周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第29回
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
序文
  • 橋本 武夫
    p. 3
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     このたび,2011年1月14,15日にわたり第29回周産期学シンポジウムを開催させていただきました。

     企画,立案,演題募集から,採択,内容チェックまで数回に及んで,学会本部の委員会で取り仕切っていただけるので,会場と現場でのシンポジウムの運営が,課せられた役割になるわけで,今回は,思い切って佐賀県の山の中の温泉郷に囲まれた“どんぐり村”での開催を企画させていただきました。

     数年前にこの会場で同じような学会を持たせていただきましたが,開会から閉会まで満員で,終わって一斉に会場から皆さんをバスで送り出すことができたという感動の経験をし,夢よもう一度ということから,このような結果になってしまいました。ただ今回は冬の時期であり寒さと交通の便が唯一気がかりでしたが,私のテルテル坊主に願いをかけて決断させていただきました。ところが20年に一度の寒波が襲い,年明けから雪の連続で開催も危ぶまれましたが,私のテルテル坊主の効果で,開会当日のみ見事な青空で晴れ渡り,何とか皆様をバスで会場までお連れすることができました。九州でありながら,まさに「トンネルを抜けると雪国であった…」そのもので,銀世界の中での開催でしたが,会場の中は熱気あふれた討論が湧出しました。

     そんなわけで,本テーマは周産期学シンポジウム運営委員会で提案された「周産期における鎮静・鎮痛・麻酔」ですが,プレコングレスでは,趣を変えて,会長としての歓迎講演を前座として,京都の第一線臨床医でおられる島岡昌幸先生にメインテーマの中での違った角度から多くの臨床経験を通しての硬膜外麻酔分娩の話題をお願いし,新しい概念も含めて多くの理解を得ることができたと思います。また委員会からは照井克生先生にメインテーマに関する全国調査の結果についても報告していただきました。

     また,今回は新生児蘇生の講習会は,2010年の新しい改定がなされたことから急遽,講習会にかわって,新しい改定内容を田村正徳先生に講演していただくことができました。

     最後に,気候や山の中の不便な会場設定で,皆様には大変なご不便をおかけしたと思いますが,九州での銀世界の経験,懇親会の料理のおいしかったこと,そして熱い会場の雰囲気など“素晴らしい記憶に残る会でした…”と,多くの皆さんからの嬉しいお言葉をいただくことができました。そして“障がい者も健常者もともに働く村,どんぐり村”を知っていただき,障がい者も会の運営に参加し,最後に小雪の舞い散る中,ともに皆で手を振ってバスを送り出せたことを世話人一同喜び合うことができました。あらためて御礼申し上げたく思います。

プレコングレス
  • 〜ハイリスク児から超重症児のパラダイス,そして療育まで〜
    橋本 武夫
    p. 15-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     緒言

     このたび,九州新生児研究会の全面的なバックアップにより,日本周産期・新生児医学会の第29回周産期学シンポジウム(周産期における鎮静・鎮痛・麻酔)を佐賀市のどんぐり村シンフォニーホールで開催させていただくことになり,プレコングレスを“游於藝(芸に遊ぶ)”とさせていただいた。

     游於藝とは,水戸裂公(9代)が水戸藩士の子弟の学問,武芸の場として,日本の大学のはしりともいえる弘道館をつくり,その教科を6藝(禮,楽,射,御,書,数)としたが,一方で「学問,武芸のみに凝り固まらずに,ゆうゆう楽しみながら勉強しなさい」という意味の館訓である。そこで,プレコングレスも最初に,九州新生児研究会の紹介も含めて,学術的にこだわらない歓迎講演とさせていただき,次いで,痛みに耐えるお産が美徳(硬膜外麻酔では母性は育たない?)とされた古き観念の打破を島岡昌幸先生に,そして最後に学術的に全国アンケート調査について照井克生先生にご報告していただくことにした。

