日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
11 巻, 1 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
巻頭言
特別寄稿
原著論文
  • 大出 順
    2019 年 11 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    看護師の倫理的行動尺度の改訂を目的とし、既存の倫理的行動尺度に修正・追加した質問項目を含む全28の質問項目からなるアンケート調査を実施した。全国から無作為抽出した27施設に勤務する臨床の看護師2,500名を対象に実施し、最終的に1,295部のアンケートを分析の対象とした。因子分析の結果3因子が抽出され、3つをリスク回避(5項目)、善いケア(5項目)、公正なケア(5項目)と命名した。α係数はそれぞれ.78、.75、.74であり、尺度全体としては.84であった。看護師の倫理的行動尺度改訂版は、下位尺度の理論的弁別性と統計的弁別性も一貫されたものとなり、全国調査を経ておおよそ標準化された尺度として改訂することができた。

  • 吉田 みつ子
    2019 年 11 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、専門看護師(CNS)の倫理調整に関する役割開発の契機となった経験を明らかにすることである。CNS 9名にナラティヴ・アプローチに基づくインタビュー調査を行った。CNSらのナラティヴから4つのテーマ、1)相手の本当の声に耳を傾け続け、手だてを尽くす経験、2)今、ここでの自分の判断と行為に全力でかける経験、3)自分の存在・価値観が患者やスタッフにもたらす影響を自問する経験、4)組織・職種間の価値観の違いを超えようと模索する経験が明らかになった。出来事の語り方の特徴から役割開発の契機となった経験は、1)CNSの予想に反する転機がおとずれ、急転的に変化する、2)役割開発の契機はCNSが構築してきた医師・他職種との関係性の構築やシステムづくりに関連する、3)倫理調整役割を比喩的に表現し、自らの言葉で表現する、という特徴があることが明らかになった。

  • 高橋 衣, 瀧田 浩平
    2019 年 11 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    本研究は、子どもに携わる看護師の子どもの権利擁護実践能力尺度を開発し、その信頼性と妥当性を検証する。先行研究を基に尺度案を抽出し、小児看護教育、小児看護に携わる教員・看護師を対象に、尺度項目およびスケールの内容妥当性を検討し31項目の尺度案を作成した。さらに尺度案を関東圏内の小児専門病院5施設および関東圏内大学病院25施設計30施設の627名に無記名自記式質問紙調査票で調査を実施した。有効回収率は58.2%であった。項目分析、因子分析の結果、【子どもと家族を理解し支援する力】【子どもの権利を擁護していない医療スタッフと調整する力】【子どもへの説明と意思を変更確認する力】の3因子19項目が抽出された。Cronbach’s α係数は0.86と、ある程度の内容妥当性が示された。調査対象を変更拡大し尺度項目・基準関連妥当性の検討課題があるが、精度を高める事で、妥当性と信頼性を確保し実用性のある尺度となる可能性が確認できた。

短報
  • 脇丸 夕佳, 八代 利香
    2019 年 11 巻 1 号 p. 40-49
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、参加者が主体的に倫理的問題の吟味を十分に行え、行動に移せるように導くための倫理カンファレンスにおけるファシリテーションスキルを明らかにすることである。

    調査は平成28年3~4月、総合病院1施設に勤務する臨床指導看護師17名に半構造化面接調査を行い、質的帰納的に分析を行った。

    ファシリテーターに求められるスキルとして338ラベルを抽出し、13カテゴリに分類された。さらにそれらのカテゴリはファシリテーターが備えておくべきスキル5カテゴリ、倫理カンファレンスを運営していくうえでのマネジメントスキル8カテゴリに分類された。

    倫理カンファレンスを実践するために、ファシリテーターは倫理的知識を備え、その倫理的知識の活用方法を十分に理解し、マネジメントスキルを駆使しながら繰り返し倫理カンファレンスを実践することで、ファシリテーションスキルが身についていくことが明らかになった。

  • 村松 妙子, 片山 はるみ
    2019 年 11 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、臨地実習を含む4年間の看護基礎教育の中で看護大学生が倫理的に問題だと感じた場面と対応を明らかにすることである。研究協力を得た12名の学生を対象にフォーカスグループ・インタビューを用いてデータを収集した。分析の結果、7つの場面【安易に行われている身体拘束】【患者の意思に反した対応】【患者の尊厳が十分に尊重されていない医療職者の対応】【公正でない医療職者の言動】【守秘義務や個人情報保護に対する意識の欠如】【未熟な処置やケアの実施】【患者の気持ちを優先】が明らかとなった。倫理的問題に気が付いた時の対応では、他者へ相談するなど倫理問題の客観視・問題解決に向けたプロセスに向かうことができた学生は1割のみであった。学生は何が倫理的問題に気が付く能力はあるもののそれを客観的に分析する能力が未熟であることが示唆された。

