第30回周産期学シンポジウムは,平成24年2月3,4日に,都心に位置するシェーンバッハ・サボーで開催されました。日本海側を中心とした6年ぶりの豪雪を中心に,日本中が厳しい寒波に包まれていた真っ只中でしたが,幸い東京は晴天に恵まれました。心配されていた天災もなく無事に終了し,これまで最多の500名以上の出席となったことは,間違いなく「地の利」が大きく幸いしたといえます。
今回のテーマ「長期予後からみた出生前診断症例における周産期管理の再評価」は30回を迎える本シンポジウムで,これまで一度もテーマに挙げられていませんでした。出生前管理と胎児治療の進歩,NICUでのケアの更なる充実を背景に,周産期医療の究極的な目標である「後遺症なき生存」を脅かすハイリスク症例の予後を知りたいという機運がまさにピークに達した「天の時」に合致します。
本シンポジウムの企画運営に精力的に携わってこられたシンポジウム運営委員会,加えて,医局員を始め,周産期センターのスタッフ,関係各位の献身的な協力―「人の和」―なくして,今回のシンポジウムは成功しませんでした。ここに改めて謝辞を示したいと思います。
各演者の詳細な報告と,当日に交わされた討論を含めた座長の先生方による総括は,この抄録集の該当項目を是非ご参照下さい。
産科医にとっては,出生直後だけでなく,その先の治療成績を,また,新生児科医にとっては,生まれる前の治療内容を知りえたことが,シンポジウムに参加された皆様の実感でしょう。そして,出生後の長期にわたって,きめ細やかなフォローアップが必要であることが改めて実感されました。母から子へと情報をうまく伝えるためには,データベースの連結が不可欠なことも示されました。
このように,スリガラスの向こうにあった虚像は,一部ははっきり実像として示されましたが,まだ,多くは虚像のままで,未だ不明な点が残されています。とはいえ,今回新たに示された問題点にはまた新たな叡智が集められるはずです。同じようなテーマが数年経って企画され,同じような結論であれば,我々の辿ってきた道に大きな間違いはなく,その逆に,違った結論になればそれもよし。そこに医学の進歩があると考えます。
本シンポジウムがこのユニークさを失わずに,更に発展していくことを願ってやみません。
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