとした.また, 作成したクリティカルパスを院内のオーダーリングシステムを利用して, 病棟独自の入力操作も簡単なセット入力を開始した.
    クリティカルパスの作成活用は度重なる問題提示による検討でより良いものとなり, さらにセット入力の活用でより使いやすものとなった.これにより, 間接看護業務の整理ができ, 今まで以上に患者に関わる時間が得られ, 患者満足度の向上につながっている. また作成にあたり, 疾患及び看護についての知識を深めることで経験に関わらず, 患者に統一した充分な看護をを行うことができ, 看護の質の向上につながった.
  • 恩田 光子, 小林 暁峯
    2000 年1 巻2 号 p. 153-158
    発行日: 2000/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    リスク管理の徹底や医療の質向上が求められている中で, 院内における薬の責任者としての薬剤師の役割は拡大し, 昨今では特にクリティカルパス (以下CPとする) 作成への薬剤師の関与は薬剤使用の適正化推進を通しての医療の質向上と効率化のために必須の業務になりつつある. 本研究は病院管理の視点から, 病院経営管理者と薬剤部門責任者の, クリティカルパスとその関連分野を含めた今後の薬剤部門に求められる業務の現状及び問題点などに対する意識を対比させながら, 現薬剤業務の外部ニーズへの対応と今後の課題について考究することを目的として, 2000年2月~3月に, 中四国、近畿, 関東地域に所在する200床以上の国公立及び私立病院11箇所を訪問し, 病院経営幹部 (院長他) と薬剤部門責任者に対して調査票に基づきヒアリング調査を実施した.
    その結果, 経営幹部は薬剤に関するリスク管理, 病棟への進出など対患者サービスの充実, 病院経営を視野に入れた薬剤情報の提供, CP参画, DUR/DUE (Drug Utilization Review: 薬剤使用監査/Drug Utilization Evaluation: 薬剤使用評価) の実践による薬物使用の適正化・効率化, 地域保健への貢献など, 薬剤部門に対して広範な貢献を期待していることが明らかになった.したがって今後の薬剤部門の課題としては, 医薬品関連の情報を的確に提供すること, またDUR/DUEを定着させ疾病別, 患者別に最適な薬物治療を検討するための基礎資料を蓄積すること, そしてその情報に基づき薬剤師がCP作成へ参画することにより, 薬物治療の標準化や適正化へより積極的に関与し, 医療の質向上に貢献することであると考える.
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