日本鳥学会誌
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35 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 森岡 弘之, シソン ロヘリオV.
    1987 年 35 巻 4 号 p. 109-124
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    1)ハルコン山(標高2,580m)は,ミンドロ島に位置するフィリピン第三位の高山である.筆者らは,1985年9月6日から18日まで同山に滞在し,高地の鳥類を調査した.
    2)標高1,500m以上の地点では,18種を採集し,他に3種を目撃した.採集した標本を研究した結果を各論の項で述べた.
    3)ミンドロ島高地の鳥相は,ルソン島およびミンダナオ島の鳥相と比較しても貧弱であった.現在までに標高1,500m以上の高地から記録されている"留鳥"は25種であるが,キヌバネドリ•バンケン•ショウビン•キツツキ•ヤイロチョウ•ビワなどの類が生息していない.ミンドロ島高地の鳥相が貧弱な理由の一部として,気候的条件(とくに繁殖期中の気温の低さとフィリピンで最大の雨量と湿度)および食物量の貧困をあげ得るであろう.
    4)ミンドロ島の生物相は,一般にルソン島とバラワン島の生物相の中間に位置していると考えられている.しかし,高地の鳥相に関する限り,ルソン島北部の高地の鳥相との関係が密接である.一方,パラワン島高地の鳥相は,ミンドロ島高地の鳥相とまったく異なっている.
    5)高い山岳の高地は,通常周囲の地域から植生や気候条件によって隔離され,しばしば固有種が発達している.しかし,ミンドロ島高地では,高地の鳥類はせいぜい固有亜種に分化しているだけで,ミンドロ島の固有種は1,500m以下の山地の森林に多く(4種),低地の熱帯多雨林にも1種が生息していた.したがって,ミンドロ島高地は隔離が不十分であると考えられる.だがこれだけでは,固有種が山地帯と低地に分布し,高地に分布しない理由を説明でぎない.このため,絶滅率(extinction rate)の相違が現在の鳥相を形成するにあたって重要な要因であった,と考えられた.
  • ラナ D.B., イドリス M.
    1987 年 35 巻 4 号 p. 125-128
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    インドのジョドブル周辺で,1985年1月-12月に,イエスズメPasser domesticus indicusを補獲し,〓嚢および砂嚢の内容物を選別•同定して重量を測定した.冬期間に自然状態でこの種が喰べた殻類は,年間総内容量の80.9%を占めた.夏にはおもにコムギのほか,オオムギ,植物,および昆虫を捕っていた.雨期の間のおもな餌は昆虫と殻類であった.雨期後は種子類が最も高い割合を占めたのが特徴で,ついでマメ類が多かった.パンジャブ州ルジアナとラジャスタン砂漠のジョドブルのイエスズメ個体群について,食性の季節変化を比較して論じた.
  • 鮫島 正道, 大塚 閏一
    1987 年 35 巻 4 号 p. 129-144
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    19目44科111属162種(亜種を含む)430個体の日本産および外国産鳥類の成鳥の晒骨標本を作成し,方骨について,形状,方骨と隣接骨との連結方法,含気孔の位置と数などを主眼として検索し た.
    1)方骨の形状は,鳥類分類上の目•科内ではほぼ一致した.しかし,一部の目で目内変異が認められ,カワセミ科では科内変異が顕著であった.
    2)方骨と隣接骨の連結方法も鳥類分類上の目内でほぼ一致したが,一部に目内変異•科内褒異が認められた.
    3)方骨と隣接骨との四つの関節状態はそれぞれ相関関係がみられ,一つの関節が強い関節状態を示せば他の三つの関節も強い関節を示し,弱い関節のものは,他も弱い関節を示す傾向がみられた.
    4)方骨の各部位の観察で変異が最も少ないのは,含気孔の位置と数の形質であった.
    5)方骨の形状は生活型分類での鳥類の嘴の適応諸型との関連性が強く,目の異なるカツオドリとカワセミ,フクロウ類とワシタカ類などはそれぞれ非常に類似する方骨を有した.
