極早生コムギ品種アブクマワセを遺伝的背景とし春播性遺伝子
Vrn-A1,
Vrn-B1,
Vrn-D1,
Vrn-D5をそれぞれもつ系統と春播性遺伝子をもたない
vrnの準同質遺伝子系統群を茨城県谷和原村と福岡県筑後市で2か年秋播き栽培し,春播性遺伝子の違いが生育,収量に及ぼす影響を検討した.2か年の結果を総合的にみると,稈や幼穂の伸長および幼穂分化程度は,
Vrn-A1,
Vrn-D5,
Vrn-D1,
Vrn-B1をもつ系統の順で進み方が早く,春播性遺伝子をもたない秋播型系統が最も遅れていた.茎立の早い
Vrn-A1,
Vrn-D5をもつ系統は幼穂凍死型凍霜害に遭遇する危険が最も高く,出穂期や収量の変動が大きく不安定な生育になりやすいことが示唆された.
Vrn-B1をもつ系統は出穂が遅れやすく,登熟期間が短い福岡では収量が低下する傾向にあったが,茨城では春播型系統の中で多収となる傾向にあった.秋播型系統は凍霜害に遭う可能性が最も低く,春播型系統と比べ出穂が遅れやすいものの成熟期に差はなく,出穂期や収量の変動も小さく安定的であった.
Vrn-D1をもつ系統は全体的に中庸な生育を示した.わが国の極早生品種の遺伝的背景では,温暖地品種に広く導入されている
Vrn-D1のみでなく,秋播型や
Vrn-B1の導入も有用である可能性が示唆された.
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