日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
6 巻, 1 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
巻頭言
原著
  • 大出 順
    2014 年 6 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、日本の臨床看護師の倫理的行動を測定するツールを開発することである。臨床看護師600名を対象とし、回収した質問紙のうち回答に明らかな不備がみられるものを除いた479部を分析の対象とした。因子分析の結果、自律尊重尺度(9項目)、公正尺度(4項目)、無危害善行尺度(9項目)と命名した3つの尺度からなる倫理的行動尺度(22項目)を作成した。α係数はそれぞれ.78、.77、.80であり、尺度全体としては.88であった。また、尺度間相関にも有意に強い相関が示された。公正尺度の質問項目はさらに吟味する余地はあるものの、倫理観的行動尺度は、統計に基づく十分な信頼性とまとまりから、日本の看護師の倫理的行動を測定する尺度として使用するのに耐えうるツールであることが明らかになった。

  • 貞永 千佳生, 岡光 京子
    2014 年 6 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    研究目的は、心臓手術を受ける高齢患者の意思決定に影響した要因を明らかにし、意思決定を支える援助を検討することである。対象者は8名で、半構成的質問紙を用いて面接を行い、質的帰納的に分析を行った。心臓手術を受ける高齢患者の意思決定に影響した要因は、【心臓手術を予期していたこと】【心臓手術の適応について説明を受けること】【心臓手術を任せることが出来ること】【心臓手術に関して期待すること】【存続する役割を遂行すること】【生きることへの希望があること】【家族から支援を受けること】【心臓手術体験者から情報を得たこと】の8つであった。心臓手術を受ける高齢患者の意思決定を支える援助は、予期的な思いを支える援助、心臓手術について受け止めを促す援助、心臓手術を受けることの意味を見いだす援助、社会的支援の活用を促す援助の必要性が示唆された。

  • 小林 道太郎
    2014 年 6 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    ケア倫理は、看護倫理を論じる際に有益な視点を与えてくれるのだろうか。もしそうだとすれば、それはどのようにしてか。一部の論者は、看護の本質的な要請に適ったものとしてケア倫理を参照し、これを取り入れた議論を展開しているが、他方、ケア倫理を看護倫理に用いることに対する批判もある。しかしこれらの議論では、多くの場合、多様な形で発展し続けているケア倫理のうちの一部にしか注意が向けられていないように思われる。本論ではむしろ、Gilligan、Noddings以後のケア倫理から、これまでさほど多くは論じられていなかった議論を取り上げ、これを看護倫理のために用いることを検討したい。本論が注目するのは、J. Trontoのいうケアのプロセスに含まれる諸局面の倫理的要素である。これを、看護倫理でもよく参照される原則主義と比較することにより、ケア倫理に含まれる可能性がより具体的な仕方で示されるだろう。

  • 藤野 あゆみ, 百瀬 由美子, 天木 伸子
    2014 年 6 巻 1 号 p. 30-38
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、介護保険施設で働く看護職の道徳的感受性尺度(MSS-NH)を作成し、その信頼性・妥当性を検討した。まず介護保険施設の看護職20名に対するインタビューよりMSS-NHの原案48項目を作成した。次に介護保険施設の看護職861名のデータを基に探索的因子分析を行い、17項目4因子構造【高齢者の尊厳を守る体制づくり】、【その人らしい生活を支える】、【高齢者の能力を活かす】、【栄養摂取法の意思決定】を採択した。信頼性は、Cronbachのα係数がMSS-NH全項目で0.85、下位尺度で0.72~0.83と一定の内的一貫性が確認された。妥当性は、確認的因子分析により上記の4因子を潜在変数とした仮説モデルがGFI、AGFI、CFIのいずれも0.9以上でかつRMSEAが0.05以下と容認できるモデル適合度であり、尺度の信頼性・妥当性が確認された。

短報
  • 窪田 好恵
    2014 年 6 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、重症心身障害児者(以下、重症児者)看護を経験してきた看護師の語りから重症児者看護における倫理的側面を明らかにすることである。そこで、16年間の経験があるA看護師へのインタビューを行った。その結果、以下の4つの倫理的側面が見出せた。「重症児者の尊厳」「重症児者と家族の経済的・法的・年齢的問題」「終末期医療の課題」「重症児者への関わりのありよう」である。これらが重症児者看護ならではの倫理的側面の特徴につながる背景として以下のことが考えられた。重症児者看護には、重度な身体障害と知的障害があり生来もしくは小児期から意思決定できないという「対象」の特性と、病院機能と児童福祉施設の機能を併せ持つ機関であるために医療・福祉を受けながら生涯をすごす「日常」の生活の「場」としての特性がある。また、関わる人のありようや想いを問う徳の倫理が重要である。

