周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第5回
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はじめに
  • 新井 正夫
    p. 2
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     本学会は昭和58年1月に創立され,その“ひよこ”が歩み出し立派に成育してきた過程は別表(次頁参照)の如くであり,歴代会長,幹事および会員諸氏のご尽力頂いた情熱と努力の賜物と衷心より敬意を表する。

     本会設立以来,公募による種々の要望テーマを中心としてシンポジウム形式でホットな討議が行われるのが特徴であり,その記録を機関誌である本誌に掲載され,好評を博しているのはご同慶のいたりである。

     本会総会の議を経て,初めて東京を離れて昭和62年1月17日(土)横浜・県民小ホールにて第5回日本周産期学会を未曽有の239名の参加を頂き開催されました。その学術集会記録集「周産期学シンポジウム No. 5」が,この度発刊されることになり,欣喜雀躍の感がある。

     今回のシンポジウムは「先天性疾患の診断と治療」と「妊娠30週未満の分娩方法をめぐる諸問題」であり,現代周産期学のエポックを画するもので,各演者の述べられた内容は正しく刮目に価するものばかりで会員を魅了したことと信ずる。

     しかし,これらの分野の発展は目覚しく秒進分歩の時代であり,これらの課題は現時点での最高の断面での診断・治療・管理であり,さらに何年か先に同じテーマでの討論を望みたい。

     本学会は,アジア・オセアニア周産期学会の日本における受け皿的存在として機能し,去る昭和61年4月には前田一雄会長のもとに第4回アジア・オセアニア周産期学会が,東京高輪プリンスホテルにて,海外から200名の参加を得て盛会裡に終えたのは,目新しい楽しい思い出でもある。

     今夏,松江市にて第3回国際シンポジウム "The fetus as a patient" が前田一雄会長主宰のもと催され,その成功を願うものであるが,本学会ではpatientはもちろんのこと "The fetus as a person" として扱うのが本来の使命であると思う。

     本学会は,限りない可能性を秘めた胎児に係わるすべてを管理・研究する唯一の優れた会員の会合であり,本学会の益々の躍進を祈念して止まない。

シンポジウム I:先天性心疾患の診断と治療
  • 新井 正夫
    p. 9-10
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     先天性心疾患の診断と治療については,MEならびに画像診断技法の進歩に伴い胎児情報を十分把握できるようになり,胎児・新生児の循環系疾患の管理は変貌しつつある。

     当シンポジウムを始めるにあたり,私から総論的なことを述べさせていただき,柴田教授からは,積み重ねられた成績から先天性心疾患の取り扱いの実際と問題点を解説していただくことにした。

     先天性心疾患の診断と治療にまつわる原因・症状・診断・治療について概説する。

  • 柴田 隆
    p. 11-14
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     図1は,昭和43年より昭和59年までの17年間のわが国の新生児死亡率を示したものである。左側のグラフのように,昭和43年の9.8‰から昭和59年には3.7‰と著しい減少がみられている。これらの新生児死亡例の死因を人口動態統計より見てみると,診断の過誤はあろうが,図に示しているように,先天異常と分類されている例は,この17年の間,減少をみていない。これに対して,RDSおよび詳細不明の未熟児と分類されている例は,わずかずつではあるが,減少してきている。

     死亡原因が,先天異常と分類されている例のみを取りあげて,右側のグラフに示してみた。図から明らかなように,消化器系の先天異常による死亡例は,減少しているが,循環器系の先天異常による死亡例は,わずかではあるがその比において増加がうかがわれる。このことは,診断技術の進歩によるものでもあろうが,その対策の重要性を示すものである。

  • 広瀬 修
    p. 15-27
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I はじめに

     近年,超音波断層法の進歩やパルスドプラー法の発達により,胎児の心臓血管形態や循環動態を観察することが可能となり,種々の先天性心疾患や不整脈の出生前診断の報告が散見されるようになった1, 2)

