日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
3 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
特別寄稿
原著
  • 小西 恵美子, 小野 美喜
    2011 年 3 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    医療の現実の中で、看護師が自身をよい・よくない看護師と思う体験とはどのようなものか? この問いを、経験半年~7年半の若手スタッフ11名へのインタビューによって探索した。全員が、患者に喜ばれた時によい看護師、患者に申し訳なく思った時はよくない看護師と思う体験をしていた。よい看護師体験のテーマは、喜びと振り返りからの学びであった。よくない看護師体験には、道徳的苦悩、道徳的不確か、道徳的後悔があり、頻度はより頻繁であった。背景には、多忙、医師の権力、難しい患者等が関与していたが、それらをよい仕事を阻む要因と認識する者はなく、自身のケアの未熟、気遣いの不足を悔いていた。よい・よくない看獲師という認識には、患者の安寧という暗黙の願いが寄与していたが、その内的基準だけでは、看護師の辛い体験の十分な助けにはなっていなかった。

  • 松山 明子, 樋口 京子
    2011 年 3 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    本研究は、緩和ケアにおけるエキスパートナースの倫理的意思決定過程及びそれに内在する価値を明らかにすることを目的に、質的記述的研究を行った。8名のエキスパートナースを対象に半構成的インタビューを実施した。その結果、「患者のQOLに対する希望と安全の対立」「患者の自己決定や希望と家族の希望の対立」「患者の自己決定の時期をめぐり、医療者の判断が優先される危険性」の3つの倫理的ジレンマに直面していた。エキスパートナースは、患者が覚悟を持って決めたことが置き去りにならないように、患者の自己決定に立ち戻り支援することを意思決定し、4つのアウトカムを設定していた。また、内在する価値は「自立」「無害」「善行」「誠実」であった。

  • 杉浦 和子, 太田 勝正, 鈴木 千智
    2011 年 3 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    本研究は、周産期医療に携わる助産師の倫理的問題を明らかにすることを目的に、助産師経験2年目以上の助産師814名に倫理的要素を含む14の場面を提示し、もっとも印象深い経験の事例の記述を求めた。収集された209事例を質的に分析し、倫理的問題と倫理的問題ではない問題の分類を行い、さらに倫理的問題の特徴を明らかにした。倫理的問題の分類結果は、命をどう捉えるかに関する問題が3割、医療者としての善行、患者の自律性に関する問題がそれぞれ2割を占めていた。これらは、正常分娩において医師と同等の責任範囲のある助産師の専門性から、患者の意向を無視した医療、医師の都合による分娩方針、母子の命の優先という倫理的問題の特徴がみられた。

  • 田中 美穂, 小松 明
    2011 年 3 巻 1 号 p. 36-46
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    臨床で働く看護師が治療行為として実施しているプラシーボ夜薬の現状を、全国300床以上の病院954施設の病棟看護師を対象とし無記名自記式質問紙にて調査した。回答者の86%が過去に予約の経験を持ち、約半数がプラシーボ予約は効果が「とてもある」または「ある」と答えた。「プラシーボ予約は倫理に反すると思うか」という設問に「反するとは思わない」と答えた者は59%(n=192)であった。プラシーボ与薬後に患者の苦痛が消失した場合「高架があれば真実を告げなくても良い」と答えた者は約60%であった。看護師はプラシーボ与薬に対して道徳的な不確かさを感じてはいるのだが、問題を深く省察するまでには至らず、多忙な業務に埋没していた。

短報
  • 中川 典子
    2011 年 3 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    変革理論を用いて看護部組織の倫理的風土の変化を目指す委員会活動について、意識や行動の変化の視点から評価することを目的に、A施設に在職する看護職員547名に対する自記式質問紙留置き法で調査を行った。その結果、「日々の実践の中で倫理的問題に気づくようになった」、「患者の意向を聞くようになった」、「安易に抑制や拘束などをしなくなった」など行動レベルの変化を自覚した者が、過去の調査と比べ多くなっていた。このことからA施設では、ポジションパワーによる看護部倫理委員会の設置という規制的な変化と倫理委員のパーソナルパワーによる参画的な変化により、書く看護職員の知識、態度、行動が変化してきたと考える。

  • 石井 泰枝, 岩澤 とみ子, 間々田 美穂, 猪俣 真由美, 金子 雅美, 板橋 千恵子, 田中 とく子, 岩崎 かほる
    2011 年 3 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    看護部倫理委員会が行なうべき活動内容を明確化するために、A病院の全看護職343名を対象に「業務上悩む場面」「その際の対処行動」「委員会に期待する活動」を尋ねた。有効回答223件を分析した結果、過去3年間の倫理委員への相談件数の少なさとは対照的に、悩みを持つ看護職の割合は「医療従事者との関係(72%)」を筆頭に13質問項目中8項目で50%以上を示した。対処行動は「第三者に話す」が最多であったが「一人で抱える」も10%以上あった。倫理委員会には「相談」「事例検討」「研修」を期待する意見が多かった。看護職の倫理的感性に基づく対処行動を支援するために、組織として実態把握、事例検討会、相談機能の充実を図る必要性が示唆された。

  • 吉本 なを, 八代 利香
    2011 年 3 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    看護系大学1年生がどのような拠り所をもとに倫理的判断を行うのか、その傾向を明らかにすることを目的に、患者の希望を叶えるか叶えないかという二つの相反する倫理的判断を含む事例における倫理的判断の理由とそうした場合の結果の予想についての学生の記述を分析した。その結果、1年生の判断の拠り所として、看護実践にとって重要な善行と無害の原則が含まれていることが明らかとなった。また、規則を守ることに価値を置く学生の傾向も明らかになった。看護倫理教育においては、学生が本来備えている価値観を大切にしながら、専門的な価値観や判断の拠り所を身につけられるような取り組みが必要であるといえる。

  • 池添 志乃, 田井 雅子, 中野 綾美, 川上 理子, 高田 早苗, 横尾 京子, 片田 範子, 野嶋 佐由美
    2011 年 3 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2019/07/12
    ジャーナル フリー

    本研究は、「ケア対象者の安全・安楽・尊厳を保証する抑制・身体拘束ケアガイドライン」の作成を目的としている。その一部として、本稿では、看護者の抑制実施時の倫理的判断と抑制実施時に「説明」を重視する看護者の特徴について述べた。1,260名の看護者対象にアンケートを調査を行い、回答の得られた777名を分析対象とした(有効回答率61.7%)。分析の結果、抑制実施時に悪影響を最小限にすることを重視する看護者が多く、抑制中のケアでは、日常生活援助やケア対象者への支援が多かった。「説明」を重視する看護者と重視しない看護者の、責任との関連については、〈悪影響を最小限にする〉〈関係性の破錠を来さない〉責任が、判別の要因として抽出された。

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