Snはその殆ど大部分を東亞共榮圈にて産出するため,今後Snを利用することが益〓多くなるであらう.よつてこゝではSnの機械的性質と耐蝕性に及ぼす各種元素の影響について研究し,次のやうな結論を得た.即ち, (1) Snの抗張力と硬度を最も高める元素はCo, Mn, Ni及びSbであるが, Sbは抗張力を高める割に硬度を高めず, Ni, Coは硬度を高める割に抗張力を高めない.實驗に供した全試料の中で抗張力7kg/mm
2以上を示したものは, Sn-Mn (Mn 8%以上), Sn-Sb (Sb 11%以上)合金等である.而して破斷後の試料を見ると, Sb 0.97%程度入つたSn-Sb合金とAg5.08%のSn-Ag合金等が最もよく伸びてゐる. (2) 6.5kgの荷重を高さ50mmの處から繰返し落下せしめた時の高さ方向の變形量を測定した結果によると, Co, Cr, Mn及びNi等の合金元素が變形量を最も少くする.而してCo, Cr, Niでは各合金元素1%以上, Sn-Mn合金ではMn 3%以上添加しても殆ど變形量に影響せず一定の値を示す. (3) SnにAl, Mg及びCa等を添加した合金は,腐蝕液中に於て粒界腐蝕を起し易く,使用に耐へない.又Sn-Hg合金は硝酸溶液によつて孔蝕を生ずる. (4) 10, 20, 30及び40%硝酸溶液に對して最も耐蝕性の良好な合金は, Sn-Co (Co 10.38%), Sn-Ni (Ni 7.3%), Sn-Sb (Sb 12.28%), Sn-Sb (Sb 7.91%) 合金等である.濃厚な硝酸溶液 (40%)に耐へる合金としては概してSn-Ni合金が優秀で, Ni 11.32%入つた合金の腐蝕減量は純錫のそれの實に1/46以下である.稀薄な10%硝酸溶液に對しては, Cd8.75%のSn-Cd合金が甚だ腐蝕性がよい. (5) 苛性曹達溶液に對する耐蝕性は, Snに第2元素を添加しても達成されない.特に濃厚 (40%)溶度の場合には純Snの耐蝕性は優れてゐる.全試料を通じて苛性曹達溶液に對して最も耐蝕性を高める元素はNiで,腐蝕液に浸漬後のSn-Ni合金の表面は黒色を呈してゐる.就中溶液の濃度20%の場合, Ni 11.32%の合金では,浸漬腐蝕後却つて重量が増加してゐる.これは試料表面に生成された黒色の安定保護被膜に起因してゐるのであらう.
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