結晶粒子の大きさが増加すれば機械的性質を低下する様であるが,或る程度冷間引拔加工を行へばその強さ及び伸びは全く同一となる.その結果結晶粒度の少しの違ひで軟化速度に著しき違ひを生するものとすれば,これを應用すバき實際方面曝いくらもある.それ故加熱温度を變化せしめることによつて素材の結晶粒度を變化した銅線を用ひて本研究を行つた.實驗に用びた試驗片の平均の結晶粒度は45, 65, 90及び120μ,試驗温度は200°, 250°, 300°, 350°及び400°, 又焼鈍時間は軟化が充分完了するまでの範園である.實驗の結果によれば,如何なる褞度に於ても軟化速度結晶粒度の小なる程大であつて,而もその差は相當大である.鋼線の場合と同様に,再結晶の完了點は抗張力の軟化點よりは遲れるが延伸葷曲線の軟化點とはよく一致し,軟化(再結晶)直後の結晶粒子の大きさは燒鈍温度の大なるものゝ方が多少細かい様である.又再結晶の開始及び完了時の附近に延伸率の減少する現象が認められた.これらの現象は鋼線及び銅線に特有なものではなく,一般金屬材料に共通するものと思はれる.
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