1) 1986年5月31日から3日間,北海道東部の十勝,釧路,根室地方の海岸,河川,湖沼周辺に広がる湿原上空から,セスナ機を用いタンチョウの分布•繁殖状況を記録した.調査飛行時間は約15時間で,飛行距離はおよそ1,810kmであった.
2) 調査結果は3地方7地域別に集計し,それぞれの地域の分布状況を簡単に述べた.
3) 就巣あるいは育雛など繁殖活動継続中の番い(繁殖番い)数は,地上からの調査結果も加えて57で,十勝地方は7.0%と低かったが,釧路地方は47.4%,根室地方は45.6%とほぼ同じ割合であった,このうち,別寒辺牛川地域の繁殖番いの数が例年に比して著しく少なかったが,理由は不明である.
4) 繁殖番いのうち,就巣番いとひな連れ番いの割合はほぼ半ばし,釧路地方と根室地方とのあいだの差も認められない.このことは両地方で産卵(=ふ化)期が同じであった可能性を示唆するが,過去の記録と対比してさらに検討を要する.
5) 調査時点における育雛番い当たりひな数は1.33で,個体群におげる繁殖個体の割合は40.1%であった.
6) 非繁殖個体は地域別では釧路湿原に最も多かったが,根室地方にもすでに全体の約半数が移動していた.
7) タンチョウを発見した地点の環境は,釧路では樹林内と農地などの人工環境での発見例が37%を占めたのに,根室では1%以下であった.反対に水辺や水中にいたものが釧路では19.6%なのに,根室では52.5%を示し,両地方の生息環境の違いを現わしている.
8) 確認個体数はひなを除き275羽であったが,越冬個体のセンサス数と約100羽の開きがある.この違いについて簡単に考察したが,その差を埋めるには繁殖期に徹底した調査を行なう必要があろう.
抄録全体を表示