医療マネジメント学会雑誌
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5 巻, 2 号
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  • 胃がん切除クリティカルパスを中心に
    若月 俊郎, 谷田 理, 板持 美由紀, 斉木 玲子, 青戸 智恵理
    2004 年 5 巻 2 号 p. 334-338
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    クリティカルパス導入による経済性, 医療の標準化および患者満足度についての効果を, 胃がん切除症例を中心に検討した. 当院では2001年8月から本格的に胃がんをはじめとする14種類のクリティカルパスの運用を開始した. クリティカルパス開始前後2年間における経済性を外科病棟の在院日数, 新入院患者数, 胃幽門側切除症例 (156例: クリティカルパス実施前74例, クリティカルパス実施後82例) の総額医療費, 1日平均医療費から検討した. 医療の標準化を同じ症例群で食事開始, 輸液, 抗菌薬投与期間, 術後入院日数, 胃管, ドレーン抜去日などの各診療行為から検討した. 患者満足度はアンケート調査に拠った. クリティカルパス運用により在院日数は短くなり, 新入院患者数は増加した. 胃幽門側切除症例における総額医療費は減少したが, 1日平均医療費は増加した. 各医師間で医療の標準化が進み, 有意差を持って各種ドレーン抜去が早くなり, 点滴投与, 抗菌薬投与期間が短縮された. 結果として早期離床が進み, 退院も早くなった. 合併症は, クリティカルパス実施後で有意差はないものの減少した. アンケート調査による患者満足度は極めて高く, 患者のみならず家族も積極的に治療に参加するようになった. クリティカルパス導入により周術期の標準化が可能となり, 経済性効果, 患者満足度を高めることができた.
  • 酒井 光昭, 石川 成美, 佐野 悦子, 西村 京子, 鬼塚 正孝, 榊原 謙
    2004 年 5 巻 2 号 p. 339-344
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    【序文】特定機能病院では新しい診療報酬体系として診断群分類 (DPC) 別包括評価が導入された. 当科ではこれを機会に開胸肺切除術症例に対してクリティカルパスを導入したので, 両者同時導入の有用性を検討した. 【方法】平成15年度DPC「傷病名: 肺の悪性腫瘍, 手術: 肺悪性腫瘍手術, 処置等1 (化学療法, 放射線療法, 人工呼吸) なし, 副傷病なし」に該当する症例を対象とし, DPC別包括評価およびクリティカルパス導入前30例をControl群, 導入後19例をDPC+CP群として次の項目を比較した. 【成績】Control群/DPC+CP群で示す. 経過全在院日数29.6/17.1日, 術後在院日数19.7/10.6日, 術後輸液日数5.0/2.8日, 周術期抗菌薬投与回数10.3/3.8回, 術後血液検査回数5.8/3.1回, 胸腔ドレーン留置日数4.2/3.4日, 術後胸部単純X線回数8.9/5.1回, 術後酸素投与時間80.4/74.9時間. 酸素投与時間を除く項目でDPC+CP群が有意に減少した (p<0.01). 安全性は術後合併症発生率0.33/0.44, 再入院率0/0.083, 手術死亡率と在院死亡率0/0で両群間に有意差を認めなかった. 請求ベース1入院当たり診療点数は174,121/170,832点で両群間に有意差なく, 1日当たり点数は4,876/5,318点とDPC+CP群で増加した (p<0.001). 【結語】DPC別包括評価とクリティカルパスの同時導入により従来診療と同じ安全性を保ちながら, 診療の合理化と標準化を達成した. 請求ベース診療点数は出来高評価の水準に保たれた.
  • 森永 美和子, 西田 友子, 井沢 邦英
    2004 年 5 巻 2 号 p. 345-348
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    独立行政法人国立病院機構佐賀病院内の内科, 循環器科, 小児科の混合病棟において, 平成15年4月から小児外科の開設に伴い, 小児鼠径ヘルニア等の患者を受け入れるようになった. 手術決定から退院までの食事から安静度など, 看護が統一されておらず, その都度指示を受けていた. そこで, 外科経験の少ない看護師でも標準的な医療や看護が提供出来ることを目的に, クリティカルパスを作成し, 導入の効果を検討した. 結果, (1) 在院日数が3日以内となった. (2) 1日当たりの診療点数が増加傾向となった. (3) 医師への指示受けが減少する, 治療や看護が把握しやすい等業務改善が出来た. 以上のことから, 小児鼠径ヘルニア患者へのクリティカルパスの導入は有効であった.
