Chipping hammerを21年間使用した男子労働者で,手掌の筋萎縮と手指の蒼白発作を持つ1例を,筋電図学的に検索した。手指蒼白発作は寒冷曝露時におこり,主として左手の全指を襲った。左第4指,第5指および右第5指には,しびれ感,痛み,冷けつ感があり,両手の小指球の筋萎縮が顕著であった。筋電図学的検索では,両側のM.abductov, dig.Vにのみ異常があり,他の筋には異常を認めなかった。右側においてみられた異常は,異常に大きなAction Potentialと,Grouping Voltageの出現であり,左側は最大収縮時に異常に小さなAction Potentialがあり,さらにその数の減少があきらかであった。この所見から,おそらく末梢の神経の損傷が,振動によって生じ,そのために筋萎縮をまねいたものと推定され,手指の蒼白発作と筋萎縮のあいだに,とくに明らかな関連を指摘できなかった。
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