  • ─硬膜外麻酔分娩の臨床経験─
    島岡 昌幸
    p. 21-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     「お産の痛みが母性を育てるか?」について我々の行っている硬膜外麻酔分娩と母子継続支援から考えてみた。今回,その実際を紹介させていただく。

  • 照井 克生
    p. 27-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     背景と目的

     今回の周産期学シンポジウムは,「母体・胎児・新生児における鎮静・鎮痛・麻酔」をテーマとし,さまざまな診療現場での成果や工夫が報告される。しかしこの領域はこれまで本シンポジウムで取り上げたことがなく,産科麻酔や新生児麻酔の現状と研究の到達点が周産期医療に携わるスタッフによく知られているとも言い難い。

     そこで今回のシンポジウムに先立ち,周産期学シンポジウム運営委員会が,演題に関連した診療についての全国調査を行うこととなった。本調査の目的は,演題に関連した診療について全国の実態を調査し,問題点や課題を浮かび上がらせることである。それによりシンポジウム各演題をより深く理解し,全国での診療の中で各演題の位置づけを理解するのに役立つことを期待したい。

シンポジウム午前の部:母体の麻酔
  • 照井 克生
    p. 33-37
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     本項では,午前の部の各演題に関連して,産科麻酔のトピックとその背景を概説する。

  • ─各種局所麻酔薬の胎盤通過性と新生児における代謝─
    淵 勲
    p. 39-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     緒言

     麻酔分娩を管理するうえには,的確な鎮痛効果,母児の安全性および円滑な分娩経過を得ることが重要な目標となる。今回は児の安全性を確認する意味で,各種の局所麻酔薬の胎盤通過性,胎児新生児での代謝状況について比較検討し,さらに胎児,新生児に最も影響の少ない局所麻酔薬を知ろうとした。

  • ─麻酔法別による検討─
    岡田 尚子, 天野 完, 奥富 俊之, 望月 純子, 海野 信也
    p. 45-49
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     緒言

     分娩に鎮痛を求める声は増えてきている。安全で確実な無痛分娩法が模索されるなか,児への薬物移行・分娩進行への影響を最小限とする方法として現在ではneuraxial analgesia,すなわち硬膜外鎮痛法(epidural analgesia:EA)と脊髄くも膜下硬膜外併用鎮痛法(combined spinal-epidural analgesia:CSEA)が主流となっている。

     EAとCSEAによる無痛分娩に関してさまざまな問題が提起されてきたが,多くの臨床研究により鎮痛開始時期,母体低血圧,分娩遷延,帝王切開率などの点では一定の解決をみた。しかしながら回旋異常,器械分娩率,オキシトシン使用頻度,母体発熱などの未解決な問題点が残っている。

     本研究では回旋異常を取り上げ,neuraxial analgesiaの鎮痛方法および使用薬剤による回旋異常発生率と下肢運動神経遮断の程度について検討した。

  • ─脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA)と硬膜外麻酔の比較─
    角倉 弘行
    p. 51-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     背景

     諸外国では一般的に行われている無痛分娩であるが,わが国では,一般の妊婦だけでなく,分娩に携わる医療従事者の間でも無痛分娩に対する理解が十分でなく,その普及の障害となっている。

     無痛分娩のメリットとしては,無痛分娩を受ける母体が肉体的にあるいは精神的に楽であるということだけでなく,分娩経過中にもし緊急帝王切開が必要となった場合でも,すでに留置されている硬膜外カテーテルを用いていつでも緊急の帝王切開に対応できるというメリットがある。また無痛分娩希望の妊婦が無痛分娩導入前に緊急帝王切開が必要になったとしても,事前に麻酔科医による評価(スクリーニング)が行われていれば余裕を持って対応することが可能である。さらに,無痛分娩で出産する妊婦が増え麻酔科医が分娩フロアーに常駐するようになれば,産科医や助産師と麻酔科医とのコミュニケーションも円滑になり施設全体の分娩の安全性も向上することが期待される(表1)。

