(1) コルソン合金のNi
2Si濃度を5.89%, 4.94%, 3.58%及び2.49%の4通りに變じて.950°燒入後500°,450°及び400°に於て時効硬化せしめたる場合のVi-ckers硬度,抗張力,補正抗張力,伸長率及び均質伸長率の變化を測定した,又Ni
2Si5.89%及び4.94%の試料については,時効後の電氣抵抗の測定をも併せ行つた.
(2) 硬度の變化は時効温度の高き程速かに起る.硬化値は時効温度ゐ高すぎない範圍ではNi
2Si濃度の大なる場合程,又時効温度の高い程大となる.但しNi
2Si濃度が大で時効温度が高すぎると却つて最高硬度が小となる.
從て硬度を有効に十分増大せしめる爲の時効最適温度は,Ni
2Si濃度に左右せらるるもので,Ni
2Si5.89%では450°,その他は500°が良く,一般的に見てNi
2Siの濃度大なる程最適温度は低くなる.
(3) 抗張力及び補正抗張力は共に時効温度高き程その變化の速さ大となる.而してNi
2Si濃度大なる程抗張力及び補正抗張力は大となる.硬度の變化と對照すると,抗張力及び補正抗張力は,硬度が既に極大値を超えて軟化して居る時期に於ても依然として増大して居るてとが認められ,500°時効に於ける抗張力及び補正抗張力の極大點の出現が硬度の極大に比し時聞的におくれて現れるものであることが認められる.而してこのズレはNi
2Si濃度の大なる場合程著しく現れる.Ni
2Si濃度2.49%のものでは殆どこのズレが認められない.
(4) 伸長率及び均質伸長率の變化に於ても,時効温度高き程その變化は速く起る.均質伸長率ではNi
2Si濃度大なる程その減少も大であるが,通常伸長率ではこの關係は必ずしも一定しない均質伸長率では500°時効に於てNi
2Si5.89%及び4.94%のものに就てのみ極小點が現れ,3.58%及び2.49%のものでは現れないが,通常伸長率には何れのものについても500°時効に於て極小點が現れる.
又伸長率及び均質伸長率の變化に於ても,抗張力の場合の如く硬度の變化との間に時間的なズレが著しく現れるものである.
(5) 以上によつて明かなる如く,機械的性質の時効に件ふ變化は時間的に,硬度,抗張力,伸びに於て一様でなく,時間的のズレがある,從て硬度のみを測つてもこのズレを考慮に入れないと他の性質を豫測することは出來ない.この關係に就ては次報でくわしく論じてみたい.
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