医療マネジメント学会雑誌
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3 巻, 2 号
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  • 武藤 正樹
    2002 年3 巻2 号 p. 249-253
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    先進各国で医療安全が病院マネジメントにおける喫緊の課題となっている。各国における医療事故発生頻度のカルテ調査によると、その発生頻度は入院患者1人あたり平均0.432%であるという。また、医療安全に対する取り組みも各国で共通していてインシデント報告システムを病院、国レベルで構築しているところが多い。日本においても、厚生労働省が2001年より国レベルでインシデント報告システムを構築して、すでに全国より1万件以上を収集している。また、本稿では、アクシデント報告、インシデント報告の分析方法の一つである根本原因分析 (RCA) についても解説した。
  • 辻 里美, 徳永 誠, 河野 浩之, 石崎 雅俊, 米村 公伸, 脇山 かおり, 梅林 美樹, 田中 富美子
    2002 年3 巻2 号 p. 254-257
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    過去2年間に入院した意識消失発作34症例の臨床像を検討し、意識消失発作入院のクリティカルパス (CP) を作成した。平均年齢は74.4±14.7歳、基礎疾患を有する割合は82%、入院中行った検査は頭部CT (100%) 、頚部血管超音波検査 (88%) 、心臓超音波検査 (88%) 、Holter心電図 (68%) 、脳波 (62%)、頭部MRI+MRA (35%) であった。退院時診断は血管迷走神経性失神35%、器質的疾患44%、原因不明21%であり、平均在院日数は9.1±7.0日であった。これらの結果より、意識消失発作では精査を行い器質的疾患の有無を明らかにする必要があると考え、CPの達成目標、検査、観察記録、入院期間を設定した。
  • 佐々木 由美子, 浅沼 義博, 佐々木 弥生, 小室 幹子, 近藤 千春, 佐々木 真紀子, 猪股 祥子, 早川 宏一, 桜木 章三
    2002 年3 巻2 号 p. 258-261
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    片眼白内障手術患者に対しクリティカルパスを適用し、入院期間と術後の自己点眼、自己シャンプーなどのセルフケアの改善度を検討した。パス前群27例とパス後群23例を比較すると、術前入院期間は各3.1±1.4日、3.2±1.4日と差はなかった。一方、術後入院日数は各6.9±1.7日、5.4±1.3日であり、全入院日数は各10.0±2.5日、8.6±2.2日であり、ともにパス後群で有意に短縮していた。セルフケアの評価として、術後自己点眼および自己シャンプーまでの日数を検討した。術後自己点眼までの日数は、パス前群2.8±0.9日、パス後群2.1±1.0日であり、パス後群で有意に短縮した。同様に、術後自己シャンプーまでの日数も、パス前群3.6±1.1日、パス後群3.0±0.6日であり、パス後群で有意に短縮した。以上より、クリティカルパスの導入は、片眼白内障手術患者の入院日数の短縮化とセルフケアの改善に有用である。
  • 小堀 祥三, 矢野 美由紀, 野満 郁, 高橋 毅, 東 輝一朗, 宮崎 久義
    2002 年3 巻2 号 p. 262-266
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者に対して使用した2週用血糖コントロールクリティカルパス (CP) の有用性を明らかにするたあに3週用CPと2週用CPの在院日数、予定達成率および退院基準達成率を比較検討した。3週用CPと2週用CPの比較では予定達成率を除いて、患者数、年齢、在院日数および退院基準達成に有意の差はみられなかった。退院基準非達成者を除いて比較検討すると、患者数、年齢にはは有意の差はなく、在院日数は21.3±7.7日対18.2±7.5日とp=0.02で2週用CP群が有意に短縮した。予定達成率は57.6%と42.6%で有意の差はみられなくなった。さらに、予定達成バリアンスの是正を行い連続して使用した2週用CP群を前期と後期の30名と31名に分けて比較すると、年齢は59.3±14.7歳対65.9±10.0歳で後期がp=0.05と有意に高齢にもかかわらず、在院日数では20.4±7.27日対16.0±7.3日とp=0.02で後期が有意に短縮した。しかも予定達成率も26.7%対58.0%とp=0.02で後期が有意に向上した。在院日数バリアンスとしては患者要因53件 (回復の遅延33件、理解力不足19件、合併症の出現1件) 、職員要因20件 (インスリン療法導入遅延) 、病院要因8件であり、退院基準達成バリアンスはすべて患者要因で14件認められた。
  • informed decisionを支援するための情報提供ツール
    荒井 元美, 山口 弥生, 後藤 静生, 大園 真理子, 米沢 敬子, 武田 豊子
    2002 年3 巻2 号 p. 267-271
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病は慢性進行性の疾患である。患者さんが受ける医療サービスについて自己決定 (informed decision) を行えるように、必要な知識や情報の入手を支援するためのクリティカルパス (CP) を開発した。