     本研究では,特に無痛分娩中の妊婦で緊急帝王切開が必要になった場合に硬膜外カテーテルを用いて安全かつ迅速に帝王切開が行えるメリットに注目し,硬膜外カテーテルの信頼性を2種類の無痛分娩の方法(硬膜外麻酔単独および脊髄くも膜下硬膜外麻酔併用法)で比較した。

  • 宮越 敬, 田中 守, 細川 幸希, 梅津 桃, 金 善惠, 門平 育子, 峰岸 一宏, 吉村 泰典
    p. 55-59
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     目的

     陣痛は,“癌性疼痛よりも強く,産婦によっては指趾切断に匹敵する痛み”とされている。このような“痛みへの恐怖心”や,高齢初産婦が懸念することの多い“体力面への不安”,そして“諸外国における和痛法の普及”を背景として,わが国においても産痛緩和(和痛)を希望する妊婦が増加傾向にある。一般に,和痛時には麻酔鎮痛薬が局所もしくは全身投与されるが,わが国において全身投与法の1つである,静注による自己管理鎮痛法(intravenous patient-controlled analgesia:iv-PCA)を用いた和痛に関する臨床知見は少ない。そこで今回我々は,当院におけるフェンタニルiv-PCAの安全性,産痛緩和の有効性および産婦満足度を後方視的に検討した。

  • 大西 庸子, 奥富 俊之, 金井 雄二, 望月 純子, 天野 完, 海野 信也
    p. 61-66
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     目的

     帝王切開術後は肺血栓塞栓症予防のため硬膜外カテーテルを抜去してから抗凝固薬を投与することが多い。硬膜外鎮痛法の代替として非ステロイド性抗炎症薬や麻薬の静脈内投与が行われているが,十分な鎮痛効果は得がたい。

     腹横筋膜面ブロック(transversus abdominis plane block:TAP block)は2001年にRafi1)が報告した神経ブロックで,McDonnellら2)やO’Donnellら3)により下腹部手術術後鎮痛法としての有効性が報告されている。そこで今回,TAP blockが帝王切開術後鎮痛法として有効であるかを検討するとともに,TAP blockの安全性について検討した。

  • ─麻酔法の選択と血液凝固学的指標の確立へ向けて─
    牧野 真太郎, 杉村 基, 稲垣 徹訓, 依藤 崇志, 輿石 太郎, 田中 利隆, 竹田 省
    p. 67-73
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     緒言

     近年,わが国においても深部静脈血栓,肺塞栓症(venous thromboembolism:VTE)が社会的に注目を集め,決してその発生頻度の概数が欧米と比較して低くないことが明らかになった。その結果,VTE予防ガイドライン1)の導入,VTE予防管理料の健康保険点数化を経て,リスクの高い開腹術での予防的抗凝固療法も健康保険の適用となった。その背景にはVTE発症予防および死亡率の減少には理学的予防法に加えて抗凝固療法が必要である事実がある。こうした医療環境の変化は当然,産科血栓塞栓症管理に明らかな変更を導くこととなる。

     近年臨床使用が可能となった低分子量ヘパリン(エノキサパリン)の帝王切開術後投与は諸外国のガイドラインでも推奨されている。特にイギリスでは,すべての帝王切開を受ける妊婦は予防的へパリン療法を受けるべきであるとされ2),フランスにおいても緊急帝王切開や3つ以上のリスクを有する予定帝王切開では7〜14日間の低分子ヘパリン投与を行うとしている3)

     低分子量ヘパリンであるエノキサパリン(クレキサン®)は,まだ十分な抗Xa活性を示す程度の短糖鎖ヘパリンで,血漿蛋白への非特異的結合が少なく血小板との相互作用もかなり弱いことから,ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)が少なく,ヘパリン誘発性骨粗鬆症のリスクが低くなる。またトロンビンの阻害作用が少なく,Xa因子への選択的な阻害作用があるため,出血性副作用が少ないなど多くのメリットがある。術後24時間以降に2,000IUを1日2回皮下注射する。一方,Xa阻害薬であるフォンダパリヌクス(アリクストラ®)は,プロトロンビンからトロンビンを産生する第Xa因子を阻害し,トロンビンから静脈血栓の生成に重要なフィブリンを形成するのを阻害する。術後24時間以降に,2.5mg(腎機能低下などにより1.5mgに減少)を1日1回皮下注射する。

