本報告は異常組織の研究に就いて今迄に報告せる第1報より第3報に至る研究結果を総括的に纒めたるものである.超共析鐵炭素合金及びこれに諸元素の合金したる徐冷組織はそれぞれに特徴ある組織を有するが,これらは何れも次の9種類の代表的型に分類附屬せしめることが出來る.即ち(I)純鐵炭素型 (2) クロム型 (3) 炭素鋼型 (4) 珪素型 (5) Si-Co (I) 型 (6) Si-Co (II)型 (7) アルミニウム型 (8) Ni-Al型 (9) モリブデン型の9種類の型である.各〓の型の特徴について述べれば純鐵炭素型は所謂異常組織である.クロム型は異常組織と正常組織の中間に位置するものとして考へ得る特殊の組織である.炭素鋼型は吾々が超共析組織として見馴れてゐる組織であつて所謂正常組織である.珪素型は金屬Siの合金により生ずる枝状初祈晶のある正常組織である. Si-Co (I) 及び (II) 型は珪素型の特別の場合の組織である.アルミニウム型はAlを合金元素として有するものがCO系滲炭劑により滲炭された場合に生ずる特別の組織である. Ni-Al型はパーライトを生じないセメンタイト+αの微細結晶粒の組織である.モリブデン型は炭化物生成元素が合金されてゐる場合に生ずる組織である.諸元素の異常組織に及ぼす影響の差異からこれ等を4個の群に類別した.即ち第1群元素はSi, Be, As, Al, Zr, 第2群元素はTi, Gr, V, 第3群元素はNi, Mn, Go, Mo, 第4群元素はW, Cu, Sである.第1群に屬する元素は鐵炭素合金の異常組織をこれらの元素が少量合金することにより容易に正常組織化するものである.第2群元素は正常組織化するのに第1群元素よりはより多くの合金量を必要とし,第3群元素は更に多くの合金量を必要とするものである.第4群元素はこれらの元素の合金量に拘らず正常組織化せぬものである.異常組織を支配するものは合金元素量,結晶粒度,冷却速度の三つであるがこの三者の關係を判り易く述べた.又第3元素を合金して微細結晶粒を得る諸元素の組合せに就いても觸れた.
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