    外来通院するパーキンソン病患者117名を対象として、疾患に関する知識や情報の入手方法などについてアンケート調査を行い、114名から回答を得た。病気の経過や将来の見通しをもっとよく知りたいと答えた人は60.5%で、他の情報内容に比べて有意に多かった。ヤール病期を時間軸にして、疾患についての全体像を俯瞰的に理解するために必要な知識や情報のキーワードと、詳しい情報が必要になった場合の相談窓口を記載したCPを作成した。
    CPを受け取った117名にアンケート調査を行い、103名から回答を得た。ある事柄についてCPを読んでよくわかるようになったと答えた人の割合は、「病気の症状と合併症」が66.0%、「病気の経過や見通し」が56.3%と高かった。詳しく記載しなかった事柄については30%台と低かったが、その相談窓口がわかるようになったと回答した人は40%を越えた。ある事柄についてもっとよく知りたいと答えた人のうち、CP配布後にわかるようになったと回答した人の割合を患者満足効果の指標とした。
    病気の症状と合併症、病気の経過や見通し、福祉制度・介護サービスについて満足度が高く、短期的な有用性が確認された。
  • 猪股 千代子, 濱田 八重子, 伊藤 尚子, 糟谷 昌志, 加藤 由美, 関田 康慶
    2002 年3 巻2 号 p. 272-283
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    クリティカル・パス (Critical Path: 以下CPという) という利点の多いシステムが多くの医療機関で開発されっっあり, プロセス管理, 成果管理の重要性についても盛んに主張され始めるようになった。しかし, ガイドラインや, CP全般のモニター機能を備えている医療施設は少ない。また, CP成果管理基準がまだ十分に開発されていない現状にある。そこで本研究では医療施設で作られたCPの効用を最大限に発揮させるたあの方法として, CP成果管理基準を設計・開発し, その妥当性を検証した。
  • 病院内総合的患者安全マネジメントシステムの一環として
    相馬 孝博, 藤沢 由和, 長谷川 敏彦
    2002 年3 巻2 号 p. 284-288
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    病院内における総合的患者安全マネジメントの観点から, 入院患者に対する誤薬予防のシステム構築の方法を検討した。各種の有効方策をリストアップした上で, 重要度と導入のしやすさから並べ直し, 投薬の業務過程 (プロセス) との関係を見直した。
    院内誤薬予防システム構築にあたっては, 以下のような手順を推奨したい。 (1) 医療安全委員会を設置し, 報告制度により, システムの脆弱な部分を洗い出す。 (2) できればFMEA手法を使用して, プロセスごとの単位業務を解析する。 (3) 利用できる医療資源の多寡に関わらず, どの病院でも有効方策として,(1) 手書き転記の廃止,(2) 輸液ポンプ使用法,(3) 高リスク薬別途使用法,(4) 使用薬剤の限定,(5) (臨床) 薬剤師の参画, などをまず検討する。
    また, オーダエントリ・システムなどの機械化を進めていく場合, 自動調剤や個人識別システムと効率よく連動させるためには,(製造元による) 薬剤のソースマーキングは必須なので, 早期実施が望まれる。
  • 岡本 泰岳, 鵜飼 潤
    2002 年3 巻2 号 p. 289-292
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    褥瘡発生と重症化を病院全体のリスクマネジメントとして位置付け, 褥瘡管理システムを構築した。システムは以下の6つの骨子 (1) 病院共通の褥瘡リスクアセスメント (一次判定と二次判定の2段階) の導入とそれに基づく褥瘡ケア基準の設定,(2) 褥瘡発生届けと体圧分散マットレスの中央管理体制の実施,(3) 低栄養患者に対する管理栄養士の介入,(4) 褥瘡治療におけるクリティカルパス (以下CP) の導入,(5) 重症化した褥瘡症例のインシデントレポート提出,(6) スタッフへの教育体制 (年6回の創傷ケアセミナー) の整備からなる。システム導入後の成果として,(1) 2段階の科学的なリスクアセスメントにより労力を最小限度にかっ偏りのない適切な予防対策とケアが提供された。 (2) 中央管理体制は院内褥瘡発生状況の正確な把握と体圧分散マットレスの適正配分および使用効率を高あた。 (3) 褥瘡治療CPの導入は治療の標準化と均一で高水準のケアを可能とし, 院日数を大幅に短縮させた。 (4) 院内褥瘡発生件数と重症褥瘡件数がともに減少した。病院として十分な褥瘡対策を講じるにはシステム作りと教育体制の充実が必要である。
  • 加藤 知次, 伊藤 誠一, 河井 和子, 磯谷 聡, 伊藤 和幸, 伊藤 達雄
    2002 年3 巻2 号 p. 293-297
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    医療事故は軽微なものを含め年々増加傾向にある。その防止対策は病院全体として取り組む必要性がある。当院では1998年以降, 薬剤師が全入院患者を対象に, 薬剤管理指導業務を実施している。病棟薬剤師は患者背景を把握した上で, 指示・処方監査を行い, 不適切な指示・処方を未然に防止している。このことは医薬品の施用による事故の予防に大きく貢献している。
