日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
8 巻, 1 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
巻頭言
原著論文
  • 井上 尚美, 吉留 厚子, 若松 美貴代, 高田 久美子, 中尾 優子
    2016 年 8 巻 1 号 p. 3-15
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    母性看護学実習に導入した倫理カンファレンスを振り返り、看護学実習における倫理カンファレンスの意義を明らかにすることを目的に研究を行った。研究は、平成26年9月~平成27年2月に行われた母性看護学実習9グループ(82名)の倫理カンファレンス記録をデータとし、質的記述研究を行った。分析は母性看護学の教員3名で行った。本研究は研究者が所属する大学の倫理委員会で承認を得て行われた。結果、倫理カンファレンスの意義として以下の3つが明らかとなった。1. 学生が感じた違和感や倫理的ジレンマを対象の権利と専門的倫理に整理して考える力を養う。2. 状況に応じて倫理を考えられる力を養う。3. 看護領域の倫理的特徴を踏まえた倫理カンファレンスを積み重ねることにより学生の倫理的行動の多様性を育む。

  • 佐藤 真由美, 佐藤 禮子, 足立 智孝
    2016 年 8 巻 1 号 p. 16-24
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究目的は、退院後の患者を対象にセルフマネジメント(以下、SM)向上のための電話相談を実施し、その相談内容から婦人科がん患者の生活を支える看護実践について倫理的課題の視点から考察することである。婦人科がん術後はリンパ浮腫発症のリスクが高く、SMは不可欠であるが、入院中の限られた時間でのSMの習得は難しい。20歳代~70歳代婦人科がん術後女性患者55名に対して半構造的質問紙を用い、術後6ヶ月間、月1回電話相談を行い質的帰納的に分析した。相談内容は一般的術後相談、個人的相談、助言要請に大別された。退院後の患者は生活する上で適切な情報が獲得できていないこと、女性特有疾患の性的問題等が含まれることによる医療者介入の困難性、患者の医療者に対する遠慮により、医療者が患者ニーズを把握できないこと等の倫理的課題が抽出された。これらの倫理的課題を解決する方策の一つとして、外来での患者相談体制の構築が必要である。

短報
  • 毛利 聖子
    2016 年 8 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本稿は「医の歴史と倫理」という看護大学1年次の授業科目の授業実践報告である。授業は、看護観のもとになる医療者としての倫理観を、医の歴史の史実を中心に考えていく。授業後の学生のレポートから、倫理観の育まれ方が深まり医療者としての倫理観の自覚が強く促された講義内容とレポートを選定し、学生の倫理観がどのように育まれていくのかを明らかにした。結果、学生は他者の命や健康を守るために夢中になる医の担い手の姿を、医の歴史をたどりながら現在の問題につなげることによって、心が大きく揺さぶられ、命の重みを感じながら、医療者としての責任と自覚が高まっていることが示された。また学生は時代を超えても変わらない本質的なことを掴んでおり、そのことは、現在の問題を考えていく認識をより確かにし、未来を考えていく力をより高めていくことに意味があると思われた。

  • 深山 つかさ
    2016 年 8 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、急性期医療における後期高齢患者のインフォームド・コンセントへのよりよい看護支援を検討するために、その看護支援の現状を明らかにすることである。A病院急性期病棟に勤務する後期高齢患者のICに関わる看護師11名に半構成的面接を実施し、質的に分析を行った。その結果、【医師には言えない本音を受け止める】【ICに参加し後期高齢患者や家族の反応を観る】【IC後に後期高齢患者の理解度や受け止め方を確認する】など10カテゴリが抽出された。看護師は、後期高齢患者の心情や価値観、認知機能や理解力に配慮した上で、後期高齢患者の思いをきき、医師や家族との間に入り、後期高齢患者の意志が尊重された治療方針の決定に繋がるようにコーディネーターの役割を果たすことが重要である。また、チームでアプローチする姿勢を忘れず、多職種と協働することが必要である。

