第40回周産期学シンポジウムは「周産期医療における生育と成育の限界について考える」をテーマに2022年1月14-15日に開催されましたが,COVID-19の第6波による急激な感染拡大に伴い,会場とオンデマンド配信によるハイブリッド開催となりました。
旧優生保護法による人工妊娠中絶術を実施することができる時期が,妊娠24週から「通常満22週未満」に変更され,流産と早産の境界が妊娠22週とされてから,すでに30年が経過しました。生育限界が「胎児の母体外生存可能時期」であり,生命の質には無関係な限界であることは,多くの人から同意が得られることでしょう。一方,成育限界は「子宮外で人間として発育発達できる限界」が本来の考え方です。しかし,30年間の医療の進歩によって22週でも「人間として発育発達できる児」が多く報告されるようになり,成育限界を「未熟性に起因する後障害が発生しない限界」と捉える考え方も出現しており,議論の際には注意が必要です。しかし30年間の医療の進歩をもってしても,在胎週数だけで区切れない様々な「成育限界」があることを認識して,周産期医療に携わる我々は,小さな命とそのご家族に対して,医療提供を行っていることと思います。
成育限界周辺の児には,成育可能な児の命を守る医療とともに,成育不可能な児への苦しみを与える治療を防ぐことも必要であるため,法的な側面も,生命倫理の視点も不可欠です。この難しい課題に正面から向き合い,シンポジウムを作り上げるために,2年もの歳月を費やしてご尽力されたシンポジウム運営委員会の皆様,シンポジストの皆様に敬意を表したいと思います。初日のプレコングレスでは,参加した皆様のシンポジウムに対する理解が深まることを期待したプログラムを用意しました。楠田聡先生による「早産児医療の国際比較」,加部一彦先生による「成育限界の生命倫理」,シンポジウム運営委員会による「全国調査報告」によって,成育限界周辺の児に対する過去の医療,現在の標準的な医療について,共通認識を持つことができたと考えます。そしてシンポジウムでは,現在わが国で行われている最先端の成育限界周辺の児に対する診療に関する工夫と成果を報告していただきました。午前中の「在胎週数から見たハイリスク児」では,早産によって出生した児の予後が報告され,未熟性による成育限界について総合討論が行われました。午後の「病態から見たハイリスク児」では,未熟性以外の病態を呈する早産児の予後について報告され,病態別の成育限界について議論されました。このシンポジウムに参加した皆様には,日常診療で直ちに役立つ多くの情報が提供できたと思いますが,スポンサードセミナーでも紹介されたような,これから始まる近未来の成育限界周辺の周産期医療を考えるためのメッセージも,届いたものと期待しております。
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