周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第31回
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
序文
  • 北島 博之
    p. 3
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     平成25年1月25,26日に第31回周産期学シンポジウムを,大阪国際会議場グランキューブにて開催させていただきました。連日の晴天で寒気団が来てはいたものの,参加するには本当に気持ちのよい日々でした。今回のテーマ「成熟児のasphyxiaとcerebral palsy」は,大阪の地で竹内徹先生が第6回(胎児仮死および新生児仮死:病因と病態,診断と治療)に開催されてから25年,またわが国で産科医療補償制度が2009年に開始されてから4年を経過し,時を得たテーマとなっていました。

     プレコングレスでは松田義雄先生から,産科医療補償制度の概要と原因分析委員会へ持ち込まれた182症例のうち,「出生時にlow pH,low Apgarではなかった脳性麻痺児の検討」が10例披露されました。このうち4例(2.2%)は原因不明であり,今後の更なる研究と解析が必要な症例だと示唆されました。次いで早川昌弘先生が,全国NICU(全出生の約75%に相当)から情報を集めて,2008年出生のHIE症例の詳細な解析が行われ,HIEの発症率は0.35/1,000出生でした。最後に韓国三星メディカルセンターのWon Soon Park教授から,ヒト臍帯血間葉系幹細胞による脳室内出血後・HIE脳病変に対する治療効果の報告があり,特に後者において脳低温療法と幹細胞治療の併用効果が示されました。

     本シンポジウム午前の部では,中井章人先生から新生児科側へ「CTGの限界」のわかりやすい解説があり,その後胎児でのHIE予防の3題:母体の脂質栄養特にDHAを多く摂取すること,母体の過換気が胎児脳循環を低下させるが,母体へのCO2投与が胎児脳障害を抑制すること,新生児側からは胎児のプロスタグランディンPDG2が血管内皮細胞障害を予防し脳病変の進行を抑えること,など新しい知見が示されました。次いで,新生児asphyxia/HIEとCPの関係を,1病院で10年間のデータと宮崎県全体のコーホート研究,午後の部として大阪NMCSのデータと名古屋から正常に生まれているのに遅発性に進行性の脳障害例の報告がありました。午後の後半は,HIE急性期での予後予測にMRIと脳波が有用なこと,そして脳低温療法児の長期予後予測におけるMRIの重要性が,そして臍帯血pH,乳酸,BEとApgarスコアの5分値10分値の予後予測における重要性,そして脳内micro dialysisからみた予後が報告されました。ここ10年でHIEの診断と治療に大きな進歩がみられ,いずれ判明してくる治療の限界も合わせて考えさせられる内容でした。一方,今後のHIEの予防・治療の進展を期待させられたシンポジウムでした。

     最後に両日合わせて684名という多数の方々にご参加いただき活発な討論が行われたことに,そして今回のシンポジウムを成功裏に導かれたシンポジウム運営委員長の齋藤滋先生と中村友彦先生,並びに運営委員の先生方に心から御礼を申し上げます。

プレコングレス
  • 産科医療補償制度 原因分析委員会からの報告
    松田 義雄
    p. 15-22
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     目的

     脳性麻痺発症の原因分析と補償制度を目的とした産科医療補償制度が平成21年1月から開始され,すでに5年目を迎えている。これまで原因分析委員会で原因分析が完了し公表された182件に記載されている情報から,出生時には仮死を認めずに脳性麻痺となった症例の頻度とその臨床経過を明らかにすることを目的とした。

  • 周産期学シンポジウム アンケート調査報告
    早川 昌弘
    p. 23-27
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     周産期医療の進歩により重症新生児の生存率は著しく向上したが,神経学的後障害については改善の余地が残されている。神経学的後障害の1つである脳性麻痺については,その発症率は減少しておらず出生1,000に対して1.5〜2.0例の発生で推移している1)。低酸素性虚血性脳症(hypoxic ischemic encephalopathy:HIE)は,脳性麻痺,精神発達遅滞,てんかんなどの神経学的後障害の原因となる疾病であり,その発生率は西オーストラリアからの報告では出生1,000に対して3.8とされているが2),わが国におけるHIE発症率の報告はない。

