平成26年2月7日(金),8日(土)に九州大学医学部百年講堂大ホールにて第32回周産期学シンポジウムを開催させていただきました。2日間を通して570名という多くの参加者があり活発な討論となり心から感謝しています。あいにく8日が関東地方の大雪でお帰りの便に混乱を招き申し訳なく思っていますが,きっと思い出の一つとして残ってくれると期待しています。
今回のテーマは「Pretermを考える 〜preterm児のCPとlate pretermの諸問題〜」でした。Late preterm児とは2005年NICHDが提唱した概念で,早産児の中でも特に在胎34週0日〜在胎36週6日に出生した児と定義されています。早産であるにもかかわらず体重も比較的大きく,出生後臨床的に安定しているlate preterm児は ほとんど成熟し 病気になるリスクは少ないものとして正期産児と同じ扱いを受けてきました。しかしlatepreterm児は生理的にも代謝においても未熟であり,臨床的には全く健康にみえても低血糖,呼吸障害,無呼吸発作など罹病のハイリスクであるということが明らかになってきています。さらに長期的な神経発達予後に関しても,CPのみならず行動や情緒に問題のみられる児も正期産児に比べ多いという報告もみられるようになっています。
我が国の人口動態統計に基づくと,ここ30年の間でlate preterm児を含む32週〜37週未満の早産児の全出生数に対する割合は約3%から5%に増加しています。今回,多方面から検討を行いましたので周産期医療の現場にフィードバックされ今後の周産期・新生児医療の向上につながることが期待されます。
また,プレコングレスとして「新生児の難治性良性腫瘍の現状と展望」を取り上げました。これは産科,新生児科,小児外科の3分野にまたがって苦労している疾患群であり,胎児診断から胎児治療,さらに出生時および出生後の治療と長期にわたる問題点など最新の知見を共有できたと思います。
さらに会長指定講演として最近話題になっている「母体血を用いた胎児遺伝子診断の現状」について第一人者の関沢明彦教授に講演をいただきました。我々,新生児外科を担当している立場からも,大いに参考になりました。
ランチョンセミナーは,外科的な立場から内視鏡手術手技に関するものにしました。整容性を考えた小児外科手術および妊孕能を温存する婦人科手術について第一人者の安藤正明先生に映像を中心とした講演をいただきしました。
懇親会は玄界灘の海の幸のA級グルメの寿司と博多の冬の味覚の「博多もつ鍋」や「博多ラーメン」など楽しんでいただきました。いずれも長蛇の列ができる盛況でした。
最後に今回のシンポジウムを時間と労力をかけて準備いただいた中村友彦運営委員長はじめ運営委員の諸先生方,今回のテーマ検討段階からご尽力いただいた当時担当理事でおられた久保隆彦先生,九州大学小児外科の木下義晶准教授はじめ教室員の皆様,また,長年メジカルビュー社で「日本周産期学会」の時代から事務局を担当いただいた原鎭夫氏(今回特別表彰)に心から感謝します。
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