     これらのモニタリングは不要とされているものの副作用は皆無ではない4)。また,硬膜外カテーテル挿入や自然抜去に伴う脊髄硬膜外血腫の発生は稀であるが,発症した際には下半身麻痺などの重篤な合併症をきたす可能性がある5)。そのため,これらの出血性合併症を防ぐため適切な術後鎮痛法ならびに至適投与のための評価法確立が必要と考えられる。

  • 松田 義雄, 久保 隆彦
    p. 75-76
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     周産期医療に麻酔は不可欠であるが,これまで本シンポジウムでは取り上げられてこなかった。今回,初めて「周産期と麻酔」が取り上げられたが,午前の部は母体,胎児への麻酔を中心に演者のアトラクティブな発表と活発な議論がなされた。各演者の前に照井先生から産科麻酔,無痛分娩についての概説講演が行われた。その後,わが国では欧米諸国では通常の分娩様式である無痛分娩(以前から日本で実施されていた計画無痛分娩ではない)が認知されておらず,この無痛分娩を中心に各種発表がされた。

     淵先生は無痛分娩に使用する硬膜外薬剤の代謝について,岡田先生は無痛分娩による回旋異常について,角倉先生は無痛分娩では緊急帝王切開に迅速に対応できること,宮越先生はiv-PCAによる静脈産痛緩和について,大西先生は帝王切開術後鎮痛としての腹横筋膜面ブロックの有用性について,牧野先生は抗凝固療法中の産科麻酔について発表された。詳細な内容は本編を熟読頂きたい。

     座長のまとめとしては,当日のディスカッションのまとめについて略述し,任を全うしたい。

シンポジウム午後の部:胎児・新生児の麻酔と鎮静
  • 田中 基
    p. 79-83
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     胎児・新生児の鎮静・鎮痛・麻酔について,今回の発表演題に関連づけて15分間の解説講演を行った。

  • 大橋 夕樹, 照井 克生, 松村 英祥, 馬場 一憲, 関 博之
    p. 85-89
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     背景

     胎児超音波診断の進歩に伴って,胎児の様々な病態に対して診断や治療を目的とした超音波ガイド下の手技が行われるようになった。侵襲的な治療を行う際に,妊娠8週以降の胎児は脊髄反射によって胎動を示す。したがって安全向上のために胎児の無動化が求められる。

     また,妊娠28週以降の胎児では痛覚を大脳皮質まで伝える神経経路が完成しているといわれている。そのため,胎児治療に際しては無動化とともに適切な鎮痛が望ましいと考えられる。しかし,胎児の検査や治療において前述した目標を満たすような,安全で効果的な麻酔方法は確立されていない。

  • 入駒 慎吾, 大島 正行, 角倉 弘行
    p. 91-94
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     目的

     胎児治療の中でも,双胎間輸血症候群(twin-to-twin transfusion syndrome:以下TTTS)に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(fetoscopic laser photocoagulation:以下FLP)は有効な治療法として認められている1)(図1)。しかし,その最適な麻酔法はいまだ確立されていないのが現状である。

     2005年Van de Veldeらによって脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(Combined spinal epidural anesthesia:以下CSEA)で母体の鎮痛を行い,レミフェンタニルの経母体投与で胎児の不動化を図る麻酔プロトコルの有用性が報告された2)。その中ではレミフェンタニルの投与速度を正確に調節すれば,母体の呼吸抑制を回避でき,かつ胎児の不動化が得られるとされている。

