この論文の目的は、末期患者に対する人工栄養・水分の補給と中止に関する看護師の語りから、改めて患者中心の看護を考えることにある。著者が患者中心の看護に疑問をもった語りを分析した。その結果、看護師の語りの背景には「死の共同性」「わたしの死」「人となりという自然」が関係していると考えられ、看護師は時代に伴って変化する死の意味を実践経験から知っており、患者中心というよりその経験を生かして援助していた。
患者中心の看護は疾患・治療中心から転換した専門職化に伴う概念であり、現在では看護実践の目標、倫理的行為の基準となっているが、援助の幅を広げるには患者中心の看護にこだわらないアプローチも可能である。
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