日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
14 巻, 1 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
原著論文
  • 吉田 みつ子
    2022 年 14 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/04/13
    [早期公開] 公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、ナラティヴ学習に基づく専門看護師の倫理調整役割開発プログラムの活用可能性を明らかにすることである。プログラムは5セッションから構成され、4名の参加者のセッションのデータをテーマ分析により分析した。プログラムへの参加は〈自分の実践や考えを安心して語り、聞くことが出来る〉〈先輩も同じような経験をしてきたことに安堵し、悩んでいるのは自分だけではないと勇気づけられる〉と自己肯定感を高めていた。さらに〈先輩CNSの経験を自分に置き換えて考え、とらわれていた自分に気づく〉ことが促され、前提や価値観の批判的な振り返りがなされたと示唆された。このような振り返りは、変容学習において非常に重要な段階であり、〈相手の視点に合わせる柔軟性とぶれない思いをもって、看護の質をあげることが自分に求められている役割とハッとする〉という倫理調整における新たなパースペクティヴをもたらすことが示唆された。

  • 福山 美季, 浅井 篤
    2022 年 14 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/04/13
    [早期公開] 公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    本稿では、看護師がプラシーボの使用に関する倫理的議論の論点を理解するための基礎資料を提供することを目的に、看護職によるプラシーボの使用をめぐる倫理的議論に関する文献検討を行った。文献検討では、英語論文13編と日本語論文5編を対象とした。その結果、患者の自律性の侵害等の倫理的に否定的な理由8つと、プラシーボの効果等の肯定的な理由6つを抽出した。英語論文では、主に倫理的原則の観点から、日本語論文では、プラシーボの効果やケア・徳の倫理の観点から議論が行われていた。日本語論文では、患者の適切な評価・ケアを受ける権利の侵害、患者の尊厳の侵害、医療者による恣意的な使用、ノセボ効果、プラシーボの効果への懐疑、動機は区別しない・できないの6つの理由はほとんどみられなかった。看護師には、プラシーボの使用について、倫理原則やケアの倫理等の様々な観点からの倫理的議論を偏りなく理解する機会が提供される必要がある。

短報
  • 大西 香代子, 有江 文栄, 箕輪 千佳
    2022 年 14 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/04/13
    [早期公開] 公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー

    看護学研究の倫理審査に関しては、多くの課題の存在が指摘されているが、全国的な調査は行われていない。本研究の目的は、審査を行う側が看護学研究の倫理審査について、認識している現状と課題、望ましいあり方について明らかにすることである。全国の看護系大学90校の倫理審査委員会委員長と委員を対象に質問紙調査を実施、231名から回答を得た。現状に関しては、外部委員の不在等指針から逸脱している大学があることのほか、必要書類の不備、研究倫理の理解不足など申請者側の課題、委員に対する研修が必要など審査側の課題とともに、組織の取り組みに関する課題が明らかとなった。また、審査のあり方としては研究を支援する立場と考える人が半数を超えたが、審査基準があっても判断に迷う委員も多かった。委員会や審査のあり方は各大学の独自性を反映したものとなろうが、研究倫理に関する最新の情報の提供や各大学における工夫などはもっと共有されてよい。

  • 柏崎 純子, 福宮 智子
    2022 年 14 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/04/13
    [早期公開] 公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

    本研究では、専門看護師による看護師を対象とした倫理研修プログラムを倫理的意識と行動の変化に着目し評価した。研修前後で質問紙調査を、3カ月後にフォーカスグループインタビューを行った。結果、「倫理への身近さ」「倫理カンファレンスへの参加意欲」「倫理カンファレンスの開催意欲」は有意に高まった(p<.05)。3カ月後、8名(44.4%)が倫理カンファレンスを開催していた。インタビューより意識の変化は【倫理の身近さへの気づき】【問題解決のための思考プロセスの理解】【視野の拡がりの実感】【倫理カンファレンスの有効性の実感】【倫理カンファレンス促進のための問題認識】の5カテゴリー、行動の変化は【必要な情報の収集】【スタッフへの教育的関わり】【他職種へのアプローチ】【カンファレンスの開催】【リソースの活用】の5カテゴリーを抽出した。本研修プログラムが倫理的意識を高め、臨床での行動の変化を促すことが示唆された。

  • 稲垣 聡, 大澤 歩, 吉川 あゆみ, 石原 逸子
    2022 年 14 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/04/13
    [早期公開] 公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

    本研究では、倫理的効力感を測定するMoral Efficacy Scaleを日本語に翻訳し、病院看護師に適用させた日本語版倫理的効力感測定尺度(J-MES)を開発し、その信頼性・妥当性を検証した。調査は、関西圏4病院で働く看護師を対象に300部配布し、181部の回答を得た。因子分析の結果、オリジナル版と同じ1因子構造であり、尺度のCronbach’s α係数は0.92であった。また、J-MESは倫理的風土を表すJ-HECSと互いに正の相関(rs= 0.27, p <0.05)を認めた。以上より、J-MESは一定の信頼性と妥当性を備えた尺度であることが確認され、日本語版としての使用可能性が示された。

レター
日本看護倫理学会第14 回年次大会
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