     胎児心拍数モニタリングや胎児超音波検査などの出生前管理,低体温療法などの新生児管理が発展したにもかかわらず,HIEに起因する神経学的予後を克服できない理由としてHIEの発症機序が完全には解明されていないことが挙げられる。また,HIEはその受傷機序により新生児期の臨床像が異なってくることが知られており,新生児医療において少なからずHIE症例が見逃されている可能性があることが推測される。

     今回,日本周産期・新生児医学会の周産期学シンポジウム運営委員会が中心となり本邦における中等度〜重度のHIEの発症状況ならびにそのリスク因子の解析を行うことを目的としてアンケートによる全国調査を行った。

  • Won Soon Park
    p. 29-33
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     Introduction

     Despite continuing improvements in perinatal and neonatal intensive care medicine, perinatal asphyxia and the resultant hypoxic ischemic encephalopathy (HIE) continue to represent a major cause of mortality and morbidity such as seizures, mental retardation, developmental delay and cerebral palsy in the newborn infants. The incidence of HIE is 1 to 3 per 1,000 term births, and 23% of all neonatal deaths annually are caused by perinatal asphyxia. At present, there are few clinically effective treatments available to improve the outcome of this serious disorder. Therefore, the development of a new therapeutic modality to improve the prognosis of this disease is an urgent big subject. Currently, therapeutic hypothermia has been the only established effective therapy for HIE in the term newborn infants. Hypothermia has been confirmed as significantly reducing mortality and disability in survivors of HIE at 18 months of age. However, even therapeutic hypothermia was not quite effective against a severe type of perinatal asphyxial brain injury. Therefore, the development of new therapeutic modalities to improve the prognosis of this severe type of neonatal brain injury resulting from perinatal asphyxia is an urgent issue.

シンポジウム午前の部:その疫学と予防
  • 中井 章人
    p. 37-41
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     Cardiotocogram(CTG)は,分娩中の胎児の状態を評価し,その健常性を確保するため欠かすことのできない検査である。しかし,胎児心拍数陣痛図の解釈にはさまざまな問題点が指摘されている。代表的なものには,①健常であることは診断できるが,胎児機能不全と診断しても,しばしば胎児低酸素症になっていない,②異常と正常な波形が交互に出現する,③検査者内,検査者間の再現性が低いことなどが挙げられる。こうした問題に対し,日本産科婦人科学会では胎児心拍数波形のレベル分類を導入し,解釈とその対応の標準化を試みている。

     本稿では最新の情報を踏まえ,基本的な用語の解釈,胎児心拍数波形のレベル分類を用いた胎児機能不全の診断とその対応,さらにはその有用性と限界について解説する。

  • 菅沼 広樹, 東海林 宏道, 北村 洋平, 奥村 彰久, 清水 俊明
    p. 43-50
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     背景

     脳は脂質含有量が高い組織であり,他の組織と比べ長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を多く含み,そのなかでもドコサヘキサエン酸(DHA)は主要構成成分となっている。特に,網膜細胞や脳灰白質には大量のDHAが含まれている。このような脂肪酸構成は膜の流動性,膜酵素の活性あるいはエイコサノイドの基質として数多くの細胞機能に関係しているためである。

     さらに,LCPUFAは中枢神経ニューロンやシナプスの成長に関与し,神経細胞間の相互作用,神経伝達機能などの脳の発達に不可欠な役割を果たすと考えられ,乳幼児における視機能や知的発達への影響が注目されてきた。DHAは妊娠後期から出生後早期において脳内に蓄積し,DHAの欠乏は記憶障害や学習障害,視力障害の原因になるとされる1〜5)