     非免疫性胎児水腫の原因の一つとして先天性心疾患や胎児不整脈による心不全があり,この心原性の心不全を早期に診断し,治療を進めていくことが必要である。

     また,先天性心疾患の中でも生後まもなく処置をしないと死亡するものがあり,これらの出生前診断も重要である。

     本稿では,胎児先天性心疾患,胎児不整脈の超音波検査による診断法と,とくに生後まもなく緊急処置を要する心疾患の診断と治療について,自験例をもとに述べる。

  • 秦 利之, 秦 幸吉, 北尾 学
    p. 28-39
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I はじめに

     先天性心疾患の頻度は0.8~1.04%であり1, 2),そのうちの約20%が新生児期に死亡している3)。しかしながら最近は,早期治療により救命し得る症例も増え,早期発見の必要性が叫ばれている。一方,胎児不整脈の頻度は1.7%といわれ4),けっしてめずらしい疾患ではなく,通常の妊婦検診における注意深い胎児心音の聴取により容易に発見することが可能である。胎児不整脈は,従来,心奇形の合併がない限り比較的安全な不整脈と考えられてきたが,胎児水腫,心嚢液,胸水,腹水などの子宮内胎児心不全症状を呈する不整脈の症例が認められるようになって5~8),子宮内における早期発見,鑑別診断および胎内治療の必要性が生じてきている。

     今回,我々は胎児心エコー図,胎児心電図,超音波ドプラー法を用い,先天性心疾患および胎児不整脈の出生前診断ならびに子宮内心機能評価を行い,その周産期管理および予後について検討したので報告する。

  • 千葉 喜英, 清水 哲也, 中野 仁雄, 竹内 久彌, 岡井 崇, 前田 一雄
    p. 40-48
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I はじめに

     胎児診断は臓器別診断の時代に入った。その中でも胎児心疾患の診断は速やかに解決されるべき運命にある。その理由の一つとして,成熟婦人1人あたりの出生児数の低下による胎児一人ひとりに対する社会的または個人的期待の増大と,周産期死亡率の低下による心疾患児の周産期死亡の相対的増加がある。もう一方の理由として新生児心疾患に対する内科的・外科的治療の長足の進歩がみられ,胎児期に診断することにより,より良い予後が期待できることがある。また,小児心臓病の超音波装置と診断のための知識が,少しの改造をもって利用できることも大きな武器となり得る。

     この研究は,上記の社会的・医療的背景下に現時点における胎児心疾患胎内診断の現況および効率,診断のための超音波像のラベリング,そして,先天性心疾患母体から同系心疾患児発生の頻度を求めることを目的とした。

     研究組織は,厚生省循環器病委託研究(59-公-7)中野班であり,データを集めた施設は,旭川医科大学,東京大学医学部,順天堂大学医学部,国立循環器病センター,鳥取大学医学部および九州大学医学部の6施設である(以下,6施設と記す)1~3)

  • 原 賢治, 小柳 孝司, 下川 浩, 井上 充, 中原 博正, 永松 晃, 永田 新, 佐藤 昌司, 吉里 俊幸
    p. 49-57
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     電子スキャンの導入を契機として,臨床の場で胎児心の形態に対する理解が深まるとともに,出生前に診断される心形態異常の症例が急速に増加してきた1-12)。また,リアルタイム画像とMモード法の併用は胎児心のdimensionや収縮能の計測,さらには不整脈の鑑別診断など多方面にわたる心機能の評価を可能にした13-21)。このような胎児心疾患の診断法における進歩は,一方では積極的な胎内治療法の開発を導き,今日,すでに多くの成果が報告されている22-29)

     しかし,胎児心疾患の診断や胎内治療にいまだ一定の方式はなく,そこには多くの問題が残されている。このような現状に鑑み,胎児心の形態異常診断の問題点,胎児不整脈の鑑別診断法,胎児心の収縮能の評価法について自験例を中心に検討した。また,心疾患と児の予後との関連から胎内治療法のあり方についても考察した。