  • 森 幹雄, 小野 美喜
    2014 年 6 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    特別養護老人ホームは、入所者の高齢化や医療施設における在院日数の短縮化などにより、医療的ニーズが必要な入所者が増加しており、看護職は専門職として自律性の発揮が求められる。特別養護老人ホームで働く看護職の自律性の特徴と自律性に寄与する要因を明らかにすることを目的に、全国の特別養護老人ホームで働く看護職を対象に、1997年に菊池と原田が開発した専門職的自律性尺度を用いた質問紙調査を実施した(有効回答239部、有効回答率22.6%)。その結果、特養看護職は専門職的自律性尺度を構成する5下位項目のうち、抽象的判断能力が低く(p<0.05)、自律性に寄与する要因は、「役職」、「職務満足」、「特養での職務継続意思」、「介護職との連携」、「介護職と協働したケア」、「ケアの実践」であった(p<0.05)。特別養護老人ホームで働く看護職の自律性を高めるためには、抽象的判断能力を高める必要性があり、自律性には複数の要因が寄与していることが明らかとなった。

  • 小川 和美, 寺岡 征太郎, 寺坂 陽子, 江藤 栄子
    2014 年 6 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、臨床看護師が体験している倫理的問題の頻度およびその程度を明らかにし、倫理教育のあり方や支援を検討するための資料を得ることを目的とする。臨床看護師799名を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施した。結果、倫理的問題の体験頻度の上位には、「患者の安全確保のために身体抑制や薬剤による鎮静をすること、或いは鎮静しないこと」「患者に十分な看護ケアを提供できていない看護師の人員配置に関すること」が示された。倫理的問題の悩みの程度の上位には、「医療従事者や医療施設の非倫理的または違法な行為を明らかにすること」「医療従事者として非倫理的であったり、能力が低かったり、不適切な行動をとる同僚と働くこと」が示された。臨床看護師は専門職としての役割・責務を果たすことや、患者の権利や尊厳を守ることに高い関心を寄せており、また同僚看護師や他の医療者との関係に影響を受け、それが強い悩みに繋がっていた。今後は全職員対象の倫理教育や組織的な体制整備が課題である。

  • 奥津 康祐
    2014 年 6 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    【目的】看護師による入院患者・介護施設入所者への身体拘束に関し、法律(法規命令)上の規定は抽象的・不明確である。この立法下において、司法ではどのような判断がなされているのかを明らかとする。【方法】各種判例データベースから、非精神科病棟入院患者への身体拘束に関する最高裁判決が出された平成22年1月26日以降の裁判年月日で、検索語を「看護師」かつ、「拘束」または「抑制」、にて検索し、看護師による入院患者または介護施設入居者への身体拘束を巡る責任が争われた民事訴訟事例を抽出・検討する。【結果】上記最高裁判決を含め3例抽出された。【考察】抽出裁判例は、条文上の根拠に基づき、あるいは統一的な法理論体系で理解することが困難である。臨床現場、こと、一般病棟では、「身体拘束ゼロへの手引き」と上記最高裁判決を参考にしつつ、様々な事情を総合勘案して判断した上で身体拘束するかしないかを決定していかざるを得ない。

  • 川越 真衣, 坂野 美希子, 松尾 澄佳, 鮫島 雅子
    2014 年 6 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    ハイリスク妊産褥婦のケアに関わる助産師の割り切れない思いの明確化を目的に、総合周産期母子医療センターに属する産科病棟での「倫理カンファレンス」20回分の「事例の概要」を質的に分析した。助産師の割り切れない思いは、事例数の多い順に、「ハイリスク妊産褥婦と胎児双方のアドボカシー」「医療資源の適正な分配」「ハイリスク妊産褥婦の人権」「助産師とハイリスク妊産褥婦との距離感」「医療者間の方針の違い」「医師・ハイリスク妊産褥婦間のコミュニケーション不足」「ハイリスク妊産褥婦と家族の選択への支援」「ハイリスク妊産褥婦間の療養環境の安楽・安全」という8つのカテゴリーに分類された。本報ではその中から、事例数の多かった2つのカテゴリー、ハイリスク妊産褥婦の治療などに由来する「ハイリスク妊産褥婦と胎児双方のアドボカシー」と、ミクロレベルだけではなくメゾレベルな問題も抱えている「医療資源の適正な分配」に焦点をおき、これまでにあげられている周産期の倫理的問題とは異なった、ハイリスク妊産褥婦のケアにおける助産師の割り切れない思いの特徴を述べた。

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