家兎(JW)を用いた鉛投与実験でFEP値の性差を検討した.各14匹の雌雄家兎を対照群,低濃度鉛投与群(Pb 0.4 mg/kg・BW),高濃度鉛投与群(Pb 2 mg/kg・BW)の3群に分け,週2回, 5週間,鉛を静注投与し, Pb-B, FEP, Ht, Hb, ALA-D, P5N, ALA-U, CP-U, Fe-S等を週1回ずつ測定した.
鉛非投与時の家兎のFEP値を雌雄おのおの総括して平均値を比較すると,人と同様の性差(♀>♂)が見られた.低濃度鉛投与群の投与後3週までおよび高濃度鉛投与群の実験終期においても,雌のFEP値が雄より高値を示した(
t-test).
また, FEP値の初期値からの増加量に対する分散分析では,低濃度群のみが有意な性差(♀>♂)を示した.
さらに,各FEP値の増加開始週も,低濃度群では雌のほうが雄より早く,高濃度群では雌雄両者は同一時期から速やかに鉛暴露に対して反応した.
貧血指標としてのHt, HbおよびFe-S値を見ると, HtおよびHb値は雌が雄より低い傾向を示したが, Fe-S値は雌雄とも鉛により影響されず,一貫した性差も示さなかった.
その他の鉛暴露指標の性差を見ると, ALA-D, P5NおよびALA-U値には,いずれも鉛暴露による低下あるいは増加等の変動は認められたが,著明な性差は認められなかった.なお, CP-U値には,低濃度鉛暴露で雌のほうが高く,高濃度鉛暴露で雄のほうが高い傾向が見られたが,これはPb-Bおよび血球鉛量の動向と類似していた.
本実験におけるFEP値の性差(♀>♂)は,第II報のラット実験の場合(♂>♀)と異なったが,この原因として貧血指標や血球鉛量の性差ではなく,本来もっている種族差や品種差の影響が大きいものと考える.なお,家兎を用いた本実験の結果からも,ラットの場合と同様に,雌は雄より低濃度鉛暴露に対して感受性の大きいことが示唆された.
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