日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
5 巻 , 1 号
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巻頭言
原著
  • 葛生 栄二郎
    2013 年 5 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    普遍的原理やルールに依拠しないケア倫理は個別的・関係論的要素を倫理的考慮に入れることができる一方で、普遍性がなく、道徳理論として致命的な欠陥を負っているという批判がある。こうした批判は、一面においてノディングスの誤読に由来するとともに、また他面において、彼女の狭いケア倫理理解に由来している。本稿では、ケア倫理に対する様々な誤解を明らかにするとともに、ケア倫理は、原理に依拠したリベラルな正義倫理、文化伝統に依拠したコミュニタリアンの徳倫理のいずれの限界をも超えることのできる普遍化可能性を持っていることを論じる。

  • 石岡 洋子, 平野 亙, 小野 美喜
    2013 年 5 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    看護学領域では、教員が学生を対象とした研究が多く、インフォームドコンセントのプロセス等に関する様々な倫理的問題が指摘されている。看護学生に調査研究を行なう際の看護教員の倫理的配慮についての認識と実践を明らかにする目的で実態調査を実施した。看護系大学に勤務する看護領域を専門とする教員を対象とし、倫理的配慮に関する認識と実践について郵送質問紙調査を実施した(有効回答324部、有効回答率35.6%)。その結果、倫理的配慮への意識は、学生の自由意思の尊重を重視する教員が多かった。しかし、倫理的配慮の実際では、倫理的配慮が十分に行えていないという結果であった。また、質問紙の回収方法と回収時期に関しては、FD研修を受講している群の方が、倫理的配慮が行えており、有意差が認められた(p<0.05)。FD研修の受講は、教員の倫理的行動へと影響することが考えられ、効果的なFD研修の在り方を検討する必要があることが示唆された。

短報
  • 谷 優美子, 今川 孝枝
    2013 年 5 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    看護学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為を明らかにし、「よい看護師」と捉えた行為がどのような根拠で判断されたのかを倫理原則の枠組みを用いて明らかにすることを目的とした。対象者34名のうち、同意が得られた31名の学生が選んだ「よい看護師」は31名、学生が記述した「よい看護師」の総行為数は40で、学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為は、【患者のニーズを探る】【患者のニーズに応えようとする】【社会人としてあるべき対応をする】【患者と誠実に関わる】【死者への配慮】【プライバシーを守る】【危険を回避する】【患者の意思を確認する】の8カテゴリに分類された。また、学生が「よい看護師」と捉えた看護師のこれらの行為は、倫理原則からは、善行の原則、誠実・忠誠の原則、無害の原則、自律尊重の原則が価値判断の根拠と見ることができる。

  • 小西 恵美子, 麻原 きよみ, 小野 若菜子, 倉岡 有美子, 田代 真理
    2013 年 5 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    倫理的意思決定の枠組みを用いないケーススタディーを看護の実践者、教育・研究者でメールで対話しながら行った。このことをとおして、「仲間」としての関係性、実践知と道徳的感性を総動員しながら行う状況の掘り下げ、倫理原則や価値という言葉にこだわらないことで可能となるオープンな心での事例との対峙、言語化し、語り、対話することなどが、事例検討に重要であることがわかった。

  • 倉林 しのぶ, 李 孟蓉, 尾島 喜代美, 鈴木 雅子, 風間 順子, 中西 陽子
    2013 年 5 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    倫理関連用語のなかで臨床看護師の認知度が最も高かったのは「インフォームド・コンセント」(87.1%)であった。「パターナリズム」「アドボカシー」「ケアリング」ともに「わからない」という回答が35%前後、また「自律」「善行」「無危害」「正義」の4つの原則に関しては、「わからない」という回答がいずれも40%台と高率であった。倫理に関する知識、また、倫理的問題の認識には、倫理教育を受けた時期の違いによる影響は少なからず存在すると思われたが、同時に、臨床での経験を通し磨かれる感性があることも示唆された。倫理的問題を背景別に分類した結果、「多忙や人手不足」「施設設備や施設方針」など、何らかの背景(理由)がある場合「倫理的問題」と捉える傾向が低かった。知識不足により放置されかねない倫理的問題が存在することを考えると、個々の看護師が倫理的知識をもち、それを吟味していく姿勢がより質の高い看護のために必要と思われた。

  • 小山 明美
    2013 年 5 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    本研究は、長期入院の統合失調症患者がどのように自己決定をして退院に至ったのか、そのプロセスを明らかにすることを目的とした。1年以上の入院を経て退院した患者9名に半構成的面接を実施し、質的な分析を行った。さらに、入院時の診療記録等との関連を検討し、退院に至った自己決定のプロセスを分析した。その結果、管理的な環境での長期入院統合失調症患者は、退院の基準を自ら見出すことが困難で、退院の可否は医療者の判断に委ねてきた。退院意向のある患者は、決定の場に参加することで「自己の決定」と認識し、退院意向のなかった患者は、退院支援の実感や、関与の度合いによって「自己の決定」や「共同の決定」、「周囲の決定」と捉えていた。退院の決定には患者-看護師関係が影響し、決定を支援する看護師の8つの役割が明らかになった。

  • 勝原 裕美子, 前田 樹海, 小西 恵美子, ウイリアムソン 彰子, 星 和美, 田中 高政
    2013 年 5 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    誰が共著者にふさわしいのかという著者資格(authorship)について、臨床看護師による共同研究についての仮想事例を題材に、日本看護倫理学会第5回年次大会の交流集会で議論した。その結果、著者資格の捉え方は、参加者が属する組織の考え方や慣習、あるいは各人の経験などに依拠していることや、各人の内的基準によって多様であることが明らかになった。著者資格に関する外的基準を理解し、内的基準と合わせて総合的に捉えられるように研究倫理の視点を養う必要がある。そして、主任研究者を中心に、一つずつの研究において共著者の資格、役割、責任を確認し、「共同」で仕上げるという相互認識のもとで発表活動が行われるのが望ましい。

