目的:発作性片側頭痛(PH)は,自律神経症状を伴う一側性の眼窩,眼窩上部から側頭部にかけての短時間の激痛発作と,インドメタシンが絶対的に奏効することを特徴とする神経血管性頭痛であり,三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)に分類される.PHの患者は,群発頭痛同様,歯痛や顎関節症と誤認して歯科を受診することが稀ではない.本報告では,歯科を受診した慢性発作性片側頭痛(CPH)の4例を報告し,本疾患の特徴と鑑別点について文献的考察を行った.
症例:2006年7月から2009年9月までに当科口腔顔面痛外来を受診した連続4例のCPH患者(男性2名,女性2名).症例1:25歳,女性.右眼窩部から頬部にかけての疼痛であり,顎関節症の既往があったため顎関節症の増悪と誤認されていた症例.症例2:61歳,男性.上顎左第1大臼歯の歯痛が主訴で抜髄が行われ,群発頭痛の診断基準とのオーバーラップ内にあった症例.症例3:57歳,女性.初期には結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT)の診断基準とのオーバーラップ内にあり,時間の経過と共に典型的な形に移行した症例.患者は歯科治療が原因で発症したと認識していた.症例 4:76歳,男性.CPHと三叉神経痛の合併症例(CPH-Tic syndrome).
結論:PHは非歯原性歯痛を呈する可能性のある神経血管性頭痛であり,インドメタシンの有効性により速やかに診断できる疾患である.不要で無意味な治療を行わないためにも,歯科医は口腔顔面痛の原因疾患の一つとして,本疾患を正しく診断できる知識を持つ必要がある.
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