日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
7 巻, 1 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
巻頭言
短報
  • 滝沢 美世志, 太田 勝正
    2015 年 7 巻 1 号 p. 4-10
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、Revised Moral Sensitivity Questionnaire (r-MSQ)およびその日本語版である改訂道徳的感受性質問紙日本語版(J-MSQ)を基に、学生版第1版の作成およびその信頼性、妥当性を確認することである。J-MSQに学生にも理解できる説明を加えたJ-MSQ解説追記版第1版、および、臨地実習の経験で理解できる内容に修正したJ-MSQ学生版第1版を用いて看護大学生および看護専門学校生1,022名を対象に質問紙調査を行った。質問紙調査に先立ち、フォーカスグループインタビューによる表面妥当性を確認した。因子分析の結果、J-MSQ学生版第1版 (Cronbach α=0.79)は、3つの因子のうち2つはJ-MSQとほぼ一致したが、「道徳的責任感」は構成因子として的確に抽出できなかった。

  • 宮内 環, 寺井 孝弘, 本庄 美香
    2015 年 7 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、混合病棟で小児に関わる看護師のプレパレーションの認識と実施状況を調査することである。小児科を標榜し、500床以上の総合病院に勤務する看護師500名のうち混合病棟に勤務する69名を分析対象とした。質問紙調査の内容は、看護師の属性、プレパレーションに対する認識(意味・効果・必要性)と実施状況である。分析はχ2検定、Fisherの直接法を行い、有意水準は5%とした。調査の結果、プレパレーションの認識が9割であるのに対し、実施状況は6割弱に過ぎなかった。また、実施するためには時間の確保が必要であり、物品(ツール)の充実や、子どもの成長発達と実施方法に関する知識の有無も影響していた。小児から高齢者までの入院患者を対象とする混合病棟でプレパレーションを実践するためには、子どもの成長発達を配慮した病棟環境の工夫と同時に、子どもの認知発達や実施方法に関する知識や技術を獲得することが必要である。

  • 豐田 智子, 八代 利香
    2015 年 7 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、高齢者の退院という移行ケアに関わる退院調整・支援看護師の意思決定の拠り所を明らかにすることである。対象者は、急性期病院の退院調整部門に配属されている看護師5名である。研究方法としては、フォーカス・グループ・インタビューの後に個人面接(半構造化面接)を実施し、質的内容分析を行った。その結果、看護師の意思決定の拠り所は【患者の思い】【限りある人生】【役割遂行】【代弁者としての責務】【生命の尊重】【苦痛のない安らかな死】【情報と専門知識】【信頼関係】の8つのカテゴリーに概念化された。その概念が示すものは、看護師と患者の間主観的な関わり、移行期にある患者の限りある人生への思い、代弁者としての役割の自覚と実践、患者の生命尊重と安寧を願う思いの葛藤、そして生産的相互関係を表す‘協力’という倫理的なものであった。

  • 古地 順子
    2015 年 7 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    専門職の特徴的要素となる自律性は、看護職においては患者ケア成果に直接的に影響する不可欠要素とされている。本稿では、英文の看護研究を中心に自律性への着目経緯とその概念について報告する。CINAHL・PubMedの1974年から2013年の論文から抽出した34件とこれらの引用文献22件および4書籍を分析対象とした。分析対象中最多件数の米国における看護師の自律性概念は、職業的独立から意思決定、看護師の権限へと移行した後、さらに先鋭化されている。2種類の概念が区別されており、一方は、看護職集団の専門性を指す専門職的自律性であり、看護師が、組織的構造により可能になる実践施策および諸問題についての意思決定への参加プロセス、もう一方は、個々の患者への臨床看護実践を指す臨床的自律性であり、患者中心に行為すること、看護実践領域では独自の判断を行い、医学など他領域と重複して看護実践が行われる領域では相互依存的に意思決定することと定義される。

  • 金山 昭夫
    2015 年 7 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    これまで末期医療に関する代理意志決定については、家族の代理意志決定への支援の視点からの研究はなされてきたが、心理的な影響についての分析・解釈はWendlerらの研究を嚆矢とする。しかしこれも統計的分析に限られており、個別の事例に着目した研究はほとんど行われていない。そこで本研究においては「末期の重度認知症患者への人工的水分・栄養補給(AHN)の導入の可否」という具体的なケースを解釈学的な視点で読み解き、その決定に影響を与える要因を分析・解釈することで、代理意思決定の妥当性を検証する可能性を考察した。その際には家族間の会話だけでなくノンバーバルな交流をも会話分析で記録し、各人の物語(ナラティブ)の心理的・社会的要因を分析・解釈することで、代理意志決定に影響を与える諸要因を考察した。それに基づき当事者家族間における代理意志決定における物語の共有を調停・促進(ファシリテーション)することでよりふさわしい決定をなし得ると考えられる。