  • 伊藤 千晴, 太田 勝正
    2013 年 5 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    本研究は、新人看護職員研修における看護倫理教育に関する現状を把握し、課題を明らかにし、到達目標を達成するための具体的で実践可能な看護倫理教育プログラム作成のための資料を得ることを目的とする。中部地区5県の200床以上の一般病棟を有する病院173箇所で新人看護職員研修を担当する教育担当看護師を対象とし、無記名自記式質問紙調査を実施した。その結果、100の病院から回答を得て、以下の4点が明らかになった。1)看護倫理教育は、協力を得た病院の大半で新人看護職員研修に取り入れられていた。2)提示した63の教育項目について、半数以上の病院にある程度含まれている項目が全部で9項目あった。3)厚生労働省が示している4つの到達目標については、ほとんどが到達出来ていた。4)新人看護職員研修における看護倫理教育に関して8つの問題点や悩みが示された。今後さらに高いレベルの到達目標が達成できるプログラムを提供していきたい。

  • 田中 真弓, 岡光 京子
    2013 年 5 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    研究目的は、終末期がん患者の自律した日常生活行動を援助する上で生じた看護師の倫理的問題を解決する影響要因を明らかにし、倫理的判断のプロセスを検討することである。対象者は、看護師9名で、データ収集は半構成的質問紙を用いて面接を行い、質的帰納的に分析した。倫理的問題を解決する影響要因として、7つのカテゴリーが抽出された。看護師は倫理的問題を認識し、解決するまで【看護をする上で大切にしていること】である信念、価値観を基盤に思考していた。次に、看護師は【身体的状態のリスク】【臨床経験に裏付けられた結果の予測】をアセスメントし、その中で【患者を取り巻く療養環境】【看護師のおかれている状況】【医療チームの判断】が影響していた。そして、【看護師としての責任】から判断し、倫理的問題を解決していた。

  • 境 美穂子, 工藤 せい子
    2013 年 5 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    本研究は、脳・神経系病棟に勤務する看護師が抱えている倫理的問題を明らかにすることを目的に、通算看護師経験4年以上の看護師12名を対象に面接し、継続的比較分析を行った。結果、4つのカテゴリーと12のサブカテゴリーが抽出された。問題の約8割は【抑制の悩み】で、脳・神経系疾患の【複雑な病態による共通認識困難と対応困難】という悩みを抱えていた。また、一人の患者にかかりきりになることで業務の負担が増し、【理想と現実の乖離】に陥り、さらに、業務優先の患者対応や看護師間の不統一な行為をすることで【患者に向き合う態度】に問題があることを示していた。脳・神経系病棟に勤務する看護師は、看護師間のサポート体制を整えて、意識障害の患者が送っているメッセージに気づき、倫理的問題をキャッチして、医師・家族も含めた話し合いの場を設け、解決策を講じ、問題を解決していくための積極的な行動力を身につけていくことが求められる。

  • 鶴若 麻理, 川上 祐美
    2013 年 5 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    看護専門職の育成には、看護実践能力はもとより、高度化する医療の中と多様な価値観を有する人間への理解を基盤にした倫理的看護実践をなし得る人材が求められている。そのような意味において、看護教育上、倫理にかかわる教育は中核となるべきものとして考えられている。そこで本研究は、193校の看護学士課程の「看護倫理」教育について、シラバスとカリキュラムを元に「生命倫理」科目群と比較する形でその特徴と傾向を明らかにした。「看護倫理」科目は増加し、42%の大学で「看護倫理」科目があり、科目の特徴は「必修・専門」科目で、教育の担い手は看護専門家が主であった。内容は倫理的問題あるいは課題を解決するための方法論またはモデルや事例検討に焦点がおかれていた。本研究の結果から、独立科目の設置と科目名称のさらなる整理、実習経験との関連性の深化、生命倫理科目群との違いの明瞭化、内容構成をふまえた教育の担い手の検討が課題であった。

レター
日本看護倫理学会第5回年次大会
会長講演
基調講演
  • Douglas P. OLSEN, 田中 美恵子
    2013 年 5 巻 1 号 p. 84-102
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    看護における倫理的な意思決定について2つの事例を通して述べる。これには、価値の対立の状況や倫理的な不確かさを明らかにし、理解のために必要不可欠な事例の諸側面を集め、方法に基づく秩序だった分析を行い、より良い倫理的な成果に到達するために対人関係技能という徳を用いる能力が含まれる。倫理的な不確かさや価値の対立の影響を受けやすい状況として、非健康的な行動をとる患者、好みに応じる条件を有する患者、曖昧な確かさを持つ状況が明らかにされる。倫理的な不確かさを持つ状況を十分に理解するために不可欠な5つの側面について検討される。すなわち、1)事実、2)問題解決に必要な決定、3)問題解決のために必要とされる重要な区別の明確化、4)社会的文脈の影響の明確化、5)関連する権力と権限の系統の明確化である。倫理的な分析は、多元的な連続体のなかでバランスをとることとして記述される。価値の対立や倫理的な不確かさに対するアプローチとして、諸原則と卓越した倫理的な関係技能とを結合したアプローチと、権利のみに依拠したアプローチとが比較され、それによって対人関係技能の価値が明らかにされる。

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