  • 門間 和夫
    p. 58-68
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I 緒言

     新生児期先天性心疾患の動脈管の薬物治療は1975年のプロスタグランジン治療に始まり,続いて未熟児動脈管開存症のインドメサシン治療が実用になって,今日では広く臨床に用いられるようになった。我々は1975年から動脈管の動物実験を行い,その間の研究結果を発表してきたので,ここでは動脈管の薬物治療の基礎と臨床について我々のデータを交えて解説したい。

  • 津崎 恒明, 前田 一雄
    p. 69-78
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     胎児水腫の病因は多岐にわたり,著者ら1)も非免疫性胎児水腫(NIHF)の臨床病理学的側面についてすでに報告した。しかし,予後不良例での病理形態学的検討が中心であったため,同様症例の前方視的管理に有用な情報は十分ではなかった。一方,胎児水腫例に共通してみられる浮腫や腔水症の発生要因として,静水圧上昇や膠質浸透圧低下などが指摘されてきたが2),胎児水腫例の循環動態解析に関する報告は少ない。

     ところで,非侵襲的血流計測法として超音波ドプラ法が導入され,胎児血流計測には主として距離分解能のある超音波パルスドプラ法(以下P-D法と略)が応用されているが,パルス繰り返し周波数による検出可能速度や診断可能深度に関する限界や,超音波ビームと対象血管のなす角度による測定誤差など,原理上の制約から定量化にさまざまな問題が指摘されてきた3)。したがって,動脈系においては血流速度波形の解析が主流となり,さまざまな循環抵抗指標を用いた検討が行われているが,静脈系における検討は不十分であった。しかしながら,胎児水腫のように静水圧の上昇がみられる例では胎児右心系の観察も不可欠と考えられるので,今回,胎児水腫をはじめ胎児仮死例など,急性ないし慢性の循環不全状態にあると考えられた症例における血流計測結果を中心として,胎児心不全発生機序について考察する。

  • 是澤 光彦, 稲葉 淳一, 久保 武士, 岩崎 寛和
    p. 79-84
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I はじめに

     出生前診断と他の医学との最大の違いは,胎児が母体子宮内に隠されていて,原則的に直接見たり触ったりすることができないことである。それゆえ,他の医学で常識となっている基本的検査も胎児には適応できないものが多い。心電図検査もその一つである。胎児不整脈を妊娠中に発見することは比較的多く,その存在を診断することは容易であるが,不整脈の詳細を妊娠を継続したまま診断することはきわめてむずかしかった。

     これまで胎児の心電図誘導法としては,経母体腹壁間接誘導法と児頭誘導法が行われてきた。経母体腹壁誘導法では,胎児の心電信号は強い母体心電信号に隠されてしまい,いくら感度をあげても母体心電も一緒に増幅されるので,QRSピークしか検出できない。一方,児頭誘導法では胎児より直接信号を誘導するので,信号の精度としては十分満足のいくものであるが,この方法では経腟的に児頭に電極を装着するので,ある程度分娩が進行した時点で破膜する必要がある。したがって,これまで妊娠を継続したままで診断上価値のある心電図は採取できなかった。

     今回我々は,妊娠を継続したままで分析に耐えられる胎児心電図採取法を開発したので報告する。

  • 木谷 和夫, 早川 孝裕, 森 美喜夫, 吉光 一, 水戸守 寿洋, 光藤 和代, 亀山 順治, 仲田 永造, 武田 修明, 馬場 清, 田 ...
    p. 85-88
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     多源性心房性頻拍症(Multifocal atrial tachycardia 以下MATと略す)(表1)は,おもに成人に認められ,とくに,慢性閉塞性肺疾患に罹患した老人に出現することが多いといわれている。その他,冠動脈硬化症,糖尿病,ジギタリス中毒などでもみられるという1)。しかし,小児科領域では,その発生頻度はまれとされている。今回,胎児期より不整脈を認め,出生後の心電図でMATと診断した1症例を経験したので,その経過について,若干の考察を加えて報告する。