  • 伊藤 千晴, 早瀬 良, 栗田 愛, 篠崎 惠美子
    2019 年 11 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    本研究は、医療現場における看護倫理に関する研修の実態を明らかにし、より効果的な研修のあり方を検討することを目的とし、410カ所の看護教育を担当する看護師を対象に質問紙調査を行った。有効回答は161病院であり、約86%が看護倫理研修を実施していた。研修の総時間は平均2~3時間、講義中心から対象者の経験年数が増えるほど、講義と演習を組み合わせた形態となり、参加については強制から任意になる傾向であった。事例検討を行っている病院の約56%が問題解決のための枠組みを用いていた。病床数400床以上の病院は400床未満と比べ研修を実施している割合が高く、複数の診療科を有している病院は単科の病院と比べ研修を実施している割合が高い傾向にあった。今後は、ファシリテーターの育成を目指した教育内容や近隣の病院間での協力や教育機関の協同での研修の実施などのあり方が示唆された。

  • 桐山 啓一郎, 松井 陽子, 矢吹 明子
    2019 年 11 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    本研究は精神看護学実習における倫理カンファレンスでの臨床実習指導者の体験から、学生の学びへの貢献と、臨床実習指導者の看護実践に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。精神看護学実習中の倫理カンファレンスに参加した、精神科看護経験を有する臨床実習指導者5名に、半構造化面接調査を実施した。質的記述的分析の結果、【倫理カンファレンス前から倫理を学ぶ重要性の認識】、【倫理カンファレンス指導への不安】、【倫理的思考に触れたことによる学生理解】、【学生からの学びによる原点回帰】、【臨床看護師の倫理的ジレンマの開示】、【学生の底上げを目指した看護の語り】、【学生の多面的思考を支援】、【倫理カンファレンス後の患者–学生関係の深化による患者の変化】、【倫理カンファレンスの臨床看護現場での活用】の9カテゴリを生成した。

  • 森 智子, 太田 勝正
    2019 年 11 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、入院患者の尊厳を測定する患者尊厳測定尺度日本版(J-PDS)の短縮版を開発し、その信頼性・妥当性を検討することである。尊厳への期待について5因子21項目、満足度について3因子21項目からなるJ-PDSについて、一部修正を行った修正版を用いて調査を行った。全国20病院の入院患者378名から回答を得た(回収率:48.0%、有効回答率:100%)。修正版とオリジナル版との整合性の確認の後、因子負荷量を上げながら項目を絞り込んだ。その結果、尊厳への期待、満足度ともに3因子12項目の短縮版を得た。Cronbach’s α係数は、期待の程度では0.89、満足度は0.90であった。モデル適合度についてはGFIがそれぞれ0.826、0.898とやや不十分であった。一方、ローゼンバーグの自尊感情尺度と期待の程度の一部の因子の間と満足度には弱いながらも有意な相関が認められ、J-PDS短縮版はある程度の信頼性・妥当性を備えたものであることが確認された。

  • 大西 香代子, 福井 幸子, 安岡 砂織, 矢野 久子
    2019 年 11 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    日本では戦後、予防接種の注射針の使い回しが行われたこともあって、300万人を超える肝炎ウイルスキャリアが存在する。本研究の目的は、キャリアであることが判明したときの説明と患者によるその受け止め、その後の影響について明らかにすることである。予防接種により感染したと認定されたキャリア10名を対象に半構成的面接を行い、逐語録を質的帰納的に分析した。分析の結果、{説明に納得できた}等で構成される【説明への肯定的評価】、{説明で打ちのめされた}、{病気について理解できなかった}等で構成される【説明への否定的評価】、そして{人生の選択で制限を受けた}、[病気への対応が遅れた]等で構成される【説明による影響】の3コアカテゴリが抽出された。キャリアは他者への感染防止や肝炎発症時の早期発見など気をつけるべきことが多く、丁寧な説明と精神的なケアの重要性が示唆された。

  • 石山 真寿子, 高橋 美穂子
    2019 年 11 巻 1 号 p. 91-99
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、看護職者が倫理事例分析から導いた倫理的行動を明らかにし、看護職者が倫理的行動を示した看護実践行動の特徴について明らかにすることである。方法は、A病院で実施した過去2年間の倫理事例発表会の資料から看護職者が看護実践に導いた倫理的行動の記述内容を抽出し質的帰納的に分析した。その結果【1. 様々な背景を持つ患者・家族の希望を取り入れると共に患者の状態に合った療養環境を決定するために専門的な知識を持つ職種と協働する】、【2. 看護職者間で患者の希望や尊厳を守ると共に安全担保を考慮した看護計画を立案・実施する】など12カテゴリが抽出された。文献と照合し考察した結果、看護職者が倫理事例分析から導いた倫理的行動は「チーム医療を担う各職種との連携・調整」「患者・家族との関わりから得られた看護の気づきや学びを看護職者同士で振り返る」など6つの看護実践行動を前提としているという特徴を示した。

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