     新生児仮死に伴う低酸素性虚血性脳症(HIE)は発達障害の原因の1つである。HIE後の神経細胞死のメカニズムとしてはネクローシスとアポトーシスが考えられている。ネクローシスは虚血の中心部に起こるが,アポトーシスはその周囲の病変部に生じる。ネクローシスは受傷後直ちに進行するが,アポトーシスは受傷後少なくとも7日間は継続する6,7)

     臨床研究ではHIEに対して脳低温療法が神経発達予後を改善したと報告されているが,この治療は適応基準や開始時間の制限などがある8)。最近の報告では,DHAが低酸素性虚血性脳障害に対して神経保護作用があるとされている9,10)。これはDHAのアポトーシスの制御や炎症性蛋白の発現制御,抗酸化作用などによるためである11〜13)

  • ―胎児二酸化炭素分圧の重要性―
    冨松 拓治, 味村 和哉, 谷口 友基子, 金川 武司, 下屋 浩一郎, 木村 正
    p. 51-54
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     目的

     周産期医療の進歩によって低出生体重児や早産児の救命率や予後は飛躍的に改善されているが,その一方で脳性麻痺に代表される胎児・新生児脳障害の頻度はこの数十年減少していない。新生児脳障害は脳性麻痺,精神発達遅延,知能障害,てんかん発作といった障害の主な原因となっていることはよく知られているが,多動,注意散漫,衝動性,情緒不安定,反社会的行動,学習障害などがみられる注意欠陥・多動症候群,学習障害ともいわれている一連の病態も,微細脳機能障害症候群として分類されており,なんらかの周産期における脳障害との関連が示唆されている。またこれらの微細脳機能障害症候群の有病率については近年明らかな上昇が示唆されている。

     現在のところ,新生児脳障害の病態についてはほとんどが臨床的な観察に基づくものであり,有効な治療法も予防法も開発されていない。脳性麻痺の原因のほとんどは分娩中の低酸素であり,その多くは胎児心拍数モニタリングで予防が可能であるといった以前の認識は大きく変わった。現在のところでは,脳性麻痺の原因として,分娩時の胎児低酸素症が原因のものは15%程度にすぎず,70〜80%はそれ以外の原因や分娩前および分娩後に発生するとの認識が一般的となっている。

     実際の産科臨床の現場では,分娩中の低酸素の推測目的で胎児心拍数モニタリングが主に行われてきたが,前述のように胎児・新生児脳障害を減少させるには至っていない。これは,胎児・新生児脳障害の原因が多岐にわたることがその原因のひとつであることはもちろんであるが,現在の分娩管理の限界も示していると考えられる。胎児心拍数モニタリングは胎児の体循環の低酸素症の検出を目的としており,胎児脳循環や胎児脳組織酸素化は考慮に入っていない。一方,新生児医学領域では,低酸素だけではなく,低二酸化炭素血症の予防が新生児脳循環のコントロールに重要との認識で一致している。過度の人工呼吸による新生児の低二酸化炭素血症と脳性麻痺の主要原因である脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia:PVL)の発症との関連はよく知られており,現在までに多くの研究がなされてきた。

     今回は,上記を踏まえて,われわれの行ってきた分娩中の妊婦に対する臨床研究および妊娠羊や新生仔ラットを用いた動物実験の結果から,胎児脳循環や脳酸素化における二酸化炭素分圧の重要性に着目し,胎児心拍数モニタリングに加えて胎児脳循環を考慮に入れた分娩管理の重要性を提案する。

  • ―低酸素虚血受傷後の脳へのライフライン確保を目指す薬物治療アプローチ―
    谷口 英俊
    p. 55-59
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     1 新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)の病態における血管内皮細胞傷害

     新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)は,周産期に起こりうる胎児および新生児の循環不全によって脳の低酸素虚血状態により生じる病態である。その原因は胎盤早期剥離,子宮破裂,感染症,母体の外傷と多岐にわたり,結果として起きる神経学的後遺症は恒久的である場合が多く,患児だけではなく,家族や社会に及ぼす影響は著しい。現時点で有効性が認められている治療法は脳低温療法であるが1),実施可能な施設が限られ,装置が高額で,効果に限りがあり,代替療法や併用療法の必要性が認識されている。

