薬物治療の標準化は,エビデンスに基づいて開発された疾患別の診療ガイドラインを通じて通常行われている(evidence-based medicine : EBM)。一方,近年多くの先進国では財政の悪化と医療費の高騰に悩んでおり,EBMに加え,社会的視点による新たな医療資源配分方法を模索している。その代表的な方法が,医療技術評価(health technology assessment : HTA)に基づく資源配分である。これは医療における一つのパラダイムシフトである。そのような背景から,本稿では,HTAの導入が超高齢社会の薬物療法の標準化の課題を今後どのように解決しうるか,について,効率性を追求するための費用効果分析の方法,公平性を担保するための倫理・社会的考慮の方法,などについて,先進諸国および日本で始まったばかりの工夫を紹介する。
医薬分業には情報共有に基づく医薬連携という視点が欠かせない。また,地域で薬剤師が患者の薬物治療を行うためには医師との連携が不可欠と考え,2014年に金沢市の薬剤師と大学研究者の有志による「薬物治療連携研究会」を発足した。この研究会を中心として,「排便障害の薬物治療を円滑に実施するための排便ケアチームによる共同介入」,「排尿障害治療薬の薬学的管理を円滑に実施するためのアセスメントツールの開発と有用性の評価」,「ワルファリン服用患者の共同薬物治療管理の構築」,「保険薬局におけるFRAX®による骨粗鬆症スクリーニングと骨粗鬆症薬物治療の医薬連携」等の地域薬局を研究フィールドとした取り組みを行ってきた。まだ短い期間で,十分なエビデンスを確立するには至っていないが,活動の結果を情報発信することに努めてきた。現在の大きな問題点は,以上の薬物治療の取り組みが日常業務で継続的に実施されていないことである。「健康サポート薬局」や「かかりつけ薬剤師」などが提言され,薬局薬剤師が地域住民に適切な医療情報を提供することが求められている。薬局薬剤師が適切で継続的な医療情報を提供する上での問題点や大学における薬学教育について考察する。
化学情報協会は,長年蓄積してきた化学情報処理技術のより広範な活用を目指し,2017年に「JAICI Science Dictionary」,2018年に「JAICI AutoTrans」の提供を開始した。前者は科学技術専門用語に強い日英/英日対訳辞書とシソーラスであり,後者は化合物名に対応した機械翻訳を活用した,特許や文献調査におけるスクリーニングの効率化に寄与するサービスである。本稿では,両サービスの概要を紹介する。