本研究の目的は、病院に勤務する看護師長が体験した倫理的問題とその頻度について明らかにすることである。臨床実践および看護管理における倫理的問題に関して自記式質問紙を用い、A県下の全病院に勤務する看護師長1,938名を対象に質問紙調査を行った。524名(回収率27.0%)のうち、506名を分析対象とした(有効回答率26.1%)。看護師長が体験した臨床実践上の倫理的問題は「患者に十分な看護ケアを提供できない看護師の充足状況」「患者の安全確保のために身体抑制や薬剤による鎮静をするか、しないか」が多かった。一方、看護管理上の倫理的問題では「人的資源が不足している」「サービス残業が行われている」が多かった。看護師長は、看護実践の基盤でもある人権や患者ケアに関する倫理的問題のみならず、良質な看護ケアを行うために必要不可欠な看護師の充足問題についても高い頻度で体験していることが明らかとなった。
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