  • 田口 めぐみ, 宮坂 道夫
    2015 年 7 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    看護師が看護実践の中でどのような違和感・ジレンマを経験し、その状況にどのように対応しているのか、また、その対応に対する看護チームの反応を明らかにするために看護師10名にインタビューを行い、テーマ分析と構造分析を組み合わせたナラティヴ分析を行った。構造分析から、1)違和感・ジレンマを経験したが対応できなかったというナラティヴ19例、2)違和感・ジレンマに対応したが効果が得られなかったというナラティヴ10例、3)違和感・ジレンマに対応し効果が得られたというナラティヴ2例が見いだされた。効果が得られた2例は、成功体験や良いモデルに出会った経験があるケースだった。テーマ分析の結果、違和感・ジレンマは、X.看護チームの習慣・ルール・看護システムに対するもの、Y.看護経験の多少に基づくもの、Z.看護師–医師の関係に基づくもの、に分類された。倫理的ジレンマへの対応・行動のあり方を組織的に検討し、看護師が倫理的実践能力を発揮しやすいチーム・集団の環境を整えることが不可欠であることが示唆された。

  • 岡本 あゆみ
    2015 年 7 巻 1 号 p. 54-67
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    病院看護職による高齢患者の終末期意思の尊重の実態の認識と、関連要因を検討するため自記式質問紙調査を行い、クロス集計および相関関係分析を行った。高齢患者の終末期意思の尊重の割合は、高齢患者の意思表示のみの場合に7割強、高齢患者の終末期意思とその家族や医師の延命処置の考えが異なる場合には3~5割程度であった。また、「終末期ケアの協働」「終末期の説明サポート」「終末期患者に関する看護」の能力が高い看護職は高齢患者の終末期の延命処置の意思の尊重の認識も高く、「終末期ケアの協働」の能力が低い看護職は高齢患者の終末期の延命処置の差し控え意思の尊重の認識が高い傾向が明らかになった。高齢患者の終末期医療の意思の尊重には、看護職に対する倫理的な教育、患者権利における倫理的な問題を解決する方法を模索する機会、本人の価値観に合わせて終末期医療に伴うケアを判断するための看護能力の必要性が示唆された。

  • 小野 光美
    2015 年 7 巻 1 号 p. 68-76
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、介護老人保健施設の看取りにおける看護管理者の実践内容を明らかにすることである。看取りを行っている39施設に勤務する看護管理者39名に質問紙調査を実施した。回収数は36(92.3%)で、全てを有効回答として分析した。その結果、看護管理者は、入所者と家族の希望や不安を引き出しながら、いつもの日々が安楽で安全に過ごせるよう、細やかな配慮を行っていた。入所者の経過に伴う家族の揺れる気持ちに寄り添っていた。また、施設のスタッフの葛藤や不安に対する支援を行っていた。看護管理者はスタッフに対し、看取りを通して死生観を深めて欲しいと願っていた。そのためには、デスカンファレンスの実施や思いを語れる場をつくることの必要性が示唆された。

  • 山本 真弓, 鷲尾 昌一, 入部 久子
    2015 年 7 巻 1 号 p. 77-85
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、看護基礎教育における基礎看護学実習前後の看護倫理教育の実態を明らかにすることである。2007年5月~7月看護基礎教育機関685施設の教育担当者に45項目の倫理教育実態調査を行った。結果、有効回答は85施設、回答率12%(内訳:看護学校56、短大3、大学26)。基礎看護学実習の開講時期は1・2年次が多く、実習前の倫理教育の報告は72施設(84.7%)に比べ、実習後の倫理教育48施設(56.4%)と少ない結果であり、実習後の臨床経験に基づく教育の機会が不足していた。また看護倫理教育は科目として構築されておらず、構築する必要あり53(62%)、必要ない13 (15%)、どちらでもない16 (19%)、無回答3 (4%)であり、大学の教育担当者と看護専門学校の教育担当者間の科目構築の必要性に関する認識にはp値0.07と有意な差はないが、差の傾向が見られた。回答者の年齢は51±8.6、臨床経験年数13±7.4である。

レター
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