  • 松永 隆元, 石松 順嗣, 浜田 悌二, 力武 典子
    p. 89-97
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I はじめに

     最近の超音波断層法の急激な進歩は胎児の奇形診断にとどまらず,胎児の病的状態の診断をも可能としている。そのうえ,病的胎児の正確な診断は,胎児治療という新たな展開を導きつつある。ところで,胎児頻脈性不整脈,なかでも胎児心房粗動は胎児心不全を引き起こし,さらには胎児水腫の原因となる点で,胎内診断とともに胎児治療の対象疾患として周産期管理上重要である。しかし,胎児心房粗動に使用される抗不整脈剤の胎児への薬理作用にはいまだ不明の点もあり,胎内治療にはより慎重な配慮が要求される。著者らは,胎児心房粗動に抗不整脈剤としてジゴキシンを投与し,胎内治療に成功した3例の経験から,その臨床経過を報告し,経胎盤的ジギタリス治療についての臨床的検討を加えた。

  • 柴田 隆
    p. 98
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     診断機器の進歩・改良,診断技術の向上によって,先天性心疾患のうち形態異常および不整脈の診断は,非常な高率で胎内診断が可能であることが,各シンポジストから示された。その診断の時期,診断の方法についてもほぼ確立されていると考えられる。しかし,これらの胎内診断が可能な施設は,限られた第一流の施設であって,わが国の全体にまでは及んでいない。

     胎内診断された先天性心疾患のなかには,出生後の早期より病態が急激に悪化する動脈管依存性の病型では,動脈管の閉鎖の時期が症例ごとに異なるようであり,閉鎖機転の生ずる以前に専門家による内科的治療(主にはPGE1の投与)あるいは外科的治療の適応,時期の決定を行う必要のあることが討議され,一応のコンセンサスが得られた。

     先天性心疾患の形態異常の胎内診断が,全国の一般臨床産科医に普及し,出生後は速やかに病態を悪化させることなく専門的治療の行えるような医療システムが確立されれば,先天性心奇形で新生児期に失う例の減少することは明らかである。本シンポジウムでは,出生後の治療に当たられている施設からの御参加が少なく,その予後にまで触れることができなかったことは残念であった。

     次に,心機能,主には心不全の胎内診断についてである。心機能の胎内における評価は,各シンポジスト共に触れておられ,判定基準の作成が試みられていた。カラードプラー法,さらに進歩した機器による胎児の心拍出量の定量的な測定,臨床応用の確立に期待するものであると同時に,出生を境に大きく変動する循環動態,すなわち血流分布の変動を個々の症例について,臨床的に測定することが可能となることにも期待をするものである。

     さらに心機能の判定については,胎内発育障害児との関連においても重要な点ではあるが,十分に討議し得なかった。心不全の胎内治療についても,いかにして胎児の心拍出量を増加させるかではあるが,薬剤の効果については,十分に討議し得なかったと考える。

     以上が,本シンポジウムの内容の概略である。各々のシンポジストからは,立派な内容の講演が発表されたが,司会者(とくに私)の力量不足により,「まとめ」らしいことを述べるに至らなかった。しかし,本日の講演あるいは討議を基にして,今後の検討が進められれば先天性心疾患すべてに対する,出生前からの診断,治療法が確立される日も,それほど遠くはないものと考える。

シンポジウム II:妊娠 30 週未満の分娩方法をめぐる諸問題
  • 佐藤 郁夫
    p. 101-105
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     胎児および新生児・未熟児の管理の進歩により,救命率やintact survivalも着実に改善されている。しかし同時に,管理上解決されなければならない難題が山積していることも事実である。そこで本シンポジウムでは,妊娠半ばにして分娩を余儀なくされた場合に,胎児のいかなる因子が分娩様式選択の基準となるか,分娩時に胎児低酸素症から避けるためにはいかなる分娩様式が望ましいか,帝王切開(帝切と略)が最善の策かといったことについて検討していきたい。