    今回, 混合病棟において6ケ月間, 約8,500枚の注射処方, 内服処方を検討した結果, 165件の不適切な指示・処方が認められ, 指示・処方の変更がなされた。165件のうち, 56件は他院および, 当院内服胃薬の重複で, 12件は注射薬と内服薬の重複という比較的軽微な事例であった。しかし, 腎機能低下時の過剰投与例12件, 禁忌投与例9件, アレルギー患者への当該薬剤投与例5件, 注射薬の配合変化処方4件, 手術に影響を及ぼす薬剤の継続投与3件など, 重大な医療事故につながりかねない事例を未然に防ぐことが出来た。
    病棟薬剤師がリスクマネージャーとして積極的に職務を果たすことで患者の安全を守り, より信頼される病院となり得ると確信する。
  • 尾藤 誠司, 町田 文子, 朝日 高子, 鈴木 紘一
    2002 年3 巻2 号 p. 298-303
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    目的: 今回我々は外来患者の病院利用に関する満足度と, 外来における待ち時間や医師の診療時間, 継続性などとの関連について横断的な観察を行い検討した。
    方法: 小児科受診患者以外の全再診外来患者1500名を対象とした。医師の診察時間は, 〈1〉5分以内, 〈2〉5-10分, 〈3〉10-20分, 〈4〉20-30分, 〈5〉30分以上, の5段階評価とした。患者満足の評価として, 3つの下位尺度 (医師への満足: 以下PSMD・看護婦への満足: 以下PSNS・一般的満足度: 以下PSGN), 14項目からなる患者満足度評価尺度 (PS尺度) を作成した。
    結果: 「本日の医師の診察には満足されましたか」という質問に対して, 86%は「非常に満足」もしくは「満足」と答えていた。診察時間別の比較において, PSMD・PSNS・PSGNスコアともに診察時間5-10分, 10-20分の群において有意な高値を認め, 診察時間20分以上の群で低い値を示した。また, 毎回同じ医師が診察していると答えた患者はそうでない患者に比較してPSMD・PSGNスコアともに高い満足度スコアを示した。
    結語: 外来診療サービスを患者満足の面からより質の高いものにするために, 患者一人に対し一定の診療時間をとることができるような診療体勢を持っこと、さらに同一の医師が継続して診療することの重要性が示唆された。
  • 遠隔医療における医療サービス提供
    斎藤 実, 真野 俊樹
    2002 年3 巻2 号 p. 304-309
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    本論文は医療サービスにおけるITの効用と今後の研究の方向性についての考察を試みたものである。ITはサービス事業体である医療機関にとって今後益々必要不可欠なッールであることは間違いのないところであるがそれが現在と将来において具体的にどのように役立ち, どのような効用をもたらすのかを考察した。例えば遠隔医療は単に遠隔地の患者ヘサービス提供するためだけのものではなく, 医療機関にとっては極めて有効に患者カバレージを拡大する基盤ともなりうる。本論文では米国のサービスマーケティングの既存理論を基盤として医療サービスにおける顧客 (患者) 価値について考察した後に, 特に遠隔医療における可能性について若干の考察を試みたものである。
  • 大重 育美
    2002 年3 巻2 号 p. 310-317
    発行日: 2002/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    医療過誤の原因は、 情報伝達の不備、知識・技術の未熟性、 業務行為の中断、時間切迫などと推測される。今回は、その中でも医療サービスの直接提供者である看護部門に焦点を当て、医療過誤防止対策にっいて情報と知識の側面から分析した。診療行為の過程で患者を診た医師・看護師らの非数値的な雰囲気を含むイメージ情報が重要になるケースが多い。その判断が的確でかっ迅速であるほど、この医療情報は価値が高いものといえる。ここでのイメージ情報は、単なる情報でなく、価値をもっ情報ヘシフトされて知識となる。知識は、勘や洞察、思い、ノウハウ、技能などで、言葉や数字で論理的に表現することが困難な暗黙知と言葉や数字で明示できる形式知とに大別できる。
    看護師が臨床から得る臨床知の蓄積にも注目し、看護師個人が体験して感じたこと、ヒヤリ・ハットしたことなどを入力しておき、その情報をカテゴリー別・コンテンツ別に整理して蓄積してデータベース化する。そこで、他の看護師が様々な状況に直面した時に活用できるシステム構築しておく。データベース化という工程は、看護師の高い認識が必要であり、臨床知をグループ知識として取りこみ、組織知識 (組織知) として病院組織に蓄積しようとする姿勢が必要である。したがって、臨床知を根拠に基づけて対処する習慣を看護体制に取り入れることができた病院は更なる進化が可能と予測する。
    そこで、今回、IT時代の医療体制の変革を視野に入れ、医療過誤防止における看護支援策をSWOT分析や知識移転の観点から、看護師もナレッジワーカーであるという認識をもち、知識の価値評価体系を構築するという方向性を見出し、今後の示唆を得たのでここに報告する。
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