     HIEの病態は脳内で起きる血流の低下と酸素枯渇による細胞死(一次性細胞傷害),興奮性アミノ酸やフリーラジカルによる細胞傷害によって活性化したミクログリアによるサイトカインの産生,浸潤細胞による炎症反応が指摘されている2)。この炎症反応によって引き起こされた遅発性細胞死(二次性細胞傷害)はHIEの予後を決定するうえで,また低酸素虚血後の治療のターゲットとして重要であると考えられている2)。一方,受傷細胞に着目すると神経学的後遺症へと直結するニューロンやオリゴデンドロサイトの傷害/死滅とアストロサイトやミクログリアの活性化による炎症反応が受傷病変の拡大に関与していることは周知されている。しかし,血管内皮細胞の受傷がもたらす影響も多大である。

     脳血管内皮細胞は血流の調節以外にも,受傷時にさまざまなサイトカインやケモカインを産生するが,血管内皮細胞由来の炎症物質が新生児HIE脳においても上昇していることが報告されている3)。また,受傷後の神経再生には脳血管を含むニッチェが必要であることも明らかにされており4),脳血管内皮細胞傷害は神経再生を阻んでいる可能性がある。つまり,血管内皮細胞が低酸素虚血によって受ける傷害は,一次性・二次性細胞傷害だけでなく回復期にもインパクトをもたらすものであるといえる(図1)。

  • ―総合周産期母子医療センターにおける満期産単胎分娩13,000例の検討から―
    日高 庸博, 笹原 淳, 嶋田 真弓, 川口 晴菜, 山本 亮, 村田 将春, 林 周作, 石井 桂介, 岡本 陽子, 光田 信明
    p. 61-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     背景と目的

     脳性麻痺(cerebral palsy:CP)の三大原因が未熟児,仮死,核黄疸といわれる時代があった。これらがCPの原因となりうることは確かであるが,必ずしもこれらに該当しないものが多いこともクローズアップされてきている。また仮死については,低酸素性虚血性脳症(hypoxic ischemic encephalopathy:HIE)がその後遺障害の本態であることが明らかになっていて,そのベースには分娩時のasphyxiaが存在することが多い。ただ,分娩とCPの関連に関する研究の歴史は古いが,多くの点がいまだ未解明である。

     医事紛争の場では,CPの原因を周産期経過に求められることもあり,その疫学や背景を把握することは重要と考えられる。今回,単一の総合周産期母子医療センターで管理した満期産単胎分娩における分娩時asphyxia,HIE,CPの発生頻度を明らかにするとともに,CPに至った児の周産期背景を検討すること,ひいてはasphyxiaとCPの関連性を考察することを目的として本研究を行った。

  • ― Population-based研究から―
    児玉 由紀
    p. 69-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     胎児心拍数モニタリングが普及し,帝王切開分娩が5倍増加したのにもかかわらず,脳性麻痺(cerebral palsy:CP)の頻度は先進諸国ではこの30年以上減少していない1)。西オーストラリアやpopulation-based研究(1967〜1985年)では,分娩時のasphyxiaはCPの主要な原因ではなく,低出生体重児の生存率増加がCPに関与していた2)。その後の研究で,1990年代早期からは極低出生体重児のCP発生率は変化していないと報告されている3,4)

     わが国のCPに関する最近のpopulation-based dataとしては,滋賀県(1977〜1991年)5)と沖縄県のデータ(1988〜2001年)6)があり,いずれも極低出生体重児におけるCPの発生率増加を指摘している。

     今回,われわれは宮崎県をフィールドとしたpopulation-based研究を行い,新生児脳障害の原因を明らかにすることとした。さらに在胎週数群別に調べ,成熟児脳障害についてその原因や変遷を検討した。