     当施設でもTTTSに対するFLPの麻酔法は,Van de Veldeらと同様にCSEAとレミフェンタニルの併用で行っている。今回,当施設のTTTSに対するFLPにおいて,胎児の不動化を目的に経母体的に投与したレミフェンタニルの至適投与速度の検討を行ったので報告する。

  • 豊島 勝昭, 川滝 元良, 柴崎 淳, 斎藤 朋子, 小谷 牧, 金井 裕二, 渡辺 達也, 松井 潔, 星野 陸夫, 大山 牧子, 猪谷 ...
    p. 95-102
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     早産児の後負荷不整合

     血圧値と心臓超音波検査の計測値から算出する左室の後負荷を表す収縮末期左室壁応力:end-systolic wall stress(ESWS)と,左室内径の変化に加えて心拍数と左室駆出時間から算出する左室のポンプ機能を表す心拍補正左室平均円周短縮速度(mVcfc)の2つの指標を用いたStress-Velocity関係は,心筋にかかるストレスに対して心ポンプ機能が対応できているかを評価しうる1〜3)

     胎児循環は,両心室で血液を全身に送る並列循環であり,左室の心拍出量は右室より少ない4)。出生後は肺循環確立に伴い右室-肺-左室-全身の直列循環に変わるため,左室の前負荷は増加する4)。加えて,血管抵抗の低い胎盤からの分離により左室の後負荷は増大する。未熟心筋の筋原線維の特性から,未熟心臓の拡張能と収縮能はともに乏しい5,6)。そのため,出生に伴う前負荷や後負荷の増大に左室は適応できずに後負荷不整合(アフターロードミスマッチ)をきたしやすい7)

     後負荷不整合をきたすと心内圧の上昇から心房圧や静脈圧が上昇し,静脈還流障害によるうっ血をきたす。

  • 木下 義晶, 江角 元史郎, 手柴 理沙, 永田 公二, 増本 幸二, 田口 智章
    p. 103-107
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     目的

     新生児外科疾患の周術期における麻酔管理は,予後を規定する上で重要な要素である。当科においては2004年頃を境に麻酔管理を含む周術期管理プロトコールを疾患の特性にあわせて変更し,治療成績の改善を得ている状況がある。そこで今回の周産期学シンポジウムのテーマに沿って,当科における新生児外科疾患に対する治療戦略を周術期麻酔と鎮静,鎮痛管理を中心に検討した。

  • 〜多施設共同研究〜
    佐藤 義朗, 大城 誠, 竹本 康二, 細野 治樹, 齊藤 明子, 近藤 大貴, 会津 研二, 松沢 麻衣子, 二村 裕紀子, 寺崎 浩子, ...
    p. 109-114
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     目的

     極低出生体重児の出生数増加,生存率上昇に伴い,未熟児網膜症(ROP)への対応はより重要となってきている。しかしながら,未熟児網膜症に対して光凝固術(PC)を施行する際,鎮痛・鎮静をどのように行うべきかについては明確な指針は示されておらず,施設によりその方法も様々である。本シンポジウムにあたり周産期学シンポジウム運営委員会により行われた全国アンケートの結果を見ても,様々な方法がとられていることがわかる(表1)。表2に英国からの報告1)を示すが,このROPに対するPCの際の鎮痛・鎮静方法の多様性は,わが国のみならず,海外においても同じである。

     新生児においても,中枢神経が痛みを感じるのに十分発達していることは,解剖学的,神経生理学的,神経科学的にも証明されている2,3)。新生児期に適切な鎮痛を行わないことは,倫理的に問題となるのみならず,後の神経学的発達に影響を及ぼす可能性がある。Taddioらは,新生児期の鎮痛なしでの割礼が後の予防接種時の痛みの反応の増強につながり,その増強は,割礼時の鎮痛で軽快すると報告している4,5)。一方,吸入ガスを含めた鎮痛・鎮静に用いる薬剤の中枢神経への影響も多く報告されており6〜8),鎮痛・鎮静薬の使用による神経学的発達に及ぼす負の影響も危惧される。したがって,新生児の神経発達を妨げない鎮痛・鎮静法を探求する必要がある。

