新潟県立がんセンター新潟病院での患者図書サービスはボランティアが運営の中心になっている。活動は1994年に娯楽書の病室巡回貸出「あかね文庫」から始まった。1年後に司書が利用者へのアンケートを行ったところ,わかりやすい医学書や,退院後の指導書が欲しいという意見があった。調査結果を院内研究会で報告したところ,小児科病棟で絵本の読み聞かせ活動についても希望がでた。両方の準備を進め,1996年に小児科病棟でのお話ボランティア「あかね文庫お話会」を開始し,1997年に医学書の提供活動「からだのとしょかん」を開始した。患者図書サービスはボランティアと図書室や地域連携・相談支援センター職員が互いに連携し,協力しあって継続してきた。活動には病院としての組織的な運用が必要である。
第34回医学情報サービス研究大会(2017.8.26,枚方)での記念講演に沿って,医学・医療系分野における研究活動との関係から見た系統的文献検索の必要性,考え方,技法について概要を述べた。また,国内および国際的な研究者の検索知識・検索技術の現状にも触れ,そのなかでの図書館員の役割についても論じた。図書館員が自らの経験を言語化しなければならないということ,図書館の現場で研究者と「理解共有=知識移転型」の協働を発展させるべきだということを主張した。
慢性疾患患者,なかでも原因不明の病や現代医学において治癒の見込みのない病をもつ,いわゆる難治性疾患患者は,肉体・精神両面に大きな苦しみや不安を抱えながら,長期にわたる闘病生活を余儀なくされることが少なくない。本稿では,小児慢性疾患(1型糖尿病)患児の母親としての体験から得た問題意識をベースに,慢性疾患患者自身が様々な問題を解決するための情報リテラシーの重要性および図書館員による情報支援のあり方について考察する。また,主に欧米において導入され,医師と図書館員の協働での患者支援策として注目されている「情報処方(Information Prescription)」について紹介する。
本稿では,第34回医学情報サービス研究大会・大阪枚方大会のポスターセッションにおけるポスター発表の内容をまとめた。一般対象のヘルスリテラシー教材の作成,高齢者対象図書館サービスの主題として「住民の介護予防のためにフレイル期対策に資するサービス」の提起,そして,病院・研究施設の図書館における「研究発表の促進」を主題にした取り組みの3件である。
2017年8月26日,27日と関西医科大学(枚方市)で第34回医学情報サービス研究大会が行われ,盛会でした。医学情報の多岐に渡る分野が発表され充実した内容でした。そのなかより数件ご紹介いたします。大会の委員の方々の行き届いた対応で,皆様方,和気あいあいとした雰囲気のなか学ぶことができました。医薬のみならず情報の扱い方,利用方法,紹介の方法など,丁寧な対応の必要性と大切さを改めて感じさせられました。
これまで3回にわたり,病院図書室の立場から医療系図書館の目指す方向を考え,PDCA(Plan, Do, Check, Action)サイクルに沿って話題提供してまいりました。第4回はC(Check)に着目し,図書館や医療機関の提供するサービスへの以下の評価や指標について取り上げます。
・NPM(New Public Management)
・図書館パフォーマンス指標:ISO11620とJISX0812
・サービス・マーケティング指標:ServQUAL, ServPerf, LibQUAL, ClimateQUAL
・病院機能評価の変更点
・情報の付加価値基準尺度
国立極地研究所では,電子リソース数の爆発的な増加や,それに伴う電子ジャーナルの価格高騰,オープンアクセスの進展といった潮流への対応として,2017年3月から電子リソース管理システムIntota ERMを試験的に導入した。本稿では,導入に至った経緯,移行のプロセス・利用環境の構築状況を紹介する。また,Intota ERMで実現できる機能につき,国立極地研究所における検証および評価の結果を報告する。