    今後の課題として, クリティカルパスの評価を推進していくとともに, 入院期間2日やデイサージャリーについても考えていきたい.
  • 恩田 光子, 小林 暁峯, 黒田 和夫, 全田 浩
    2004 年 5 巻 2 号 p. 349-353
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    病院薬剤師による薬剤管理指導業務が, 薬物治療に対する入院患者の理解度や服薬コンプライアンスなどの患者アウトカムに与える効果を検証することを目的として, 入院患者に対する調査を実施した. おもな調査項目は, 薬の名前, 薬効, 用法, 用量, 注意すべき副作用・症状およびその対応, 薬を飲むことへの不安, 薬の服薬状況であった. 指導にあたった薬剤師が, 入院初回面談時と退院指導時に「患者の服薬コンプライアンス・理解度チェックシート」を使用して各調査項目をヒアリングし, 設定基準に基づいて評価した. 入院時と退院時における評価結果を比較し, 有意差の有無をWilcoxonの符号付順位検定にて検証を行った. その結果, すべての調査項目において有意な改善が認められた. したがって, 薬剤管理指導業務の実施は, 患者の薬物治療への理解度を高め, 薬を服用することへの不安を軽減し, 服薬コンプライアンスを高めることが実証された.
  • 津村 宏, 清水 健太郎, 片寄 正樹, 高尾 良英, 大西 祥平
    2004 年 5 巻 2 号 p. 354-357
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    スポーツ医学分野では, 必ずしもチームドクターや理学療法士が, 競技大会や強化合宿に帯同できるとは限らない. このため選手やチームの外傷障害, コンディショニングに関する対応などを, 遠隔からチームドクター, 理学療法士が行うことができるコラボレーションシステムが望まれている. われわれは, NTTで研究開発中のコラボレーションシステムNet Office HIKARIを用いてスポーツ医科学サポートシステムを構築し, インターネットを利用して評価検討を行った. その結果, 次の結論を得た. (1) PHS等のモバイル環境では, 画面解像度80×64ドットで2フレーム/秒程度の通信が可能であり, 日常面談を行っている相手であればコンサルテーション可能である. (2) Bフレッツ等の広帯域回線では, 画面解像度320×256ドットで10フレーム/秒程度の通信が可能であり, 初対面の相手でもコンサルテーションが可能である.
  • DPC対応型クリティカルパスの5つの条件
    池田 俊也
    2004 年 5 巻 2 号 p. 358-360
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
  • 藤本 俊一郎
    2004 年 5 巻 2 号 p. 361-365
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    香川労災病院ではオーダリングシステム導入時にクリティカルパスの様式とその記録方法について検討した. その結果, クリティカルパスの様式はオーバービュー方式とし, 全ての部署が参加でき, 情報を共有できるクリティカルパス画面にすることで, チーム医療が推進を図ることとした. さらに1日の全てのクリティカルパス内容をA4用紙, 1枚に印刷することで, 文字通りオールインワンパスの形態を保っこととした. また, 一般的にオーダリングシステムを用いたクリティカルパスはflexibilityに欠けるといわれているが, 個別性への対応を可能とするいくつかの工夫をすることで, より多くの患者に使用できるようにした. 以上の具体的な方策について報告した.
  • 松島 照彦
    2004 年 5 巻 2 号 p. 366-370
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
  • 中村 学, 小宮 弘子, 高橋 紀和子, 臼倉 君江, 相川 雅子, 安木 薫, 安藤 昭彦
    2004 年 5 巻 2 号 p. 371-376
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    さいたま赤十字病院婦人科では2002年より婦人科開腹手術のクリティカルパスを初めて導入し, 現在は6種類の手術用クリティカルパスと3種類の化学療法クリティカルパスを使用している. クリティカルパス導入の際に, 職員用マニュアルを作成し, これによりクリティカルパスの導入が容易となった.
    職員用マニュアルを作成, 保存しておくことは, スタッフの異動や新人看護師の教育, トレーニングにおいて有用である. また, 指示伝達のミスを減少し, 医療ミスの軽減につながると考えている.