  • 木下 天翔, 八代 利香
    2016 年 8 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、臨床実習において看護学生がどのような倫理的ジレンマを経験するのかを明らかにすることである。研究方法は、文献調査であり、1990年から2013年までに医学中央雑誌に掲載された論文12件を対象とした。調査対象とした文献から、看護学生のジレンマに関するすべての項目を抽出し内容分析したうえでデータ化しカテゴリー化した。その結果、看護学生のジレンマに関連する要因として150データを抽出した。それらを類似した内容でまとめると、『看護師・医師に関するもの』6カテゴリー、『看護学生に関するもの』5カテゴリー、『患者家族に関するもの』3カテゴリー、『環境に関するもの』2カテゴリーに整理された。その結果、教育と臨床のギャップ、患者と学生の関係性、知識・経験不足、の3点が看護学生の倫理的ジレンマに影響することが考察された。看護学生が臨床実習で体験するジレンマは学内で学んだことと臨床の現実を目の当たりにしギャップを感じたときに経験することが示唆された。

  • 志和 知華, 岡光 京子
    2016 年 8 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    研究目的は進行肺がん患者の退院支援における意思決定に影響する要因を明らかにし、意思決定を支える支援を検討することである。対象者は10名で、半構成的質問紙を用いて面接を行い、質的帰納的に分析を行った。進行肺がん患者の退院支援における意思決定の影響要因は、【生き方に対する考え方】【今までと変わらない生活がしたいという希望】【治療をして長生きしたいという希望】【日常生活を送る困難さ】【家族の十分なサポート】【治療効果】【情報の適切さ】【医療者から治療について方向づけられたこと】の8つであった。以上の結果から、意思決定を支える支援は、その人らしさを支える支援、日常生活を充足させるための支援、家族からのサポートを整える支援、適切な情報を得るための支援、治療を継続する意欲を支える支援が考えられた。

  • 石岡 洋子
    2016 年 8 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    ニュルンベルク綱領(1947年)が指針として示されて以降、看護の世界でも、いかに研究対象の権利を尊重しながら研究を遂行するかが課題となっている。看護研究は、看護学・助産学の発展に必要不可欠であるが、研究に参加するか否かには対象の任意性の保証等倫理的配慮が十分されなくてはならない。本研究は、勤務助産師が質問紙調査を行う際の対象者へのインフォームドコンセント手続きの実態を明らかにすることを目的に、全国の分娩取扱い施設に勤務する助産師317名に、倫理的配慮に関する認識と実践について郵送質問紙調査を実施した。その結果、助産師は研究を行う際の倫理的配慮についての理解が不十分であり、看護研究における倫理の向上にむけた研修会等の取り組みが必要であることが明らかになった。

  • 池田 富三香, 丸岡 直子
    2016 年 8 巻 1 号 p. 62-69
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    研究目的は、看護師が日頃行っている排泄援助はどのような日常倫理に支えられているのかを明らかにすることである。研究対象者はある総合病院に勤務する看護師17名で、参加観察を行ったあとに半構成的面接法でデータを収集し、質的帰納的に分析を行った。日常倫理からみた看護師が行う排泄援助は、【排泄は人間にとって当たり前のこと】【するべきところで、自分で、ゆっくり、すっきりできるようにしたい】【嫌だろうなあ】【気配を消す】【やりとりしながらすすめる】【慣れたらいかんなあ】の6つのカテゴリで構成された。さらに文脈から【やりとりしながらすすめる】パターンと、【嫌だろうなあ】パターンとの二つの排泄援助パターンが見出された。【やりとりしながらすすめる】パターンで看護師が大切にしていた【気配を消す】は、排泄援助を支える重要な日常倫理であることが示唆された。

  • 村井 孝子, 中尾 久子
    2016 年 8 巻 1 号 p. 70-77
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、病院に勤務する看護師長が体験した倫理的問題とその頻度について明らかにすることである。臨床実践および看護管理における倫理的問題に関して自記式質問紙を用い、A県下の全病院に勤務する看護師長1,938名を対象に質問紙調査を行った。524名(回収率27.0%)のうち、506名を分析対象とした(有効回答率26.1%)。看護師長が体験した臨床実践上の倫理的問題は「患者に十分な看護ケアを提供できない看護師の充足状況」「患者の安全確保のために身体抑制や薬剤による鎮静をするか、しないか」が多かった。一方、看護管理上の倫理的問題では「人的資源が不足している」「サービス残業が行われている」が多かった。看護師長は、看護実践の基盤でもある人権や患者ケアに関する倫理的問題のみならず、良質な看護ケアを行うために必要不可欠な看護師の充足問題についても高い頻度で体験していることが明らかとなった。

レター
日本看護倫理学会第8回年次大会
会長講演
教育講演
シンポジウムI
シンポジウムII
シンポジウムIII
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