     本研究では,それぞれの鎮痛・鎮静方法の長所・短所を明らかにし,有効性が高く,かつ汎用性に優れた方法を見出すために,名古屋大学附属病院,およびその関連4病院において施行されたROPに対するPCの際の鎮痛・鎮静方法,バイタルサインの変動,および有害事象の有無に関して後方視的に検討した。本研究の参加5施設のうち4施設(A,B,C,D)では,研究期間中に鎮静・鎮痛方法の変更がなかったのに対し,残る1施設(E)では,研究期間中に鎮静・鎮痛方法が変更になっていた。そのため,E施設のみ,その他の施設とは別に,変更前後での比較検討を行った。

  • 木原 秀樹, 北瀬 悠磨, 奥野 慈雨, 小久保 雅代, 廣間 武彦, 中村 友彦
    p. 115-119
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     目的

     ポジショニングは早産児の不良姿勢の改善,神経行動発達の促進の目的で導入されてきた1)。近年,早産児において安静保持・ストレスの緩和の目的でポジショニングを導入する施設が増えている。ポジショニングは安静を保ち,睡眠を増加させる報告が散見されるが,神経行動観察(Short MA;19962),Becker PT;19993),Grenier IR;20034))での評価が多く,生理学的な指標による評価はMontfort Kら(1997)5)や我々(2008)6)の報告のみと少ない。

     今回,ポジショニングが早産児の睡眠覚醒状態に及ぼす影響について,①バイタルサイン,②心拍変動,③脳波(ElectroEncephaloGraphy;EEG)での睡眠分類,④睡眠覚醒状態を用いて検討した。

  • 内田 美恵子
    p. 121-126
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     緒言

     神経発達障害の危険性の高い早産児は,ストレスの少ない母親の胎内環境とはまったく異なる新生児集中治療室(NICU)で治療を受ける。NICUでのケア提供者は,早産児の生命予後だけでなく,神経学的予後に悪影響を与えないケア提供とストレス軽減の重要性を認識しておく必要がある1)

     足底採血などの日常的処置に対して,蔗糖やおしゃぶり(pacifier)を用いた疼痛緩和法の研究が行われている2)。このような疼痛緩和ケアの効果は,早産児の行動学的,生理学的反応により評価されているが,神経学的予後に直接関係があると考えられる脳活動に関連する研究は少ない。疼痛緩和ケアの効果のより客観的評価を行うためには,さまざまな疼痛緩和ケアと脳活動に関する更なる検討が必要である。

  • 早川 昌弘, 田口 智章
    p. 127-128
    発行日: 2011年
    公開日: 2024/03/01
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     以前は,新生児は痛みを感じないと思われていたため,疼痛を伴う処置においても鎮痛・鎮静が行われることはほとんどなかった。しかしながら,近年の研究結果から新生児も痛みを感じていること,痛みの経験が児の脳の発達や行動に影響していることが明らかになり,新生児に対しても年長児や成人と同様に痛みが伴う処置を行う場合には疼痛管理を行うことが勧められている。一方,胎児治療の実施に伴い胎児麻酔を行う必要がある。胎児治療および胎児麻酔はその歴史が浅いため,臨床的に解明されていないことが多数存在する。

     一般的に鎮痛・鎮静・麻酔に用いる薬剤は呼吸循環動態に少なからず影響を与え,過剰投与では患児(胎児)の全身状態の悪化を招くことになる。また,近年の研究では発達過程の未熟脳において麻酔薬が中枢神経発達に影響を及ぼすことが報告されている。

     現状においては,胎児・新生児の鎮痛・鎮静・麻酔については不明瞭なところも多い。より良い周産期管理を行うために今回のシンポジウムでは「胎児・新生児麻酔と鎮静」をテーマに取り上げ,田中基先生の「胎児・新生児の鎮痛・鎮静・麻酔」についての解説講演と7名のシンポジストから臨床研究の結果を発表していただいた。

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