  • 朱亀 進司, 福島 亘
    2004 年 5 巻 2 号 p. 377-380
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    平成14年3月より, 当院で初めての化学療法のクリティカルパスである「乳がん化学療法 (CMF) クリティカルパス」の運用を開始した. 当初の乳がん化学療法 (CMF) クリティカルパスは, 治療のスケジュールと使用薬品などを予めクリティカルパスシートに印刷しておき, 患者氏名・抗がん剤投与量などを書き写すものであった. そのため, 読み間違い, 写し間違いなどのエラーによる患者誤認の危険性があった. また, 抗がん剤の投与量は統一されておらず, 投与量に対するチェックも十分ではなかった. これらのことより, 適応基準や投与量の標準化を行い, 運用のプロセスからエラー発生を予測し, 未然に防止できるようにクリティカルパスの改善を行うことになった.改善を行ったクリティカルパスは, 作成過程で投与量を計算し表示することで, 投与量のチェックが容易になった. また印刷を自動化し, 全てのスタッフが情報を共有しやすく, 転記の必要もなくなった. 表計算ソフトを利用することで, 経費をかけずに医療事故の予防に有効であったと思われる.
  • 田中 登美, 宮下 まさみ, 繁浦 洋子, 田中 利夫, 里見 絵理子, 辻仲 利政
    2004 年 5 巻 2 号 p. 381-384
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    【背景】がん化学療法は, 入院から外来へとシフトしつつあり, 当センターでは2002年7月に外来化学療法室が開設した. 今回, 外来化学療法室開設後の動向および問題点を検討した. 【方法と結果】治療ユニットの月別利用総件数は, 開設時は132件, 2003年4月は227件, 12月は270件 (開設より延べ3,726件, 月別新規患者数: 9~26名) であった. 平均1日利用件数は, 開設時9.4件, 2003年12月は22.5件 (最大1日利用件数37件) であった. 診療科別利用件数は, 外科が3,042件, 次いで婦人科, 消化器科, 血液内科, 呼吸器内科であった. また投与経路別利用件数は, 持続点滴が3,298件, 次いで動注・IVHポート, 静脈注射であった. 血管外漏出を1件認め, 速やかに対応し保存的に加療の上軽快した. 多剤併用療法のGrade 3以上の有害事象に関しては緊急入院対応がとれた. 患者アンケートの結果, 治療環境に対しては十分満足しているという回答を得た. 現在, 外来治療前の入院情報が還元されていないこと, 応援看護師への教育が不十分なことが, 運用上の問題点としてあげられる. 外来化学療法室の開設により, 化学療法の安全性と快適性が保証された. しかし, 相互情報伝達および教育体制の強化が望まれる.
  • 辻 泰弘, 田中 英子
    2004 年 5 巻 2 号 p. 385-388
    発行日: 2004/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    近年, 調剤に係わる医療事故が相次ぎ, 薬剤師による処方監査の重要性が再認識されている. 今回, リスクマネージメントの観点から処方せん疑義照会内容を集計し, 検討を行った. 平成14年に医療の質の向上を目的として, 電子カルテ及びオーダリングシステムを核とした診療・調剤支援システムを導入した後, 平成15年1月から12月までの本院処方せん159,354枚 (外来: 125,723枚入院: 33,631枚) において, 疑義照会を行った1,010件 (外来: 679件入院: 331件) を「薬学的疑義照会」と「処方形式的疑義照会」に分類し比較検討した. 総処方せん枚数に対する疑義照会率は0.63% (外来0.54%, 入院0.98%) であり, 入院の疑義照会率は外来の疑義照会率と比較して有意差 (p<0.05) がみられた. 外来・入院双方とも疑義照会発生比率は, 「処方形式的疑義照会」が「薬学的疑義照会」を上回る結果となった. なお, 疑義照会後の処方変更率は外来90.3%, 入院92.1%, 全体で91.6%と高い処方変更率となり, 薬剤師の疑義照会が合理性を持って受け入れられ, 適正な内容であったことを示しており, 副作用防止・相互作用回避など, 医薬品に関わるリスクマネージメントへ貢献していることが示唆された.
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