  • 田中 守, 長 和俊
    p. 75-76
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     産科医療補償制度の元で脳性麻痺(cerebral palsy:CP)症例の原因分析が進められ,新しいコンセンサスに基づいた新生児蘇生法の普及が進み,新生児の低酸素性虚血性脳症(hypoxic ischemic encephalopathy:HIE)に対する低体温療法が臨床に定着しつつある現在の周産期学シンポジウムのテーマとして,「成熟児のasphyxiaとcerebral palsy」が選択された。

     早産児におけるCPは,子宮内炎症・感染と未熟性,出生の状況および生後の治療経過が複雑に関連して発生する。子宮内炎症・感染は早産を惹起するのみならず,それ自体が脳損傷のリスク因子である。また,早産児の脳は血管構築が未熟であり,損傷を受けやすい一方で可塑性が高い。さらに,早産児は出生時に仮死を伴いやすく,生後に医療介入を必要とすることが多い。そして,生後の呼吸・循環・黄疸・栄養などの管理状況は早産児の中枢神経予後に影響する。一方,過期産児を含む成熟児に発生するCPは,先天異常に起因するものを除くと,新生児仮死と関連する割合が圧倒的に高い(図1)。しかし,胎児心拍数モニタリングなどの医療技術の普及や帝王切開率の上昇がCPの発生率の低下に結びついていないことが知られており,一部の症例では胎児期に発症したCPの結果としての新生児仮死が示唆されている。また,出生時に新生児仮死や臍帯動脈血pH低値を呈さないCP例も報告されている。

     胎児・新生児の脳が低酸素に曝露されると,一部の神経細胞にはネクローシスによる一次細胞死が発生する。この一次細胞死は不可逆的である。一方,一次細胞死を免れた神経細胞がフリーラジカルの影響を受けて陥るアポトーシスによる二次細胞死は低体温療法により抑制が可能である。また,成熟児におけるCPの発生を抑制するために,妊娠中,分娩中および出生後にさまざまなモニタリングとその結果に基づいた介入がなされる(図2)。

シンポジウム午後の部:その疫学と治療/予後
  • —大阪新生児診療相互援助システム(NMCS)の入院個票データベースより—
    平野 慎也, 北島 博之
    p. 79-82
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     NMCS(Neonatal Mutual Cooperation System)は,1977年に大阪府で発足した新生児診療相互援助システムで,中等度ないし高度の新生児診療を必要とする新生児を,紹介に応じ,全数収容することを主な目的としている。現在では大阪府下28施設のNICUが参加し,6つの基幹病院,22の協力施設により構成されている。そして,それぞれの施設での入院個票によりNMCSのデータベースが構築されている。例えば出生体重1,000g未満,あるいは500g未満の出生児は,NMCSの病院群で約7〜8割をカバーしている。そのデータベースを用いて満期産児のasphyxiaと予後について検討した。

  • 佐藤 義朗, 岩田 欧介, 加藤 徹, 早川 文雄, 久保田 哲夫, 丸山 幸一, 長谷川 正幸, 大城 誠, 鬼頭 修, 奥村 彰久, 早 ...
    p. 83-86
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     周産期低酸素性虚血性脳症(HIE)は,依然として先進国においても出生1,000に対して2〜3の発症があり,予後不良な症例も多く,周産期医療において重要な疾患である。HIEは受傷の時間,深度により異なる臨床症状,障害部位となることがいわれており,そのさまざまな臨床像,病態を理解することは,HIE児の予後向上には欠かせない。

     動脈支配境界領域(watershed領域)に病変をもつHIEであるparasagittal cerebral injury(PSI)の臨床像に関しての報告は少ない。われわれは,PSI児では,出生時の状態,蘇生の反応は比較的良好であるにもかかわらず,遅発性,進行性の症状を呈する,という他のHIEとは違う特徴的な臨床像を示すことを報告してきた1〜3)。本シンポジウムにおいて,その特徴的なPSIの臨床像を示すとともに,病態に関しても考察した。