  • 2.北海道東部における冬季の行動圏,日周活動および就塒行動
    芳賀 良一, 横田 寿男, 鷹股 修一
    1987 年 35 巻 4 号 p. 145-154
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    1) エゾライチョウの冬季の行動圏,日周活動および就塒行動を,1984年2月から同年5月まで,標茶にある京都大学農学部付属演習林内のカラマツ人工林と飼育下で観察した.
    2) 冬季の調査地のカラマツ人工林では,付近や行動圏内にシラカンバが混生していなければ,エゾライチョウは観察されなかった.
    3) 行動圏を持った番いを観察した結果では,6-8時では木から木へ飛び移りながら広い範囲で採食を行なったが,日中は積雪上をゆっくり歩行しながら,雪の上に出ている植物(とくにイヌコリヤナギやイタヤカエデの冬芽)を啄んでいた.厳冬期間中,夜は雪洞内にねぐらをとった.
    4) 飼育下での観察では,9月以降に番い形成の行動が認められた.
    5) 調査地内には2月下旬-3月上旬に3行動圏が確認された.そのうち,行動圏Aでは番いと他の雄1羽が観察され,この行動圏の面積は約11.5haと算出された.行動圏BとCではそれぞれ雄と雌が1羽ずつ観察されただけで,その面積は約1.3haと約2.5haであった.3月下旬には,行動圏Aは約7.8haに縮小し,一方行動圏Bは約5.3haに拡大した.行動圏Cの雌はいなくなった.
    6) 飼育下での日週活動は,層自然状態の場合とほぼ同じであった.
  • 松本 光二
    1987 年 35 巻 4 号 p. 155-164
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    1) 1984年6月13日,北海道中川郡音威子府村字物満内の山林において,ふ化後1-2週間と思われるクマゲラのひな2羽を保護し,7月22日まで40日間飼育した.
    2) 餌はエゾアカヤマアリの幼虫•さなぎ•成虫と牛肉の赤身を与えた.
    3) 体重は飼育開始時は各140,150gであった.40日目には260,280gとなった.ただし,13-22日目には体重の増加が認められなかった.
    4) 翼長は各々110.116mmであった.40日目には225,235mmとなった.ただし32日目以降伸びはみられなかった.
    5) 飼育10日目には,身体の翼基部裏面を除いて全身が羽毛で被われた.頭部の変形および頭頂部赤色斑の形状変化は10-13日目に著しかった.
    6) 行動の変化では飼育10-11日目に飼育箱内壁面に止まり,12日目からはばたき行動を行なうようになり,18日目には飼育箱から飛び出し,35-37日目には飲水,水浴び行動を示した.また光の明から暗への変化が餌ねだりを誘発した.鳴き声の変化は10-11日目,14日目,21日目に起こった.
  • 山谷 清
    1987 年 35 巻 4 号 p. 165-166
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    A specimen of Lanius excubitor mollis in first winter plumage (sex unknown) was obtained at Yamamoto, Yao City, Osaka Pref., on 15 March 1961. It was captured in the rice field and preserved as mounted specimen. This subspecies has hitherto been known from only two rather dubious specimen records (Nikko in Tochigi Pref.and Kyushu)in Japan and considered to be a rare straggler.
  • 遠藤 孝一, 高橋 英樹, 藤田 幸子
    1987 年 35 巻 4 号 p. 166-168
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    Since the middle of 1970's the Indian Pratincole Glareola maldivarum has been observed breeding at several places in western Japan. Recently the bird seems to be expanding its breeding area farther north in Japan. We obtained the following breeding data at Utsunomiya (30°32′N, 139°59′E, alt. 100 m), Tochigi Pref., central Honshu. The area is 60 km away from the seacoast. An incubating pair was observed on a gravelly area of the Kinu River in June 1984. A pair and three chicks were observed in the same area on 12 June 1986.
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