  • 今井 史郎
    p. 106-117
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I はじめに

     近年,極小未熟児の保育が長足の進歩をとげ,その出生が予想される場合,胎児側の適応によっても帝王切開による分娩が施行されるようになった1~3)。しかし,これら極小未熟児出生例における胎児仮死の判定や適切な分娩期,分娩様式についてはなお多くの問題点が残されており,周産期医療に携わるものはそれぞれの症例で悩みながら対応しているのが現状である。今回,当センターにおける妊娠30週未満の症例を対象に,胎位別での分娩様式と各種の周産期罹病を含めた児の予後との関連性につき統計的検討を行い,胎位および分娩様式別が児に及ぼすリスクを解析した。

  • 吉原 一, 吉田 耕太郎, 源田 辰雄, 田所 義晃, 浅井 仁司, 植野 信水, 根本 荘一, 巽 英樹, 西島 正博, 島田 信宏, 新 ...
    p. 118-128
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     総括

     妊娠30週未満で分娩した児の予後に対する産科的要因の関与を調べるために,昭和46年から昭和60年末までに北里大学病院産科で扱った妊娠30週未満の分娩217例中,単胎生産例144例を対象にして検討を行った。出生後に死亡した例は,144例中60例で死亡率は42%であった。妊娠週数26~27週以上,出生体重1,001~1,500g以上,1分娩後のApgar score 5~7点以上の例で児の予後の著しい改善が認められた。対象全体について児の予後と産科的要因の関連を調べたところ,Apgar score 4点以下,破水分娩時間23時間以内の例が死亡例に有意に多く,妊娠週数,出生体重,胎盤重量は生存例で死亡例に比べ有意に大であった。各分娩様式別に検討してみると,経腟頭位分娩群では全体と同じであったが,経腟骨盤位分娩群ではApgar scoreと側切開の有無で児の予後と有意な関連を示した。帝切群ではApgar scoreのみであった。

     次にこれら産科的要因が児の予後と有意な関連をもつ出生体重と妊娠週数のcritical pointを調べてみたところ,頭位分娩例では1,001g以上,26週以上であった。骨盤位帝切分娩例では1,001g以上,28週以上であった。これらの値は我々産科医が妊娠30週末満の分娩を取り扱う場合の一つの指標になると考えられた。

  • 多田 裕, 三科 潤, 佐藤 紀子, 本間 洋子, 渡辺 とよ子, 川崎 道子, 内田 章
    p. 129-138
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     東京都立築地産院における新生児死亡率や死因を検討してみると,ほぼ5年を単位として周産期医療が大きく変わり,分娩様式に対する考えにも変化が見られる。

     資料が十分に整備されている昭和39年以降を5年ごとにI期からV期に分けると,当院における各時期の出生数はほぼ10,000前後となる。これらの時期の当院の医療の特徴は次のとおりである。

  • 増本 義, 七種 啓行, 松本 和博, 高柳 俊光, 今村 甲, 久保田 健二, 築山 公一, 小尾 重厚, 安日 一郎, 吉村 秀一郎, ...
    p. 139-148
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I はじめに

     今日のNICUにおける新生児死亡の主な原因はRDSを伴った極小未熟児,先天奇形,新生児仮死を含む分娩障害などである。先天奇形による死亡はある意味で仕方のないことであり,問題はむしろmedical ethicsの方向にある。新生児仮死については判断のむずかしい症例はあるにせよ,一般的にいえば胎児モニターの普及によって激減してきたといえる。極小未熟児に関していえば,NICUをもつ病院内で出生した症例の予後は著明によくなってきているが,院外から搬送された症例の予後はそれほどよくない。これはperinatal careと分娩から治療開始までの管理の違いなど多因子によるものであろうことは既に発表してきたところである1)が,今回さらに詳しく30週未満の未熟児の短期予後および長期予後について調査し,その予後に影響すると思われる因子を検討したのでこれについて述べる。

