育種学研究
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10 巻, 3 号
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原著論文
  • 蛯谷 武志, 山本 良孝, 矢野 昌裕, 舟根 政治
    2008 年 10 巻 3 号 p. 91-99
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/05
    ジャーナル フリー
    玄米外観品質(外観品質)は,収量および食味とならび育種における重要な形質の一つであるが,関与する遺伝子やその作用など,その遺伝様式については研究が進んでいない.本研究では,外観品質に影響をおよぼす遺伝子を探索するために,コシヒカリを遺伝的背景にもつインド型品種Kasalathの染色体断片置換系統群(CSSLs: chromosome segment substitution lines)を利用した外観品質に関するQTL解析を行った.その結果,Kasalathの対立遺伝子がコシヒカリに対して,整粒比率を増加(外観品質を良くする)させるQTLを第2,第9,第11および第12染色体の4箇所に見出した.さらに,外観品質を低下させる因子として,背基白粒を増加させるQTLを第2,第5,第6,第8および第10染色体の5箇所に,乳白粒を増加させるQTLを第1,第7染色体の2箇所に,腹白粒を増加させるQTLを第1染色体の1箇所に,それぞれ検出した.それらQTLのうち,整粒を増加させる第2および第12染色体,背基白粒を増加させる第5染色体,腹白粒を増加させる第1染色体のそれぞれのQTLについては,QTLを含む染色体領域が分離する集団を作出して,検出したQTLの存在を確認した.以上の結果から,染色体の一部のみの他品種由来断片への置換によって外観品質に関する変異の創出が可能であることを実証した.
  • 青木(中村) 恵美子, 山口 修, 伊藤 誠治, 森脇 丈治, 馬場 孝秀
    2008 年 10 巻 3 号 p. 101-110
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/05
    ジャーナル フリー
    オオムギ雲形病(病原;Rhynchosporium secalis(Oud.)Davis)抵抗性オオムギ品種Brierと罹病性品種2品種との交配組合せに由来する後代の発病程度を調査し,遺伝解析を行うとともに,発病程度と生育特性,収量関連形質,精麦品質との関係について解析を行い,Brierを母本とした抵抗性品種の育成方法について検討した.北陸地域に優占する雲形病菌レースJ-4a(菌株NB1-1-1)を接種した罹病葉を伝染源として積雪前の分げつ初期に圃場に投入し,出穂30日後に発病程度を調査した.F2集団の発病程度をもとに分離比の検定を行った結果,圃場におけるBrierの抵抗性は劣性3遺伝子によるものと考えた.抵抗性の遺伝率は比較的高く,初期世代から抵抗性個体の選抜が可能であるが,発病が抑制される条件下では選抜効果が小さいと推察され,圃場においては複数年の検定が必要であると考えた.また,抵抗性品種Brierとの交配によって得られる抵抗性の後代が少なく,優良形質を兼ね備えた抵抗性系統の出現率は低いと考えられるため,抵抗性品種育成のためには抵抗性を有し優良な形質を兼ね備えた系統間でさらに交配を行う必要がある. Brierとの交配によって成熟期が遅れたり,ハンター白度が低くなる傾向が認められることから,Brierを利用するに当たっては,早生で高白度の品種を交配親として用いる必要性が示唆された.
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