  • 林 誠司, 松沢 要, 山本 ひかる, 藤巻 英彦, 伊東 真隆, 加藤 英子, 安田 彩子, 加藤 徹, 早川 昌弘
    p. 87-91
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     背景と目的

     新生児仮死とそれに続発する新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)は成熟児における神経学的後遺症が問題となる疾患である。神経学的後遺症の予測として,臨床所見,頭部MRI所見,脳波所見などがあるが,いまだ正確な予後予測が難しいのが現状である。低体温療法を含む脳保護療法の出現により,新生児期早期における予後予測の必要性や,その後の児の管理のための正確な神経学的予後予測は必要であると思われる。

     そこで主にHIEを代表とする脳機能低下を認める新生児仮死児の予後予測として,慢性期の簡便な頭部MRI分類と経時的脳波所見が有用かどうかを検討した。また治療の有無による経時的脳波所見の推移,頭部MRI所見と脳波所見の間に関連があるかを同時に調査することとした。

  • 菅野 雅美, 清水 正樹, 菅野 啓一, 宮林 寛, 川畑 建, 鈴木 亮太, 閑野 将行
    p. 93-98
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     新生児の低酸素性虚血性脳症(hypoxic-ischemic encephalopathy:HIE)に対する脳低温療法(brain hypothermia therapy:BHT)は,2005年のNICHD trial1)やCoolCap trial2)の報告を筆頭に世界各国で大規模ランダム化比較試験(RCT)が行われており,その有効性は生後18カ月の死亡率や神経学的障害を減少させることで確認されている。また長期予後についてはNICHD trial3)やCoolCap trial4)で報告され,結果は生後18カ月と同じ傾向であり,6〜7歳時予後の報告では,脳低温療法は死亡率または重度の神経学的障害発生率を減少させ,また生存者における重度の後遺症発生率は増加しなかったとしている4)

     一方,脳低温療法導入前のHIEでは,長期予後の検討が多く報告されており,運動障害や脳性麻痺を合併しない,中等度のHIEでは認知能力や言語能力が低下するため学習障害や行動異常,短期記憶障害のリスクが上がるといわれている5〜7)。しかしHIEにBHTを行った児での長期的予後の報告はまだ少なく,特に運動障害のない児では学習面や行動面の評価が必要である。

  • 徳久 琢也, 茨 聡, 丸山 英樹, 丸山 有子, 小林 康祐, 熊澤 一真, 加藤 英二, 前出 喜信, 桑原 貴子, 石原 千詠, 高尾 ...
    p. 99-106
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     目的

     ILCOR Consensus 2010以降,低酸素性虚血性脳症(hypoxic-ischemic encephalopathy:HIE)の治療戦略として,脳低温療法(brain hypothermia:BHT)の有用性が認識されている。その一方で,BHTを施行しても中枢神経障害を防ぎえない症例も経験する。今回,BHT自験例の神経学的予後と予後予測因子について検討したので報告する。

  • 大槻 克文, 細野 茂春
    p. 107-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/03/01
    会議録・要旨集 フリー

     ビリルビン脳症と低酸素性虚血性脳症が成熟児の脳性麻痺の2大要因であったが,黄疸管理の進歩により新生児高ビリルビン血症による神経学的後障害の発生は経験されなくなった。一方,胎児モニタリングの普及に伴いnon-reassuring fetal statusに対する児の早期娩出,娩出後の適切な新生児蘇生および低体温療法の普及により新生児仮死の頻度および重症度の軽減は図られているものの,依然,低酸素性虚血性脳症から神経学的後障害を認める。本シンポジウムは成熟児のasphyxiaとcerebralpalsyに焦点を当てて開催された。奇しくも1988年に大阪の地で“胎児仮死および新生児仮死”が取り上げられている。午後の部では疫学と治療/予後を中心に5名のシンポジストにより講演が行われた。

feedback
Top