  • 萩沢 正博, 藤本 征一郎
    p. 149-157
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I はじめに

     NICUの普及と産科管理の向上により,極小未熟児の生存率が上昇してきている今日1)において,妊娠30週未満の早産(以下早期早産と略す)の周産期管理が大きくクローズアップされている。特に早期産管理の終止点でもあり,子宮内生活から子宮外生活,すなわち胎児から新生児,母体においては妊婦から褥婦と大きく変化する分娩という周産期には避けられない関門がある。早期早産の分娩様式の選択においては,母体に対する侵襲性と児の生存可能性ならびにintact survivalなどの予後との関係によりいまだ確立された一定の見解はなく,今日議論の多い間題点である。

     今回,われわれは妊娠30週未満の早産(早期早産)における分娩様式と児の所見,予後との関係について若干の臨床的検討を試みたので報告する。

  • 船戸 正久
    p. 158-162
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I はじめに

     大阪における新生児診療相互援助システム(すなわちNeonatal Mutual Cooperative System, 以下NMCSと略す)は,昭和52年に最初8病院で組織され,現在,表1に示した20病院が参加している。このNMCSでは,未熟児を含む病的新生児の情報はすべて統一した入院用紙を使用し,情報センターでコンピューター入力するシステムをとっている。

     今回,この入院情報統計より妊娠30週未満の分娩法と予後の関係を分析検討したので報告する。

  • 石川 薫, 風戸 貞之, 須之内 省三
    p. 163-167
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     緒言

     最近では極小未熟児(1,000~1,499g)の予後が著しく改善され,周産期医学の枢要な焦点は超未熟児(~999g)のintact surviveに移りつつある。そのため超未熟児の分娩方法をめぐる議論how to deliver the under 1,000-gram infantも増加してきているが,超未熟児骨盤位に極小未熟児と同じようにliberalに帝王切開を選択することの妥当性について,いまだ結論は得られていない。すなわち,超未熟児骨盤位において帝王切開は経腟分娩より児の成績はすぐれるか,また母体への帝王切開侵襲に引き合うほどに児の成績が期待されるか,いまだ明らかでない。このような中で,我々の施設では超未熟児骨盤位に帝王切開は原則として留保し,外回転術を加味した経腟分娩の工夫により対処してきたので,その経験を報告したい。

  • 井村 総一
    p. 168-169
    発行日: 1987年
    公開日: 2024/05/07
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     I アンケート調査から

     全国の主要な分娩施設およびNICU 118施設での調査結果(昭和60年)をみると,超未熟児の50%救命率は在胎25~27週に集中し,出生体重では700~800gであった。90%救命率は28~30週,900~1,000gの間にあり,在胎27週,出生体重800gあたりに一つの境界があるようであった。

     極小未熟児,超未熟児の帝王切開に関しては,大部分の施設で帝王切開を行うとし,適応の最低基準は24~28週,出生体重は500~1,000gに分布している。

     超未熟児の分娩様式についてみると,帝王切開率は22% 約1/4で,適応は胎児側因子として胎児仮死が約半数を占め,母体側因子として妊娠中毒症が1/3を占めている。

     超未熟児の帝王切開に関しては,胎児仮死が児の予後を左右する最大の要因であるので,そのためには帝王切開を含めた何らかの処置が必要であり,超未熟児といえども生存の可能性を求めて最善をつくすべきであるとする考えが多いが,その際に切開方法に工夫が必要であるとの考えや,予後との関連から家族との話合い,週数,体重,胎位,母の年齢,合併症など家族的要因とともに十分考慮のうえ,症例ごとに慎重に対処すべきであるとの意見も少なくない。また,帝王切開と経腟分娩とを比較するデータが乏しいこと,50%救命率程度で優劣を決められるかなどという疑問も呈示された。

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